Undergroundシリーズ

鴻上縞

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『Underground caT』

月下美人

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 壁一面の書物を見上げ、ぼんやりと背表紙の活字を追い掛ける。医学書、哲学書、小説に古書。まるでちょっとした図書館か古本屋。古い紙の匂いは好きだ。その中の一つを手にとって、傍で机に向かう男に問い掛ける。
「これ面白い?」
「さあ、雪にはどうだろうね。僕は好きだったけど」
 そう言って一瞬視線を向けた男は、再び手元の紙に筆を走らせた。凛とした綺麗な横顔をぼんやり眺めながら、畳に身体を横たえる。
 この男は二階堂家の次男坊、二階堂かなめ。大学病院で医者をしていたのに何だか知らないが物書きになりたいと最近出戻って来た。誰に流されるでもなく自分の生きたいように生きる正に自由人。それでもバカな昴と一緒にいるより断然落ち着く。
 ここ最近俺は隙あらば要さんの部屋を訪れてこんな風に時間を潰している。やはり上流階級の血筋だ。思わず見惚れてしまう程の気品さえ感じる。
 そんな事を考え見詰めていた俺に気付いた要さんは、少し色素の薄い瞳を俄に細めた。
「ほら、そんなにごろごろしたら着物が乱れる。また昴に変な勘違いされたら困るのは君だよ?」
 捲れ上がった裾を丁寧に直して行くしなやかな指に、仄かな期待が頭を擡げる。
「勘違いじゃなくなったら……どうなるかな?」
 足元を泳ぐ指先に、意味あり気に指を絡めた途端、要さんはピクリと身体を強張らせた。奥底で揺れる欲情に気付かない程俺は初心じゃない。張り詰めた緊張感に息をするのさえ躊躇われる。暗い背徳に足を踏み入れる寸前の、このヒリヒリするような空気は好きだ。
 けれどまだ、時じゃない。
「なんてね」
 パッと手を離して立ち上がると、盛大な溜息が漏れた。
「おいおい、悪い冗談はよしてくれよ。怖い子だね君は」
 呆れ果てた男を前に、俺は小さく肩を竦めて見せた。
「お休みなさい」
 そう呟いて障子戸を静かに閉める。中から漏れる淡い灯りが廊下に筋を作る様が、変な時代錯誤をもたらした。それどころか最早異文化に触れているみたいだ。嫌いじゃないけど。
 春先のまだ冷たい廊下をひたすらに歩き、向かう場所は当然、今入浴中のご主人様が待つ離れ。
「……あれ、もう上がっていたの?」
 一組しか敷いてない布団の上で苛立ちを抑え切れない鋭い視線が俺を捉えた。
「また兄貴の所か?」
「いけない?本がいっぱいあって面白いから」
「どうだか」
 心の中は掻き毟られる様な嫉妬でぐちゃぐちゃな癖に。余裕な面してるなんて癪だ。
「昴の心配しているような、〝やましい関係〟にはなっていないから安心してよ」
「誰がっ……!」
 強く引っ張られ布団の上に転がった身体の上に、何時もの様に昴が馬乗りになる。見下ろさないと不安で仕方が無いのはこいつの癖だ。タネが分かれば何も怖がる事はない。乱れた前髪を掬い上げてやると、切な気な瞳がぶつかった。
「ねえ、昴が愛してくれるなら、俺が要さんに抱かれる事はないんだよ」
「もういい、黙れ」
 腫れ物に触れるかの様な優しい口付けに答え、ゆっくり腰に手を回す。首筋に落ちる唇の弱い刺激にさえ、自然と腰が浮いてしまう。
「今日は、優しくして?」
 耳元を掠めた甘い囁きに少し困惑した様に眉を顰め、ご主人様はゆっくりと首を縦に振った。
 心の中に住まう悪魔がほくそ笑む。昴は確実に溺れ始めている。その証拠に、苛立っても無闇に手をあげなくなった。どうしたら良いのか分からなくて、中学生みたいなたどたどしいキスをする事も増えた。愛し方を知らないまるで子供。それは俺も、同じだけれど。

 月明かりに浮かぶ二つのシルエットと、短い媚声。一定のリズムを持って響く卑猥な水音。何もかもが酷く官能的に感じられる様に導いてあげる。優しくしてくれたらこんな風に、極上の快楽をあげる。寄せては引く波のように、心を攫うのは得意。甘く見ていたのはどちらか、今ではもう分からない。

 二階堂昴の狂気の元凶は、やはりこの家庭環境にあった。犬飼に聞いた話しだから全て真実と言う訳では無いのだろうけれど。
 譲さんは自らが一線を退いた後は、長男に会社を継いでもらいたかったそうだ。だけど長男はそれを突っぱね家を出て、今やテレビで見ない日はない程の人気俳優。長女は元から土俵にすら上がっていなかった為、次に白羽の矢が立ったのは要さん。だけどあの人は会社経営にまるで興味を示さなくて、結局自分の道を悠々と生きた。
 問題は昴。小さい頃から両親が上二人に夢中だったお陰で、使用人に育てられ、気を引く為に問題も随分起こしていたらしい。絵に書いたような甘えん坊の末っ子だ。二人が跡継ぎを蹴った時、当然次は自分だと意気込んでいたらしい。今まで見向きもされなかった自分の番が漸く回って来たんだ。
 そう思ったのも束の間で、譲さんは何も子息に継がせる事もないと決め込んでしまった。愕然とした昴はせめてもと華道の道へと手を伸ばしてはみたが、見向きもされなかったらしい。
 その鬱憤が爆発したのが十五歳の時。使用人に怪我を負わせ、傷害で更生施設に入った事をきっかけに捻じ曲がり始めてしまったそうだ。俺と刑務所で出会った時も傷害だった。
 怯えた母親の桜さんが過保護になったのも、その所為だとか。今でも昴は二人の兄への劣等感と対抗心を捨ててはいない。それは俺が要さんに懐く様になってから不機嫌さが増したからよく分かる。それを上手く利用する機を、俺は爪を研いで待っているんだ。
 そんな謂わば潜伏期間が刻々と過ぎて行く中、裏で動いていた人物がいた事など俺は知る由もなかった。

 梅雨の始まり。俺が一番嫌いな季節。濡れた土の匂いに、庭の紫陽花の香りが合わさって何とも比喩し難い空気が漂う。重苦しい梅雨は、自分の人生そのものに酷く似通ってる気がするから嫌いなんだと最近気付いた。
「本当に猫みたいな奴だな」
 縁側に伸びていた俺に声を掛けたのは、犬飼だった。俺の冷めた視線をものともせず隣に腰を下ろし、静かにガラス戸の外を見詰める横顔をぼんやり眺める。相変わらず犬飼の姿に隆司さんを重ねる俺は最低だろうか。何だかやるせない。
 ふいと視線を逸らした先で、青い紫陽花が空から落ちる雨に揺れていた。
「……早く夏になんないかな」
 息苦しい程に暑い夏が待ち遠しい。そのままお互い言葉も交わさず、ただ濡れて行く庭を見詰めていた。
 どれ位時間が経っただろう。ほんの数秒のような、何時間の様な不思議な時の流れを壊したのは犬飼だった。
「山室隆司が、迎えに来た」
「……え?」
 あまりにも突拍子もない言葉に、怠さなんかたちどころに吹き飛んだ。飛び起きた俺を真っ直ぐに見据える犬飼の瞳が、あまりにも切ない。
「後の事は俺に任せて、お前はあいつの元に戻れ」
「犬飼……」
 髪に通す指先は、この無骨な男には酷く似合わない。優しくて、深い情愛に満ちていた。俺は何度この男に救われただろう。そして何度、その想いを裏切って来ただろう。
 謝るにも烏滸がましい気がして、深く頭を下げるので精一杯だ。こんな俺を、許して欲しい。ポンと背中を叩かれ、俺は応接室へと足を進めた。多分犬飼はこの日を待っていたんだ。昴が個展でいない、今日と言う日を。

 それぞれの思惑が絡まり合った糸のように交錯する二階堂家。自分だけの玩具を奪われまいと足掻く昴。ただ真っ直ぐに、信念を貫く犬飼。そして何もかもを壊す為に画策する俺。その全て、誰かを想うが故の物。
 母さんの裏切りに狂った父さんの姿が、ふと脳裏に浮かんだ。幼い頃の悪夢の日々。初めて、男を知った日。
 自然と身体が震える。やっぱり愛って怖い物だ。応接室の襖の前でそんな事を考えている自分に自嘲の笑が漏れる。この向こうに、隆司さんがいる。六年もの長い間想い続けた男がいる。何を恐れる事があるんだ。自分に喝をいれて、重い襖を開く。
 静かに開かれたその先で、ソファに腰掛ける変わらぬ姿に、声を上げて泣いてしまいたくなった。会いたかった。それだけなのに。
「久しぶりだな、雪」
 無駄に渋い良い声だって冬弥がよく言っていたっけ。俺にとっては無駄じゃない。その声だけでこんなにも胸を締め付けられる。名前を呼ばれるだけで嬉しくて、泣きたくなる。
「少し、痩せたか?」
「……隆司さんこそ」
 少し、疲れて見えた。将生さんが蒸発しても忙しいんだろうか。ちゃんとご飯は食べている?ちゃんと眠れている?聞きたい事は沢山あるのに、上手く言葉にならない。必死で涙を耐える俺の頭を隆司さんはいつもみたいに撫でてくれた。
「遅くなって悪かったな。帰ろう、雪」
 どれだけこの日を夢に見ただろう。叶わないと決め付ける事で自分を守る程に、焦がれただろう。差し出された手を取って、縋ってしまえたら……どんなに幸せだっただろう。だけどここで甘えてしまったら、結局何も変わらない。それは誰よりも俺が一番分かってる事。
「まだ、帰れない。これは俺の贖罪なんだ」
 こんな所迄来てくれたのに、裏切ってごめんなさい。こんな自分勝手な人間いっそ嫌いになってくれて構わない。それでも受け入れてくれるって腹の底では分かってる。俺はズルい人間だ。
 そんな恩知らずな俺に、隆司さんは少し困ったように笑った。そんな優しい顔も好きだった。
「全く。こっちが一世一代の覚悟で来たってのに。お前は本当に期待を裏切ってくれるな。分かったよ。納得するまでやってみな」
 あんたはどこ迄もお人好しだね。傷付いて、苦しんで、一体何を手にしたの?こんな悪魔、早く見捨ててしまえば良かったんだ。手に負えないって、放り投げてしまえば良かったんだ。そうしたらきっと、俺は二度と立ち上がる事も無かった。暗い暗い地下をひたすらに生きて行っただろう。重い罪を重ね続けた人間にはお誂え向きの末路。自分でもお似合いだって分かってる。
 だけど本当はね、助けて欲しかったんだ。俺だって、普通に誰かを愛してみたかったんだ。欠陥品のまま人生を終えるなんて、嫌だったんだ。
 隆司さんのバカがつく程のお人好しは、そんな俺を救ってくれた。空に伸ばした手を掴んでくれた。それでも誰かを信じて傷付きたくなくて、その深い愛情に気付かないフリをした。自ら助けを求めた癖に振り払って、泥濘に足を踏み入れて。迷って迷って何もかも見失って。本当にどうしようもないガキだった。それでも今やっとその出口を見付けた。
 ただ、真っ直ぐに、誰かを想う。そんな当たり前の事がこんなにも難しいなんて、知らなかったよ。
「隆司さん、俺、あんたを愛してるよ」
 ふっと笑った顔に胸が熱くなる。
「答えは帰って来てからな」
「何それ……ズルい」
 顔を見合わせて笑って、どちらともなく手を伸ばす。胸に埋めた鼻先に懐かしい匂いがふわりと香る。大好きなこの人の匂い。ソファに腰を下ろして几帳面に洗濯を畳む背中が浮かんだ。
 ずっと手に入れてしまうのが怖かった。自分の薄汚い性根を自覚するのが怖かった。隆司さんに興味がなくなる事が、何よりも怖かった。虚勢を張って、逃げ回って、そんな俺の事を知ってる癖に、愛してくれたんだね。
 身体を離して見詰めあって、俺は心の奥底で憧れ続けていた幸せに触れた。涙を優しく拭った指先がそっと唇をなぞる。
「待ってるよ、雪」
 答えは帰ってからだと言った癖に、触れるだけのキスをして、隆司さんは小さく微笑み掛けてくれた。

 母さんとの別れの日、吐いた嘘。俺が誰かを愛して、その人も俺を想ってくれる。支配欲でも独占欲でもなく、こんな風に真っ直ぐに。永遠に嘘だと信じていたものがこんな時に真実へと変わるなんて。運命って残酷だ。再び抱き締められた腕の中で、この温もりを忘れてしまわないように願う。
 俺、本当に隆司さんが好きだ。何よりも大切で、この命に替えても守りたい。隆司さんが笑っててくれるなら何にもいらない。だからどうか、幸せでいて欲しい。例え浅はかな俺の計画が頓挫して、あなたの元に帰る事が出来なくなったとしても。背中に回した腕に力を込める。それだけで、涙が止まらなかった。

 隆司さんはそのまま二階堂家を後にした。追い続けた背中は、今もまだ遠くに見える。だけど少しだけ景色が変わって見えるのは、気のせいではない筈だ。待ってるよ──その言葉を信じて俺は進むのみ。

「バカ野郎、何でここに残ったんだ!」
 苛立ちを隠し切れない声が静かな和室に響く。犬飼の怒りはごもっとも。俺がここにいれば、犬飼だって辛い。知りながら進む事がどれほど罪深いか理解はしてる。だけど放ってはおけなかった。
「俺、昴の気持ちが分からない訳じゃないんだ。誰にも見付けてもらえない辛さも、それが歪んでしまう事も」
 痛い程に分かるんだ。だから今のままじゃダメだ。
「……坊ちゃんの為に?」
「まさか。俺はそんなお人好しじゃないよ」
 言葉通り、こんな事自己満足だって分かってる。罪は消えない事も。それでも少しでも汚れ切った心を白に近付けてから隆司さんの元に帰りたい。誰かを傷付けるしか脳がない自分じゃ嫌だ。そんな事の為にここに残った。
 愚かだと言われればそこ迄。それでも貫き通したい俺なりの信念がそこにはある。隆司さんを愛するが故に、今はまだ、離れてなければいけないんだ。
 けれど犬飼には理解が出来ないみたいで、硬く握った拳を震わすその姿に胸が苦しくなった。
「幸せになってくれよ、頼むから」
 絞り出すように呟いて、強く抱き締められる。あまりにも真っ直ぐな犬飼の想いはやっぱり辛い。
「犬飼、俺は幸せだよ?」
 だからどうか、こんな人間の為に傷付かないで欲しい。もしも隆司さんの元に戻る事が出来なかったとしてもそれは自業自得。それ位の事は分かってる。
 抱き締める腕に力を込めた犬飼の背中には、やはり腕は回せなかった。それは俺の心に僅かに残る、良心なのではないだろうか。
「やっぱりか」
 突然のその声に犬飼は弾かれるように身体を離した。俺の頭は至極冷静で、音も無く開かれていた障子の向こうで佇む姿にゆっくり視線を合わせた。
 こうなる事を予想はしていたんだ。独占欲の強いご主人様が、手癖の悪い飼い猫を置いて、長い時間家を空けられる訳がない。少しの隙があれば必ず、良い子にしてるかチェックしに帰って来る筈だと。
「少し目を離せば直ぐに男を誘惑する。どこ迄人を苛立たせば気が済むんだ?」
 侮蔑を込めた冷たい言葉と共に振り下ろされた平手が頬を打つ。衝撃に思わずよろけた俺の腕を掴んだ昴の瞳が、抑え切れない嫉妬に揺れている。
「坊ちゃん……!」
「俺の物に手を出すな!」
 鋭い怒声に一瞬、俺ですら息を飲んだ。それでも我に帰り食い下がろうと口を開いた犬飼を、俺は慌てて制す。
「良いから!」
 ジンジンと熱を持ち始めた頬はきっともう赤くなっているだろう。そんな事どうでも良い。きっと今が正念場。逃す訳にはいかないんだ。
「二人にして欲しい」
 俺の言葉に納得し切れていない顔を見せたが、小さく頷いて見せると犬飼はそのまま部屋を後にした。その目配せが気に食わなかったのか、障子が閉まった途端、昴は思いっきり胸倉を掴み上げた。
「このっ……!」
 振り上げられた腕にも怯えはない。様々な感情が入り混じり不安に揺れる瞳を、俺はひるむ事なく真っ直ぐに見据えた。
「殴りたいなら気が済む迄殴れば良い。けれどそれでお前の欲しい物が手に入る?その胸の苛立ちは、解消される?」
「……は?」
 俺も同じ。訳のわからない苛立ちを、不安を打ち消したくて男に溺れた。セックス依存症と言う病名迄頂くほどに。俺はここにいると、誰かにただ知って欲しくて。
「俺は昴を見失ったりしない」
 突拍子もないように思える言葉に、綺麗な切れ長の瞳から一筋、涙が零れた。それっきり続いて溢れる事は無かったけど、昴は動く事も出来ない衝撃に出会ったように真っ直ぐに俺を見詰めていた。
 まるで迷子の子供が知らない大人に出会った時のような、不安と、困惑と、そして微かな希望が入り混じった表情。きっと隆司さんに出会った時、俺も同じ顔をしていたのだろう。初めて自分を見付けてもらえた喜びを、感じた時の幼い表情。
 俺は隆司さんのように優しくはないし、お人好しでもない。それでもどうか、昴には変わる強さを持って欲しい。たった一人で逃げる事がどれだけ苦しいか、存在すら認められず生きて来た俺にはよく分かるからこそそう願う。
 呆然と見詰め合う時間だけが過ぎると、突然バタバタと廊下を走る音が遠くから近付いて、昴は慌てて涙を拭った。
「坊ちゃん!突然いなくなったと思ったら……!さあ、桜さんもご心配なさってますから早く戻りましょう!」
 弟子の一人に捲し立てられ、昴はそのまま二階堂家を後にした。

 まるで嵐の過ぎ去った後のような穏やかな静けさに、自然と溜息が漏れた。
 人気の無くなった離れで一人、ぼんやりと空を見上げる。重い雲から落ちる雨は止みそうにない。ガラス戸を開くと、冷やされた風が熱く火照る頬を撫で上げた。込み上げたのは不思議な高揚感。強い決意を持って進む前の、胸の高鳴りだ。
 待っていてね、隆司さん。俺は必ずやり遂げてみせるから。この重い泥濘を越えて、今度こそ真っ直ぐに、あなたを愛する為に。

 梅雨が明け、待ち焦がれた夏が訪れた。遠くに見える入道雲が陽炎にゆらりと揺れる。今年の夏も暑い。
 ここでの生活も早半年。少しだけど使用人とも話しをするようになったし、出入りしてる弟子の顔も覚えた。この離れから出る事もないし、二階堂家を出る事も叶わないけど、着物生活も古い日本の文化も苦ではない。着物といえば相変わらず自分では着られないけど。かと言って昴が俺の着付けをするのが嫌いじゃないことも知っているから学ぶ気もない。
 甘やかされて、甘やかして。いつしか俺と昴の関係は、ヒリヒリした緊張感を持つ敵対関係から、甘い主従関係へと変わっていた。まるで大切な物を扱う様に抱かれる事も増えた。予想外かと言われたらそうでもない。俺は元々、こうなる事を望んでいた。

 何時ものように庭から聞こえるけたたましいアブラゼミの声で目を覚ます。
「暑い……」
 言ったってどうしようもない事位分かっているが、思わず本音が口を付いた。それもその筈。昨日の夜から変わらず昴に抱きすくめられたままだから。身体から湯気すら立ち昇りそうだ。こんな時はいつも日本の男子の平均身長より少し小さい自分を恨む。
 どうにか離れようともがいてみたら、長い腕が腰に回り、いよいよ振り払えなくなってしまった。諦めも肝心だ。腰に抱き付いたままの昴を引きずる様に這って、扇風機のスイッチに手を伸ばす。それだけの移動で額に汗が滲んだ。暑いし鬱陶しいし。
「ガキ」
 俺も隆司さんにこんな風に縋り付いていたのだろう。そう思うと笑えた。扇風機が運ぶ熱風にも限界を感じて蹴り飛ばす勢いで引き離しにかかると、昴は漸く起きる気になったようだ。
「ほら、朝飯行くよ」
 胡座をかいて欠伸をしている昴に床に置かれた着物を突き付けると、至極面倒臭そうな視線が投げられた。
「いい加減覚えたらどうだ?」
 一つ溜息を吐いて何時もの様に器用に着付けて行く。面倒臭いと言いつつ誰かに求められる喜びに微かに瞳を輝かす昴を見下ろして、俺は一人心の中でほくそ笑んだ。
 帯を締め終わった頃を見計らって額に唇を落とすと、子供のような瞳が俺を見上げた。
「ありがとう」
 止まっていた腕が腰に回る。縋るように抱き着く昴の髪を優しく梳いた。
 こんな風に甘い甘い飴をあげて、俺は崩壊の時を待つ。乾いた夏の匂いが風に運ばれて鼻先を掠めて行った。期は、近い。

 朝食を食べて離れに戻ると直ぐに昴は仕事にかかる。床の間に腰を下ろしてぼんやりとその背中を見詰めるのも半年間なんら変わらない日常。暇だから昼寝して、夕方近くに目を覚ましても昴は花と向き合ったまま。よく飽きもしないで同じ作業してられるもんだといつも感心する。ついでに正座も崩さない。俺なんか直ぐに足が痺れて立てなくなるのに。
 そんな取り留めのない事を考えるのにも飽きて、庭を望める廊下に静かに足を運んだ。広い庭から吹き込む夏の風は、ビルの間を通り抜けて行く風よりも少しだけ涼しい。
 真っ青な空にじわじわと夕焼けが忍び寄る。入道雲の輪郭が淡く輝く様があまりにも美しく感じた。こんな風に空を見上げると隆司さんに会いたくなる。今、何を思ってますか?茜色に染まる雲を見つめ返ってくるはずのない答えをただ待つ時間は、嫌いじゃなかった。

 夜はまた昴が風呂に入っている隙をついて要さんの部屋に足を運ぶ。我ながら良くやるよ。
 スラリと障子を開くと、机に向かっていた男が振り返る。その端正な顔には含みのある笑みが浮かんでいた。
「最近昴が大人しいんだけど、何かしたのかい?」
 バカにしているような、それでいて弟の変化に喜んでいるような。要さんはそんなどちらとも取れる言い方をした。
「別に。何もしてない。坊ちゃんも大人になる為に蛹にでも篭っているんでしょう」
 なるべく素っ気なく言って読むともなしに本を手に取る。
 要さんは真っ直ぐである意味純情な昴とは違う。頭も回るし口も達者。常に余裕をかましていられる程によく周りを見ている。そして自分の為にはどんな面倒な事柄も厭わないタイプの人種だ。言ってみれば俺に近い。ただ違うのは、要さんはその為に誰かを傷付けるなら二の足を踏むだろうと言う事。
 憶測でしかないのは、俺達は何時でもこんな風に探り合いをしているから。本心を隠し相手の出方を伺う。はっきり言って下卑た関係だ。
 そんな事を考えている俺の背中越しで、小さな笑いが漏れた。
「成る程ね。さしずめ君はその蛹から羽化した蝶って訳か」
「……何で?」
 思い掛けない言葉に振り向いて顔色を伺うと、悟らせる訳がないとでも言いたげな、不自然に優しい微笑みが向けられた。
「一皮剥けた顔をしているからね。山室、隆司と言ったか。あの男がここを訪れた日からね」
「知っていたの?」
「二階堂家の使用人はお喋りなのさ」
 成る程と今度はこっちが納得する番だ。問題児の昴には近付かなくとも、誰にでも物腰が柔らかく大人で、加えて完璧な容姿を持つ要さんは使用人など簡単に掌で転がせるのだろう。弟の飼い猫が悪さをしないかちゃんと見張っていた訳だ。それとも、別の理由があるのかも知れないけれど。その真意を探りたくて、本を戻して要さんの隣に腰を下ろす。
「昴には、秘密にして」
 不安気な瞳で見上げる俺に、要さんはふっと瞳を細めた。あまりにも冷たいその色に一瞬息を詰める。
「この籠の中にあの子を置いて去る気かい?」
「……籠?」
「あの子は二階堂家に囚われた哀れな小鳥。君は昴をどうしたいの?助けたい?それとも、壊したい?」
 心臓が嫌な音を立てる。クーラーの冷たい風が嫌に冷たく感じて、小さく身体が震えた。
「……何の事?囚われたのは俺だ」
「そうかい?僕には可愛い弟が悪い小悪魔に捕えられてしまったようにしか見えないのだけれど」
 腰に回った手がぐいっと身体を強く引き寄せられ、見上げた要さんの瞳には熱い何かが揺れていた。
「答えてよ、雪」
 自分の息を飲呑む音が嫌に耳に響き大袈裟な鼓動がどくんどくんと脈を打つ。口さえ開く事の出来ない張り詰めた緊張感に背中に嫌な汗が滲んだ。
 時が止まってしまったと錯覚する程の緊張感がふっと解かれたのは、要さんが唐突に身体を離してからだった。未だ呆然としている俺に向かって机の脇の本を投げると、要さんは小さく笑った。その視線が何を指すのか。幸運にもそれを瞬時に察することが出来た俺は慌てて本を開く。同時に音も無く障子を開いたのは、案の定、昴だ。
「おや、珍しいね。探し物かい?」
 白々しくそう言って余裕の笑みを浮かべる要さんに一瞥くれると、直ぐに鋭い瞳が俺を捉えた。
「戻るぞ」
 冷たい声に促されるまま本を机に戻して立ち上がる。昴はそんな俺の微かな変化さえ見逃すまいと視線を這わす。まるで監視されているようで何だか気分が悪い。
「お休みなさい」
 俺のその言葉を合図に漸く昴は踵を返し要さんの部屋を後にした。そのまま離れの部屋に戻るのかと思いきや、昴の足は何故か庭に向かっていた。何処に行くのだろう。
 見当も付かず足を止めその背中を見詰めている俺に振り向いた昴がついて来いと顎で差す。夜の闇に溶けて行くその姿を見失わないように、慌てて石段の上に置かれた雪駄を突っかけて追い掛けた。
 虫達が夏の夜に歌う中を、昴は何も言わずに歩き続ける。日本庭園さながらに美しい庭を通り抜け行き着いた先は、離れの裏手だった。俺がいつも寝転んでいる廊下からも見える位置。
 足を止めた昴が、月光の下で夜風に揺れる一輪の花を仰ぐ。
「……何?この花」
 サボテンのような葉っぱの隙間から伸びる大きな白い花が、月に向かい首を擡げていた。綺麗だけどどこか不思議な妖艶ささえ感じる。辿り着く少し前から香っていたがここにきて一層に強く鼻を突いた匂いの所為だろうか。こんな花生まれて初めて見た。
 思わず見惚れていると、昴の指先が軽く花弁に触れる。
「月下美人だ」
「……月下美人?」
 聞いたことも無い。花なんか興味は無かったし、聞いたことがあるとしても忘れているのだろう。
「こいつらは夏の夜に、数時間だけこの美しい花を咲かせるんだ」
 だから廊下からも見えるこの位置にあっても見た事が無かったのかと一人納得する俺の髪に、まるで花弁に触れる時のような優しい指先が触れた。
「真っ白で、純真で、その癖妖艶に誘う匂いを発して……見惚れているうちに、消える」
 不安を映し出す瞳の中にいる月明かりに弱く浮かび上がる自分の姿。吸い込まれそうな程に綺麗なその瞳が眩しくて、昴の指先に頬を寄せ静かに目を閉じる。さらりと髪の擦れる音が耳元を擽って、唇に触れた優しい感触に、思わず笑ってしまおうかとも思った。
 まるで俺が別れの日、あの人に落とした様な口付け。苦しくて、切なくて。それでいてどうしようもなく愛おしい。その感情がこの男に重い不安を与えている。
 とうとう堕ちたな、昴。月下美人を俺と重ねたと言う事は分かっているからだろう?いつか必ず、俺が自分の前から姿を消す事が。それは何よりも嬉しい知らせだ。暗に二階堂家を離れる許しを得たのだから。でも何だって順序が大切。段階を踏まなくてはね。
 薄い月明かりの下で、昴の想いを感じながら、俺は一人頭を巡らせた。茹だるような熱帯夜。立っているだけで汗が滲む程。それでも頭の中は酷く冷え切っている。微睡みの中でさえ熱く胸を焦がすのも、目の裏側に浮かぶのも、今尚、隆司さんただ一人。

 次の日の深夜。眠る昴の腕を抜け出して、俺は一人寝静まった屋敷の廊下を歩く。半年間耐え抜いたこの計画に、最後の花を咲かせる為に。
「やはり、来たんだね」
 淡い行燈に照らされた男の顔に浮かび上がるものは、暗く淀んだ欲情の色だけ。バレているならば取り繕う必要もない。それはそれで楽なもんだ。自分の性根を、晒せば良いんだから。
「分かっているなら手を貸してよ、要さん」
 垣間見えた本性に整った顔が歪な笑みを浮かべた。
「僕は何をしたら良いのかな?」
 トボけたフリして頬を撫でた指先が、ゆっくり首筋へと落ちる。男も女も初めは同じ。獣のように交わる前は、人間らしく愛でる物。激しい快楽の波間に飲み込まれる前の甘い時間はこんな俺でも必要だ。
 男を抱く事に抵抗も戸惑いも見せない男を前に、どうでも良い疑惑が頭を過る。
「要さんってさ、男、初めてじゃないでしょ」
「だったら?好都合?」
 その通り。答えの代わりに瞳を閉じて、触れる指先の熱さに神経を研ぎ澄ます。要さんに抱かれた。その既成事実を作りさえすれば良い。後は、楽しむだけだ。
 落ちて行く指先が、浴衣の隙間に忍び込む。硬い爪が素肌を掠める度に背筋をしならせ、俺は熱い吐息を吐いた。けれど要さんは意地悪く、執拗に焦らすばかり。焦らされれば焦らされる程、欲望ばかりが滾って行く。
 遂に耐え切れなくて、俺は熱を持ち始めた男の身体に枝垂れかかり、腕の中でその顔を仰いだ。
「ねえ、ちゃんと、触って」
「どこを?」
 戸惑うフリをして、長い指先を中心部へと導いて行く。早く核心に触れて欲しくて、もどかしい。下着も着けぬ浴衣の下で、しなやかな指が頭を擡げ始めた花芯に触れる。要さんはその瞬間、美しい唇を皮肉に持ち上げた。
「肌に触れただけなのに、こんなに涎を垂らしてる」
 羞恥に頬が燃え、背筋を官能が擽って行く。緩やかな摩擦に耐え兼ねただらしのない唇からは短い嬌声が溢れた。けれどその瞬間唇を奪われ、これまでとは打って変わった荒々しい凌辱に、俺は思わず背中から倒れ込んだ。
「その声、僕の方が攫われそうだよ」
 攫おうとしているんだよ、馬鹿な男。
「もう、欲しい」
 そして咲かせてくれればいい。俺の肌に、あんたの欲望の華を。
 俺達はそのまま極上の快楽を求め合い、ゆっくりと眠りに堕ちた。

 明け方にふと目を覚ますと、要さんも同時に目を開いた。
「おはよう。身体は?平気?」
「慣れてるから」
 そう、と小さく呟いて要さんの綺麗な瞳は、二重瞼の下に再び姿を隠した。
 昴以外の男の身体が久しぶりだったからだろうか。珍しく夢中になってしまって身体の至るところが軋む。そろそろ昴の元に帰らなくちゃ。
 そう思って起き上がった瞬間、一瞬脳の片隅をチラリと過った影にギクリと心臓が縮み上がる思いがした。俺は何かを見落としてやしないだろうか。それも最も大切な、何かを。途端に全身を駆け巡り押し寄せる言いようのない不安感に、身体が一つ、大きく震えた。背筋を冷やす汗は、情事の名残りなんかじゃない。何だこれは。
 顔面蒼白の俺に気付いた要さんが上体を起こして覗き込む。
「どうかした?」
「……何でもない」
 何でもないんだ。この不安の正体を考えてはいけない。考えたら、壊れてしまう。そんな気がして、慌てて要さんの部屋を後にした。
 薄っすらと白む空の色が優しくて、自然と大きく息を吸う。これからが本当の人生だ。俺は変わる。変わるんだ。込み上げる不吉な不安も、いつしか昇り始めた眩しい朝日に溶かされて消えた。

 静かに離れの障子を開いた途端、待ち構えていた腕が乱暴に胸倉を掴み上げ、俺は抗う事もなく布団の上に組み敷かれた。何が起きたのか考えるまでもない。見下ろす昴の瞳は、狂いそうな嫉妬の他に、微かな希望が混じり合い、まだ低い朝日に輝いていた。俺はその希望を踏み躙る。
 恐る恐る鎖骨を撫でる長い指先が、俄かに震えていた。わざとらしく残された、白い肌に映える紅い華。要さんの証。
「最低だ」
 ぼそりと呟かれた言葉に我ながら納得してしまった。確かに俺は最低だ。……最低だな。
 静かに目を閉じて、俺は怒りをそのまま受け入れるつもりでいた。殴られて、責められて。それで良い。その方が、俺も楽だ。
 けれど何故かその日の昴は優しかった。何故か、と言うのは語弊があるかもしれない。俺は心の底で分かっていたんだ。こうなる事を。だからこそそんな浅ましい自分をただ、責めて欲しかった。
 縋るように指を絡め、切な気に声を上げる唇は優しく塞がれる。それは乱暴に抱かれるよりも苦しくて、知らない間に涙が溢れていた。それは昴も同じ。キツく抱き合いながら互いに上り詰める。そんなあまりにも痛々しいセックスだった。

 気付けばもう、夕焼けが空を茜色に染め上げていた。息をする事さえ億劫なのに、それでも俺は震える身体に鞭を打つ。荒く息を吐く唇に触れるだけのキスをして、激しく上下を繰り返す胸に、そっと頬を寄せた。
「愛してるよ、昴」
 苦しい程に強く抱き締められる腕の中で、静かに瞼を閉じた。
 ねえ、昴。人は力でねじ伏せて傷付けるように犯されても決して屈服する事はない。金でも愛でも心だけは手に入らない。それも全部、分かり始めているんでしょ?チンケな嘘を吐く俺を責めないのも、嘘だと知っているのに心が震えるからでしょ?
 手を出してはいけなかったんだよ。真っ直ぐに誰かを愛する人の気持ちを、踏み躙ってはいけなかったんだよ。分かってくれればそれで良いんだ。
 そんな微睡みの中、ベタつく身体が気持ち悪くて風呂に入ろうと重い身体を無理矢理に起こす。だけど立ち上がるよりも早く、昴の腕が俺を捕らえた。腰にキツく抱き着く姿は、やはり迷子の子供の様だった。
「……行くな。何処にも、行くな」
 ここに来て胸が苦しいなんて。俺も所詮は頭の甘い人間だったって事だろうか。だけど昴の願いを叶えてやる事は出来ない。
「こんな俺を、待ってくれているんだ」
 胸に顔を埋めたまま、昴の瞳が俺を捉える事は無かった。それこそこの甘ったれの坊ちゃんが、自分のしでかした事を自覚した何よりの証拠。もう二度とこんな事はしないだろう。心の痛みを知ってこそ人は成長して行くもんだ。俺もまた然り。昴も変われると良いね。その思いを込めて、色の抜けた髪に頬を寄せる。
「……ごめん」
 掠れた声が聞き取れない位の小さな声でポツリと零した言葉。それは、事実上の解放宣言だった。

 浅はかな計画は見事に成功した。俺はそのまま荷物を纏め、誰にも会わずに屋敷を後にした。半年過ごした二階堂家を仰ぎ見て胸が少しだけ痛むのは、情と言う名の愛が芽生えたからなのだろうか。
 二度と会う事のないだろう、昴に犬飼。俺を変えてくれた二人に心から感謝したい。それしか出来ないけれど、ただ一心に幸せを願うよ。

 タクシーに揺られ長年暮らしたマンションの下まで辿り着くと、込み上げる物に思わずボロボロと涙が溢れた。マンションの前の花壇に腰を下ろしていた人影が、原型を留めない程に滲む。こんなに会いたかったのに勿体無くって、それでも拭う事すら出来なかった。
 飛び込んだ腕の中で鼻先を掠めたものは、どんな花よりも、どんなに好きな香水よりも、世界で一番胸を熱くする隆司さんの優しい香り。帰って来たと実感する度に年甲斐も無く涙が溢れた。
「おかえり、雪」
 堰を切ったように腕の中で泣き続ける俺を宥めながら、隆司さんは困ったように笑った。

 蝉が競うように泣き喚き、輪郭が淡く光り輝く夏の夕暮れ。大好きな人の腕の中で、漸く手にした幸せを噛み締める俺の脳裏に微かな焔がチラリと燻る。俺も、隆司さんでさえも忘れていたんだ。ここが何処であるか。何を背負って生きているか。その何もかもを。幸せとは得てしてそう言う物である。

 壁は高い。闇は深い。道は、暗い──。
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