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私の婚約は家の為に有意義なものでなくてはならない。
陰謀に巻き込まれて両親を危険に晒すものではない。

「私はマルク様との婚約を結ばれた時、家の為…国の為に尽くす事を自身に誓いました。今がまさにその時なのかもしれません。お父様とお母様には私の頑張りを見守って頂きたいです。だからお2人は私の事は心配せず己の思うまますべき事をなさってください」

私が決意を持って微笑むとお父様は少し悲し気にフッと笑みを浮かべる。

「…我が娘は頼もしいな…お前には本当に苦労を掛ける」

お母様は私とお父様の言葉に深くため息を吐くと私を心配そうに…でも真っ直ぐに私を見つめる。

「カロリーナ…私達にできる事があったらすぐになんでも頼ってね。一人で背負う事は絶対にしてはダメよ。いざとなったら我が家の全財産を使ってでも貴方を助けるわ」

「お母様…ありがとうございます」

私の返答にお父様はお母様と顔を合わせて戸惑いの表情を見せる。
そして、迷いながらも互いに静かに頷いてソッと私に一枚の紙切れを差し出した。


「これは?」
「ハウル商会のアローンをおぼえているか?」


アローン……

自分の中で封印していたその名前に胸の奥がトクリと高鳴る。
そして、忘れていた感情が身体の奥からジワリと湧き出てくる。


「アローンは現在学園で王太子殿下ととして親しくしている。何かしらお前の力になってくれるはずだ」

「…ァロンが……」

平静を装うけど、軽く声がうわずってしまう。
そんな私にお父様とお母様は複雑な表情を見せるけど何も言わない。

2人は昔の私達の事を知っていますからね…
複雑な気持ちは分かります。

私は2人を心配させないように軽く咳払いをして何でもない様に装う。


でも頭の中は台風並みに混乱している。



アロンが学園に…

マルク様の正式な婚約者となり、妃教育に追われる日々の中、考えた事もなかった。


そうよね…アロンはハウル商会の跡取り。
幼い頃より国一番の商会を手伝ってたし、自身でお金を稼いでいた。

頭も良く優秀な人物だもの。平民の身分であっても学園に入っている事はおかしくない。


アロンに会える?


心臓がドクドクと脈打つのを感じる。



私は自身の感情を誤魔化す様にお父様が差し出した紙を受け取り、震える手でその紙を広げると寮番号と女性の名前が書かれていた。

_________ 

乙女寮ローズ2棟203
エリー・ココット
_______


「これは…?」
「この方がアローンの友人でお前の助けになってくれるらしい」

アロンの友人?
女性の?


チクリ

封印して忘れかけた感情が身体中に駆け巡る。




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