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自身の中にある甘い誘惑に負けないようにグッと拳に力を入れる。
アロンの気持ちは分かった。
“嬉しい”
でも、だからといって私がマルク様の婚約者である事は変わらない。
“苦しい”
現実は残酷だ。
だから…自分からアロンの気持ちを聞いたくせに…
アロンのその言葉に対して私は昔の様に答える事はできない。
黙っている私に、アロンは少し悲しげな表情を見せる。
そんな表情をみても、私は何もできない。
何かする資格すらない…
周りのみんなもそんな私の気持ちを感じてか、何もいわない。
沈黙が続く…
沈黙が…辛い。
「…そ、そういえば…さっきからアロンが言っている計画って?」
私が沈黙に耐えられなくなって…沈黙を破るために思いついたまま聞くと、アロンは「あぁ…」と言って私の隣から立ち上がる。
「そうだよね。それを話さなきゃね。うん。じゃあ順を追って話すよ。」
「えぇ」
「僕とカロンを引き離した原因。それは何?」
私達を引き離した原因…
「…ハウル商会とミスドナ伯爵家が婚姻を結ぶのは国に問題が生じるから?」
「そう。僕達は子供でその問題に対して何も為す術がなかった。だから両親達にも申し訳が立たなくて、辛くて…自然と離れていった」
「そうね…」
「でも、僕は考えたんだ。僕が自立して力を付けてハウル家を出ればカロンを迎えに行けると…」
「っっ何を言って…アロンはハウル商会の後継じゃっっ」
私が思わず声を上げると、アロンは私の唇に人差し指を立てて黙らせる。
「ハウル商会の後継は僕だけじゃない。姉さんがいる。姉さんもかなりのやり手だし、夫であるロッテも優秀な商人。そして、2人の間にはまたその後を継げる息子もいる。何の問題も無い。姉さんにも了承を得た。姉さんは僕とカロンの事を応援してくれていたからね」
「でも、おじさまは…」
「父は…まぁ…いい顔はしないよね。だからこそ父の力を一切借りずに父も認めさせるだけの力が必要だった。」
アロンは数歩進んで立ち止まると、ぐっと拳を握る。
「僕にできる事は幼い頃から父の近くで学んだ商人としての知識。でも、ただの商人ではハウル商会を越える事なんてできない。父を認めさせられない。
だから、どうしたらいいのか色々考えたよ。街に出て何か手立てを作るために情報を集め、闇雲に人脈も作っていった。そして、そんな時、街でマリコに会ったんだ。」
「マリコ…先生に?」
「ああ。マリコは、街の中で冷蔵庫が欲しいとか電子レンジが何で無いんだって意味不明な事を騒いでいた。」
れいぞうこ?
でんしれんじ?
マリコ先生を見るとニコリと笑って、私に向かって手を振る。
「その頃のマリコは上手く変装をしていて転移者とはわからなかったが、近づいて色々話を聞いた。異世界のマリコの話は興味深かったし、商売になると直感で感じた。でも、現時点この世には無い物ばかりで…正直マリコが理想とする物を作成するには金銭的にも技術的にも難航したよ」
「それで…?」
「融資をしてくれるだろう人に近づいて人脈を作り、技術者も国中を回って探した。そして、そんな中でココットにも出会った。」
「エリーさんに…」
「最悪な出会いだったわよ。正直逃げ回ったわよ」
「…」
「ココットは僕達平民が通う中等科でトップの成績を取り続けたIQ150超えの天才でちょっとした有名人だった。そして、マリコの言っている事を少し聞いただけで何の躊躇いもなく理解した。」
「えっ?」
転移者の言っている事を躊躇なく?
「あー…うん。私、実は転生者なんですよ。マリコ先生と同じ世界の同じ時代を生きていたの。
その当時から頭だけは良くてねー。一度見た事、覚えた事は忘れないの。だから前世でも今世でも色々な知識だけは豊富に持っているのよ。でも、色々面倒だから転生者だと言う事は周りにバレない様に上手く誤魔化していたんだけど…よりによってアローンにバレちゃって、目つけられて…今に至るんです。
あっ…この事を知っているのはここにいる人だけなので内密にお願いしますね」
「えぇっっ!!??」
エリーさんが転生者?
そんな…物語の中の様な話。本当にあるんですね…
アロンの気持ちは分かった。
“嬉しい”
でも、だからといって私がマルク様の婚約者である事は変わらない。
“苦しい”
現実は残酷だ。
だから…自分からアロンの気持ちを聞いたくせに…
アロンのその言葉に対して私は昔の様に答える事はできない。
黙っている私に、アロンは少し悲しげな表情を見せる。
そんな表情をみても、私は何もできない。
何かする資格すらない…
周りのみんなもそんな私の気持ちを感じてか、何もいわない。
沈黙が続く…
沈黙が…辛い。
「…そ、そういえば…さっきからアロンが言っている計画って?」
私が沈黙に耐えられなくなって…沈黙を破るために思いついたまま聞くと、アロンは「あぁ…」と言って私の隣から立ち上がる。
「そうだよね。それを話さなきゃね。うん。じゃあ順を追って話すよ。」
「えぇ」
「僕とカロンを引き離した原因。それは何?」
私達を引き離した原因…
「…ハウル商会とミスドナ伯爵家が婚姻を結ぶのは国に問題が生じるから?」
「そう。僕達は子供でその問題に対して何も為す術がなかった。だから両親達にも申し訳が立たなくて、辛くて…自然と離れていった」
「そうね…」
「でも、僕は考えたんだ。僕が自立して力を付けてハウル家を出ればカロンを迎えに行けると…」
「っっ何を言って…アロンはハウル商会の後継じゃっっ」
私が思わず声を上げると、アロンは私の唇に人差し指を立てて黙らせる。
「ハウル商会の後継は僕だけじゃない。姉さんがいる。姉さんもかなりのやり手だし、夫であるロッテも優秀な商人。そして、2人の間にはまたその後を継げる息子もいる。何の問題も無い。姉さんにも了承を得た。姉さんは僕とカロンの事を応援してくれていたからね」
「でも、おじさまは…」
「父は…まぁ…いい顔はしないよね。だからこそ父の力を一切借りずに父も認めさせるだけの力が必要だった。」
アロンは数歩進んで立ち止まると、ぐっと拳を握る。
「僕にできる事は幼い頃から父の近くで学んだ商人としての知識。でも、ただの商人ではハウル商会を越える事なんてできない。父を認めさせられない。
だから、どうしたらいいのか色々考えたよ。街に出て何か手立てを作るために情報を集め、闇雲に人脈も作っていった。そして、そんな時、街でマリコに会ったんだ。」
「マリコ…先生に?」
「ああ。マリコは、街の中で冷蔵庫が欲しいとか電子レンジが何で無いんだって意味不明な事を騒いでいた。」
れいぞうこ?
でんしれんじ?
マリコ先生を見るとニコリと笑って、私に向かって手を振る。
「その頃のマリコは上手く変装をしていて転移者とはわからなかったが、近づいて色々話を聞いた。異世界のマリコの話は興味深かったし、商売になると直感で感じた。でも、現時点この世には無い物ばかりで…正直マリコが理想とする物を作成するには金銭的にも技術的にも難航したよ」
「それで…?」
「融資をしてくれるだろう人に近づいて人脈を作り、技術者も国中を回って探した。そして、そんな中でココットにも出会った。」
「エリーさんに…」
「最悪な出会いだったわよ。正直逃げ回ったわよ」
「…」
「ココットは僕達平民が通う中等科でトップの成績を取り続けたIQ150超えの天才でちょっとした有名人だった。そして、マリコの言っている事を少し聞いただけで何の躊躇いもなく理解した。」
「えっ?」
転移者の言っている事を躊躇なく?
「あー…うん。私、実は転生者なんですよ。マリコ先生と同じ世界の同じ時代を生きていたの。
その当時から頭だけは良くてねー。一度見た事、覚えた事は忘れないの。だから前世でも今世でも色々な知識だけは豊富に持っているのよ。でも、色々面倒だから転生者だと言う事は周りにバレない様に上手く誤魔化していたんだけど…よりによってアローンにバレちゃって、目つけられて…今に至るんです。
あっ…この事を知っているのはここにいる人だけなので内密にお願いしますね」
「えぇっっ!!??」
エリーさんが転生者?
そんな…物語の中の様な話。本当にあるんですね…
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