婚約破棄をされましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました。

はゆりか

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3、ゲイル兄様と私

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早々と夜会から1人で帰宅した私を使用人達が驚いた表情で見る。

「ティナ様っ。どうなされましたか?まだ夜会のお時間では?」
執事長のメリールが私に気づいて掛け寄ってくる。

「どうもこうもないわ。マイク様から婚約破棄を言い渡されたの。腹が立ったので了承して帰ってきたわ。」


私の答えに執事長を始め、周りにいたみんなが真っ青な顔をする。


「へ…陛下にご連絡を…後、皇妃様にも。」

みんなが慌てふためく。

私はフゥとため息を吐いて大騒ぎしている皆を横目に自室へと向かう。

部屋に入ってソファーに腰掛けると時計に目をやる。
夜会に向かう為に城を出てからまだ1時間も経っていない。

折角朝から身体中を磨いて苦しいコルセットまで着けて準備したのに…だんだん苛立ちが募ってくる。

しばらくすると話を聞いただろうサリーが部屋をノックして入ってくる。

「ティナ様っ。お話は聞きました…マイク様がお迎えに来られない事から嫌な予感はしておりましたが、婚約破棄なんて…一体何を考えられているのでしょう。」

大人しいサリーが珍しく怒りを露わにしている。

「マイク様は弟の婚約者と恋仲になったらしいわよ。」
「はっ?」
「私は皇族という立場を利用して他の御令嬢達にかなり酷い対応していたらしいわ。」
「はい?」
「私は無意識に高飛車なんですって。」

私の言葉にサリーは固まる。

「な…なんですか?それ…何故そういう話になるのです?ティナ様はいつも皇族の一人として皆様に分け隔てなく接していられますし高飛車な態度など私達使用人にすらとられた事ありませんっっ」

サリーは悔しいのか自身のスカートをぎゅっと掴んで刻みに揺れる。

「マイク様には私はそう見えていたのよ。」
私はただただ呆れてもう何も言う気になれない。


コンコン

部屋がノックされてサリーが反応すると今度はゲイル兄様が部屋に入ってくる。

「ティナ…聞いたぞ。大丈夫か?」
「大丈夫かと聞かれたら大丈夫ではありません。」
「だろうな…アイツまじで何考えてんだ?」
「さぁ?何を考えているのでしょう?」

ゲイル兄様はそばにあった椅子を持つと私が座っているソファーの近くまで来てその椅子に座る。

「ちゃんとした手順も踏まず婚約破棄なんて…皇族うちを馬鹿にしてタダで済むと思ってるのか?」

「タダでは済まないでしょうね。」

私は左手を頬に当ててコテっと首を傾げる。

「まぁ。普通に考えてお前に非は無いのは明らかだろうからタダでは済まないよな。」

ゲイル兄様も呆れたように言う。


私は部屋にある時計に再び目をやる。

「きっと今頃、夜会会場に公爵と公爵夫人がいらしてマイク様に怒り狂っているでしょう。」

「だろうな…ちょっと見てみたかったな。」

ゲイル兄様が顎に手を当てて悪戯げに笑う。

「そんなのを見て何が楽しいの?」


私が呆れ気味に言うとゲイル兄様は「楽しいじゃん」と意味ありげな顔をする。


「失礼します。」
サリーがお茶を用意してくれてお兄様は椅子からソファーにドカっと座り直す。


「…で、お前はこれからどうするんだ?」

ゲイル兄様はもうマイク様には関心がないらしく私に指を差して今後の事を聞いてくる。

「そうですね…しばらく婚約者などに縛られないで1人自由な時間を過ごしたいですわね。」

私の答えにゲイル兄様はクククと笑い出す。

「お前らしいな。でもきっと母上はそんな事許さないぞ。」
「うっ…」

お母様は穏やかで優しい人ではあるが、兄妹の中で唯一の女である私には色々と厳しく教育されている。

女が幸せになる為には努力と強さ。そこに愛らしさが必要だ…という考えの人です。

『婚約者がいる事は女にとって幸せな事よ。婚約者の為にも良い女になり幸せになりましょう。』とずっと言われてきました。

今回の事でどうなる事やら…

私は思わず頭を抱える。

「でもさぁ…メイル兄様にだってまだ婚約者いないじゃない?
皇帝になっても女の影すらないのよ。お母様も私よりもメイル兄様の事を先に考えて欲しいわ。」

「兄上には前の婚約者の事とか色々あるからな…
さて、その皇帝兄上は今回の件でどう出るかね。」

ゲイル兄様はサリーの用意したお茶を飲みながら遠くを見つめる。

「メイル兄様は私の味方になってくれるはずです。」

私は自分に言い聞かせるように言って、自分で頷く。

「まぁ。それはそうだけども…とりあえず兄上を怒らせないようにだけ気をつけてくれよ。兄上は怒ったら手がつけられないからな。ランベスト公爵家なんて首も家も一瞬で吹き飛ぶぞ。」

ゲイル兄様は真剣な顔を私に向ける。

私は思わず苦笑いをする。



メイル兄様は皇族長子だけが受け継ぐとされる覇気の力(威厳の力)と神の愛子が持つと言われている不思議な力加護の力を持っています。

その力は偉大過ぎてそれを止められる人はまずこの国にはいません。

だからこそ現皇帝であるメイル兄様は最強な皇帝なのです。

これが愚王だったら大問題ですが、メイル兄様は公務はそつなくこなし博識で国民思いの賢王なので国民からの支持もかなり強いです。

父・前皇帝が亡くなった時、国民達は喜んだ位ですからね。


なのでなおさら帝国内の貴族達はメイル兄様には逆らえません。

だから今回の事は本当に馬鹿としか言いようが無いのです。
現皇帝の妹である私にあのような場所で理不尽な婚約破棄…

正直、救いようがないですね。

マイク様の頭の中がどうなっているか見てみたいものです。

私はハァと深く息を吐く。
そんな私の頭をゲイル兄様が撫でる。

「まぁ…なるようになるさ。お前は悪くないのだから。」



コンコン

ちょうどその時部屋の扉がノックされる。
すぐさまサリーが対応すると私の方に向かってくる。

「皇帝陛下がお呼びだそうです。」

サリーは私に深く頭を下げて告げる。

「わかった。行くわ。」


私が立ち上がるとゲイル兄様は私の肩をトントン叩いて「がんばれ。」とだけ言って私よりも先に部屋を出て行った。
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