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現在、次期国王となるべき第1王子のサムル王太子殿下がいる。
サムル王太子殿下の王としての素質は誰もが認めている。

そして、何よりサムル第1王子が王太子になっていることにはこの国として大きな意味がある。

それを覆す事はマキシマス王国自体の存続にさえ関わる問題だ。


「お前はやはり何も聞いていないのだな…先日、我が家に内密に王妃の使者が来て第2王子の婚約者の家として協力するよう話があった。しかし…」

「お父様。協力する必要はありません」
「でも、カロリーナ…そうなると貴方の立場が…」

お母様が私の隣まで来て私の手をソッと握る。
私はお母様のその手を握り返してニコリと微笑む。

「私は大丈夫ですわ。お母様」

「正直、我が家はいくらお前が第2王子の婚約者だからと第2王子を次期国王に押す事はできない。国の為にも…」

「賢明な判断です。この事は国王陛下はご存じなのですか?」

私の問いにお父様は頭をガシガシと掻いてため息をつく

「多分気づいていない。王妃は今はまだ周りの基盤を固めている所だろう」

「では、その旨を国王陛下にお伝えすべきでは?国王陛下はサムル王太子殿下の存在意義を分かっているはずですから…」

「それは難しい。既に王妃が陛下には気づかれない様手を回している。危機感を持ったものが早々に陛下にこの件を伝えたが逆に返り討ちにあったと報告を受けている。王妃は陛下には地盤が固まり次第上手く話をつけるつもりなのだろう。……マサラ王妃はしたたかなお方だからな…」

「…そんな事をしたら、マキタイ王国が我が国を攻撃するかもしれません」


「そうだな…」

事の重大さに身体がブルリと震える。

「…お父様……私は婚約者といえマルク様が次期国王になる事は反対です。国の為…国民の為にも阻止するべきです」

お父様はコクリ頷くと鋭い瞳で私を見る。

「第2王子が学園に行くことにより王太子派閥と第2王子派の閥争いが秘密裏に激化するだろう。お前は第2王子の婚約者だ。穏やかな学園生活を送りたいだろうが、巻き込まれる事は間違いないだろう」


巻き込まれる…か…

せっかく学園では全てを投げ出して穏やかな生活を送れる様になると思っていたのに…

やはり人生そう上手くはいかないのね。





先程まで楽しみだった学園生活が一気に憂鬱な物へと変わる。

でも、マサラ王妃の企みを知って黙って傍観している訳にはいかない。
国や国民はもちろん、私自身の未来にも関わる大きな問題だ。 

私は拳にギュッと力を込めると自分自身に喝を入れる。


そうよ。私は今、この時の為にマルク様の婚約者となったのかもしれない。婚約者として使えるツールを全て行使して何が何でも阻止しないと。


「お父様。私はとしてマルク様の王位を…マサラ王妃の目論み止めたいとおもいます」

私が決意を新たに宣言すると、お父様は渋い顔をする。
お父様の中で色々な葛藤が渦巻いているのが分かる。

お母様は明らかに不安気な顔をする。
どうしようもない複雑な状況に胸を痛めているのだろう…


そんな優しい両親を見て私の決意はより堅くなる。
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