【完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。

はゆりか

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番外編 マサラの決意②

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そんなトマクールに追い討ちかけるように新国王になった前国王の息子ケトルはマキタイ国の姫と婚姻を結び、今回の一連の騒動を穏便に終息させた。

私は、娼館の管理人であるマサラダ公爵の協力を得て、娼婦と偽装して客は一切取らないものの娼館に滞在させてもらいトマクールとの密会を繰り返した。

娼婦と客ではなくなぜ密会なのか……
それには仕方のない理由があった。

トマクールは私の家が没落してからすぐに政略結婚をしていた。
世界で1番お金を持っていると言われているパナマ国の王族の血筋にあたる女性エメルダ様。その婚姻はトマクールが公爵家を継ぐための条件だったので、トマクールは頷くしかなかった。

金銭的な力を持っている国の王族の血筋の妻。もちろん婚姻をする上で国として金銭的援助を受けているのだと思う。だから、夫婦としての力関係はどう考えてもエメルダ様の方が上だった。

そして、トマクールにはすでに義務の為に作った2人の子供がいた。
夫婦の間に愛は無いという。でも、妻子がいるトマクールにとって私の存在はあくまで元恋人の愛妾でしかなかった。
宰相としての職を剥奪されて間もないトマクールにとってスキャンダルは御法度。それを私自身も理解をしていたから現状に特に不満を持つ事なく受け入れていた。

そして、トマクールと再会を果たしてもうすぐ一年が経とうとした頃、私はトマクールとの子を授かった。
例え、立場的に愛妾だったとしても、愛する人との子を授かれるのは幸せな事だった。

そして、同じ頃、トマクールの妻であったエメルダ様が離縁書を置いて自身の今の恋人……愛人を連れて自国へ帰った。
きっと、トマクールが宰相の職を剥奪されて、公爵としてのハリストンの地位が落ちた事。そして、2人の婚姻を後押しした前国王が崩御して国王が変わった事に加えて、私とトマクールの関係を知っていて今まで着々と準備をしていたのだろう。

トマクールの私への愛は疑う事はなかった。それに、お腹にトマクールの子を授かった私は当たり前のようにトマクールの妻の座につけると思っていた。

しかし、トマクールは私を妻に迎える事を躊躇っていた。

「トマクール……私は貴方の妻にはなれないのですか? やはり私が没落貴族の令嬢で現在娼婦として身をおいているからですか?」
私が詰め寄ると、トマクールは苦しげな表示を私に向けた。

「そうではない……本当ならすぐにお前を妻として向かい入れたい。でも、それではダメなんだ」
「ダメとは?」
「私はお前の家……サマドルネ公爵家を没落させて、私の地位や名誉を奪った王家を許すわけにはいかない」
「私も同じ気持ちです。でも、それとこれとは話が違うでしょう?」
「……先日、第一子を出産したサラ王妃が産後身体を壊しいているらしい。内密とされているが、元々身体が弱かった故に命の灯火が消えるのもそう遠くないという噂もある」
「命の灯火が……」
「だからお前には復讐の協力をしてほしい。こんな事は信頼できるお前にしかお願い出来ない」
「復讐……協力?」
「王妃が亡くなったら、お前に王妃となって欲しい」
「……」

何を言われているのか、正直分からなかった。
トマクールの言葉を理解するまでに時間がかかった。
理解してしてからも、トマクールの意図が全く分からなかった。

「それは……どういう……無理に決まってます……私は没落貴族の娼婦ですよ?」
「そんな事はどうとでもなる。それにお前は現国王のケトルとは同じ年で関わりもあっただろう?」
「それは……まぁ……でも顔を合わせて少しお話しする位で親しい関係ではありませんでした」
「十分だ」

私との会話の中で、トマクールは覚悟を決めたかのようにゆっくりと頷いた。
その瞳の中に見える覚悟の色に、トマクールは本気だと私は息を飲んだ。

「……お腹のこの子はどうするのですか?」
私が自身のお腹に手を添えて言うと、トマクールは迷いなく私のお腹に手を当てる。
「私が引き取る。私の子としてきちんと育てよう」
そう言うトマクールは少し悲しげに優しく私に微笑んだ。

きっと今のトマクールに私が何を言っても決意を揺るがせることできない。トマクールは自身で一度決めた事は決して曲げずにやりきる人だ。こうなったトマクールには周りは協力するしかない。

トマクールの考えに協力する事が私の愛だ……

私は、自分の中にある複雑な気持ちを抑え込んで決意を固めると、深く深呼吸をして私のお腹に添えられたトマクールの手に私の手を重ねる。

「本気なのですね……わかりました。私が出来る事は協力します。ただ、この子だけを貴方が連れ帰ったらこの子の母は誰だと調べるものもいるでしょう。トマクール……貴方が考える作戦を成功させる為にはこの子の母が私であるとバレてしまうのを阻止しなくてはなりません」

「マサラ……」

私の言葉に、トマクールは驚きの表情を見せる。

「令嬢時代から私をずっと慕ってくれている男爵令嬢がいます。修道院にいる時にも何度も手紙をくれました。きっと彼女なら協力をしてくれるはずです。彼女を妻として受け入れて、この子の母としてください」

私が覚悟を決めて言うと、トマクールは一瞬悲しげな表情をしてから私を強く抱きしめた。
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