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『Underground caT』
悪循環の中で
しおりを挟む「何言ってんの。ダメに決まっているだろう」
同居解消宣言をする為に将生さんを喫茶店に呼び出して僅か三分。俺にとっても雪にとっても予想外すぎる答えでバッサリ切り捨てられ、早々に話しは終わった。いや、終わらせる訳にはいかないんだが。
どう説得しようか思案する暇もなく、将生さんは続け様に口を開いた。
「雪さ、頭良かったよね?」
「……将生さん、話しをすり替えないで下さい」
自由奔放な雇い主を前に、思わず眉間に皺が寄る。しかし目の前の暴君は気にする素振りも見せない。
「俺は離れる事は許さないって言ったんだけど?その話はそれで終わりだろ。それでさ、家庭教師やってくれない?」
思わず隣の雪と顔を見合わせてしまった。
「……家庭教師?」
「そう、冬弥の」
冬弥とは、今将生さんの家にいるボーイの事。何処にでもいそうなちょっとヤンチャなガキだ。
「勉強だけじゃなくて色々教えてやってよ。君の得意な男の落とし方とかね。手が足りなかったら山室も使って良いからさ」
この人は直ぐに雪の嫌がる事を言って楽しむ。俺の前では言って欲しくない事位分かるだろうに。案の定雪は小さく俯いてしまった。
……しかし、睫毛長いな。いや、そんな事を呑気に考えている場合じゃない。
「何言ってるんですか。俺は自慢じゃねえが頭は良くない方ですよ」
「知ってるよ。今時中卒だしね。それでよく親父の後を継ごうと思ったよね」
この男は本当にいちいち痛い所ばかり突きやがる。しかも知っているなら何で俺が手伝わなきゃいけないんだ。ガキの面倒を見るのは雪だけでも手一杯だってのに。
「家庭教師をしている間、山室は雪に逆らわない事。これ、俺の命令だからね?」
「はいはい」
あからさまな言い方が我ながら子供っぽいと思った。家庭教師の手伝いはもう良い事にしよう。だが譲れない物もある。頭の中を切り替えて、同居解消だけは何とか成し遂げよう。
「雪、ちょっと外してくれ」
突然の発言に驚いた顔が俺を見上げた。それでもこの状況に、何の話しか察したのか小さく頷いてくれた。
「……外にいる」
そう言った顔があまりにも切なくて、気付けば立ち上がる雪の腕を掴んでいた。
「外はダメだ。変な奴に目付けられたら大変だろ」
ただでさえ目を引く癖に、今は自覚がないからタチが悪い。こいつのこう言う時の無意識な顔は、思わず抱き締めてしまいそうな、変な色気を放つ。頼むからそんな顔で人前に立つな。だが当の本人はまるで意味が分かっていないようだ。無自覚程恐ろしい物はないな。
「大丈夫だよ」
「いやダメだ。そんな色気垂れ流して歩いてみろ。簡単に攫われるぞ」
「何言ってんの?垂れ流してなんか……」
そこで突然、まるで蚊帳の外だった将生さんの大きな溜息が俺達の間に割って入って来た。
「ねえ、君達何なの?その付き合いたての恋人みたいな感じやめてくれない?ただでさえ梅雨で空気が鬱陶しいのに」
……誰と、誰が。
「お姉さん、ちょっと席一つ空けてくれる?」
訝しげな視線を送る俺を物ともせずに将生さんは店員の女の子に向けて笑顔を送る。将生さんは男の俺から見ても良い男だ。顔立ちも所作も、一級品。この人の場合自覚してやっている辺りタチが悪い。
案の定将生さんの笑顔に頬を赤らめた女の子が慌てて席を作ってくれた。
「ほら雪、あっちに座っていて」
渋々通された席に移動する背中を見送ってから、俺は目の前で舐めた面をかましている男に視線を向けた。
「将生さんが腹の底で何を思っているかは知りませんが、俺には楽しんでるようにしか見えない」
そんな挑発にも似た言葉に口元がふっと皮肉に歪む。やはりそうか。だったら尚の事同居は解消するべきだ。
「俺と雪は側にいない方が良い。こんな生活、あいつを追い詰めるだけだ」
「そうかな?そうは思わないけど」
「あんたはあいつがどれだけ苦しんでいるか近くで見ていないからですよ。情けねえが俺には荷が重い」
救ってやる事なんか出来ない。このままじゃあ俺も限界が近い。共倒れだ。俺が潰れたら雪がどれだけ自分を責めるか目に見えて分かる。あいつにはそんな人生を歩んで欲しくない。少し考える仕草を見せた後に、将生さんは珍しく真剣な表情を俺に向けた。
「雪はさ、あれだけ男を手玉に取っておきながら、心は童貞なんだよ」
「……はあ?」
一体何を言っているんだこの人は。
「愛し方が分からないだけなんだよ。子供なの。男連れ込んで、夜遊びして、山室に自分の存在を認識して欲しいだけ。気を引きたいだけ。そうやってあいつは無意識にお前を試しているんだよ。いつ迄自分を見捨てずにいてくれるかね。人間は誰かに愛されて、人との接し方を覚える物だ。距離の取り方、向き合い方、そして勿論愛し方もね」
ふっと笑った将生さんの表情は、何故か酷く優しく見えた。
「愛してあげてよ」
言いたい事は分かるが、理屈で他人を愛せる程、人間は簡単な生き物じゃない。将生さんは若い癖に人の心の動きを良く知っているとは思う。だが心の底から人を愛した事がないから分からないのだろう。それに俺は、例え雪がどれだけ綺麗な顔してたとしてもやはり男に本気になれるとは思えない。
「……俺はあんたと違う。男でも女でも食い散らかす趣味はねえよ」
「酷いなあ。山室だってその昔はど派手に遊んでいたらしいじゃん」
そりゃあ俺も若い時は男だし、そう言う時期も無かったとは言えない。だがそれも愛美に会って全てが変わった。雪にもそんな相手が現れると良いんだが……。
コンコンと机を叩く音に、落とした視線を上げると、目の前の男は嫌な笑みを浮かべていた。
「可愛い子猫ちゃんが見ているよ?」
言葉の通り、雪は心配そうにこっちを見ていた。その瞳には不安と、諦めと、そして深い悲しみが浮かぶ。その裏側で捨てられたくないと無意識に訴えているように見えた。
頼むから、そんな目で見ないでくれ。あいつは何で俺なんかに惚れたんだろうな。俺はしょうもないヤクザの成れの果て。誰一人守れなかった情けない男だ。
ふと頭に浮かんだのは、いつも泣いているあいつの顔だった。俺の事が好きだと言いながら言葉以外で上手く伝える術を知らず、常に深い後悔に呑まれてる、痛々しい姿だった。離れる事を決意して、それでも心を鬼にし切れなかった事がいけなかったんだろうか。その罪は、重いな。
「……分かりましたよ。雪だけは責任を持ちます。でも冬弥は出来たらあまり見たくない。あいつ、妬くんですよ」
「それは慎太郎と相談して。俺は冬弥が一人にならなければそれで良い」
この人の口から他人を想う言葉が出るとは思わなかった。
「……野暮な事を聞くのは性分じゃあないが、何であのガキにそこ迄するんです?」
「あの子はね、俺の腹違いの弟。無責任な大人の犠牲になった、可哀想な子供なんだよ」
そう呟いた将生さんは口元に笑みを浮かべてはいるが、その瞳には何も映ってはいなくて、それ以上、怖くて聞く気にはなれなかった。
冬弥と将生さんの事は取り敢えず置いておいて、俺も雪の面倒を見なきゃならないなら腹を決めないとだ。
「じゃあもう行きます。時間取らせてすみません」
まだ少しいると言う将生さんを置いて帰ろうと立ち上がると、思い出したように将生さんは口を開いた。
「山室、その気がなくても気を付けなよ?あいつどっちかって言うと、素の方が魔性だからさ」
何を気を付ければ良いんだか。俺も男。あいつも男。一度は歩み寄ろうと思ったけれど、そこには大きな壁がある。俺はストレートだ。それはまだ、何も変わってはいない。
「それに引っかかったら、笑って下さいよ」
満足そうな笑顔を浮かべる男に背を向け、俺は雪と並んで店を後にした。
さて、腹は決めたもののどうしたもんか。
「腹減ったか?」
取り敢えず俺は腹が減った。雪はどうなんだか知らないが、ずっと足元を見詰めて歩いている。外で食うって雰囲気でもないな。
「帰って何か作ろうか」
作るのはいつも雪だが、今日位不味い俺の料理でも我慢してくれるだろう。
結局マンションに帰る迄の道程、雪は一言も発しなかった。家に着いてもそれは変わらず。俺がうどんを茹でている間中、ただぼんやり空を見詰めていた。テレビを付ける雰囲気でもないし、少し遅めの昼飯を並んで食べる。息苦しい程の沈黙がただ流れて行くだけだ。
そんな昼食も終え、洗い物も済んでどうしようかと思案を巡らせていると、雪は漸く重い口を開いた。
「……どうなったの?」
そう言えばどうなったのか伝えていなかった。ずっと不安だったのだろうか。悪い事したな。
「やっぱりダメだってよ」
一瞬眉を顰めた後に、雪は視線を落とした。
「そっか」
嬉しいのか、嫌なのか。どっちか図りかねる。
「今日仕事だろ?休んどけよ」
そもそも愛人なんて仕事をやっている事をこうして普通に受け入れてる俺の態度も、こいつを傷付けている気がしないでもない。
小さく頷いて自室に戻る後ろ姿を見送ったら思わず深い溜息が口をついた。俺達は一体、どこに向かうのだろうか。
仕事に出る雪を見送った後に、俺は慎太郎を誘って軽く引っ掛けに小雨の降る中家を出た。本当に慎太郎がいて良かったと思う程、最近は心の支えにしてしまっている。実咲ちゃんも夢も同様に。申し訳ないとは思いつつ、あいつらがいないと多分俺はこの先ももたない。
そんな事を考えていたもんだから、マンションの下で待っていた慎太郎の姿に心底ホッとした。
「お疲れ様です!やっとあのクソガキから解放ですねえ」
店に向かう道すがら、嬉しそうに言う慎太郎に胸が痛い。こいつは俺が倒れて以来雪が嫌いなようだ。あいつだって悪い奴じゃない。不器用なだけだと何度も言ったが聞く耳をもってくれず。雪には友達もいないし、俺より年の近い慎太郎に懐いてくれればとも思ったが、そうもいかなかった。
「それがよ、将生さんから止められちまって……」
「はあ?将生さんに話し通したんですか?隆司さん本当、お人好しが過ぎますよ。反対されるに決まってるじゃないすか。あいつは他人の苦しむ姿を見て楽しむ鬼ですよ?」
慎太郎すらもはや呆れ顔だ。お人好しなのかは分からないが、確かに将生さんになんか言わずに離れれば良かったんじゃないかと今になっては思う。
店に入っても慎太郎の機嫌は直らず、珍しく俺達は下らない話しもせずに不味い酒を飲んだ。お陰で一時間も経たずその日は店を後にした。
薄暗い夜道。濡れたアスファルトを並んで歩く。雨は止んだが纏わり付く生温い湿気が鬱陶しい。雪はこんな日が大っ嫌いで、仕事が無ければ一日ソファか自分の部屋でゴロゴロ過ごす。今日は仕事だが苛々してないだろうか。
「隆司さん」
その声にふと我に帰ると、慎太郎は鋭い視線を向けていた。
「俺は構成員時代風俗関係やってたから何人か見て来ましたけど、セックス依存症の子を直すなんて大変ですよ。原因が根深い事が多いし、殆ど家族絡みでしょ?それはもう自分の胸の内で解決するしかない。あんたが無理しないで、引きずってでもカウンセリング受けさせた方が良いですよ」
それは重々承知だ。だが雪は俺に性依存性だと言われる事を極端に嫌う。意固地になって病気と向き合おうともしない。とても俺が言って病院に行ってくれるとは思えない。
「……実咲ちゃんに頼めねえかな」
「何を言ってんすか。実咲を巻き込まないで下さいよ。それに隆司さんがやらなきゃ意味ないっすよ」
「そりゃそうだな。悪かった」
自分が思いの外限界に来ていた事にその時本当の意味で気付いた。関係ない奴を巻き込もうなんてどうかしてる。俺らしくもない。これは俺が背負わなきゃならない問題。例え慎太郎や実咲ちゃんに弱音を吐いたとしても、手を貸してもらうのは御門違いだ。
「……隆司さん。万が一間違いが起きても、完治する迄手は出さない事ですね。例え愛し合っていたとしても、あいつを傷付ける事になる。分かりますよね?」
そんな間違いは起きない……と思いたい。それに慎太郎の言ってる事は分かり過ぎて、何も答える事が出来なかった。夜道に流れる沈黙は、思いの外重い。
「じゃあ、お疲れ様でした」
頭を下げて去って行く後ろ姿が見えなくなる迄呆然と見送った。性依存性についても勉強した。雪が求めている物も分かる。だけど俺にはそれが与えられない。一体、どうしたら良いのだろう。
マンションへと戻っても全く思い付かなかった。あんまり頭で考えるとまた倒れかねない事は分かっている。それが雪を更に追い詰める事も。取り敢えずお互い見詰め合う事から始めてみれば良いだろうか。何でも相手を知る事から始まる物だ。最早自分でも訳が分からなくなっていたが、雪について知ってる限りの情報を思い出して見た。
あいつの嫌いな物。甘い物と生卵と梅雨、そして不安と、孤独だ。好きな物は頭を撫でられる事、豆腐、日陰、あとは……俺。
ふと将生さんの言葉が頭を過る。試されているか。どんなに長い年月を共にしたとして、きっと俺が雪を好きにならない限りは信じてくれないだろうな。俺の心はもつのだろうか。
考えが纏まらない内に、玄関の扉が開く音が響く。
「おかえり。仕事はどうだった?」
何でもない俺の問い掛けに、雪は苦しそうに顔を歪めた。
「男に抱かれて、気持ち良かったとでも言えば良い?仕事の事なんか、聞くなよ」
「……悪かったよ」
今日の湿気で苛々している訳じゃない事位分かる。ちょっとデリカシーがなさ過ぎた。反省する俺を尻目に、俯いてたまま雪は小さく呟いた。
「漸く、諦められると思ったのに」
そう言って必死に唇を噛みしめる姿に、胸の奥が痛む。
どうしてこんなにこいつは人の心を乱すんだ。そんな顔見せられて放っておける程、俺は人間捨ててはいない。
無意識に伸ばした手に縋るように胸の中に飛び込む小さな身体。雪は可愛い奴だとは思う。酔った勢いで間違えた事もあった。だがやはりそう言う目で見れないと、俺は言い聞かせるように頭の中で繰り返す。それでも救いたいと思うのは、残酷だろうか。だが決めたもんは曲げない。それが俺の性分だ。
「雪、約束する。俺はお前を見捨てる事はもうしない。だから信じてみてくれ。何度試したって構わない。俺が血を吐いたとしても、お前は気にしなくて良い。潰すつもりで来い」
「……何、言ってんの?」
「腹括ったって事だよ。その代わり、こっちも本気で行くから覚悟しとけよ?」
軽く頭を撫でてやると胸に顔を埋めたまま、雪は静かに涙を流した。
こうやって泣く程反省してそれでも何度も何度も過ちを繰り返し、互いに深く傷付き沈んで行く。どんなに優しくして、安心させようと努力を重ねても雪は変わらない。
それからも少し家を空ければ夜遊びを繰り返し、終いにはこの間の同級生とか言うストーカーを家に連れ込むようにもなった。怒鳴り合いをしてでもやってはならないと教える事しか、悔しさを隠しておかえりと言ってやる事しか俺には出来ない。それが酷くもどかしい。
雪の心の傷は深すぎて、もう完治は見込めないのかもしれない。それでもゆっくりで良い。心の底から愛せる人間が現れる迄、この手を引いてやろう。そう心に言い聞かせ、俺は逃げた。
こいつに呑まれる事が怖い。雪が本当の意味で俺を愛してしまったとしたら、俺の前から姿を消すだろう。性根は優しい奴だ。他人を思いやれる人間だ。だからこそ、重ねた罪の重さに耐え切れない。俺にして来た事への罪悪感に苦しんで、そして離れて行くだろう。
だから何時でも俺は一つ大きな壁を作る。それは亡くした者達への義理立てではない事も、心の奥底では気付いていたのかもしれない。それでも重い蓋をした。男とか、女とか。最早そう言う問題ではない。こいつは惹かれてはいけない人間だ。気付けば雪がいなければ生きていけなくなる程に、のめり込んでしまう。そう言う魔性の男。俺は本能的にそれを察していたのだと思う。
そして繰り返される、傷付け合う日々。何が正しくて、どうしたら良いのか。俺にすら最早分からなくなっていった。それでも手探りで進むしかない。
その中でも少しずつ、良くも悪くも変わっていった物もあった。それがとても大きな変化だった事を知るのは、それから一年近く後の事となる。
俺達は前へと進む。幸せと言う途方もない、未来に向けて。
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