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第一章 アクセルオンライン
62話 イノチの決心
しおりを挟む「プッ…プレイヤーランク『120』…」
「なっ…120ですって!?」
驚くエレナをよそに、イノチはもう一度画面を確認する。
【プレイヤーネーム】ゲンサイ
【プレイヤーランク】120
【職業】ソードマスター
【装備】
・死竜のアギト(UR)
・黒翼のローブ(UR)
・剛硬竜のグリーブ(SR)
・神速のブーツ(SR)
【称号】神欺者
間違いない。
プレイヤーランクには、『120』と書かれている。
職業も『ソードマスター』と書いてあるが、チュートリアルの時には見なかったものだ。
それに装備がやばい…
全部SRとURで揃えられたそれらは、名前から見ても、確実に強力な武器であることは間違いなさそうだ。
エレナのSR武器『グレンダガー』が、真っ二つにされたのもうなずける。
そして、最後に書かれている称号。
『神欺者』ってなんだ…神を…欺く者?
それ以外にわかることはなかった。
ウォタの時のように、弱点などが書かれていないのは、奴がプレイヤーだからだとイノチは推測する。
「…なんなんだよ、あいつは。」
イノチは、ウォタと刃を交える男をジッと見つめていた。
「クハハハハ!!なかなかやるのぉ!」
「ちぃっ!」
ウォタは体のサイズを元に戻していた。
そのウォタが繰り出す斬撃をかわす男の顔には、先程のまでの余裕は消えていた。
繰り出される斬撃の数も増え、それらは四方八方から襲いかかってくる。
「くっ…!」
体を捻って、飛んできた横薙ぎをギリギリでかわしたが、今度はウォタの尻尾に弾き飛ばされてしまった。
ダガーでの防御は間に合ったようで、男はクルクルと回転しながら少し離れたところに着地をする。
「人間の分際でここまでやるとはな…褒めてやるぞ!クハハハハ!!」
「…」
笑うウォタの言葉に、男は答えない。
「力を隠して…というのは気に食わんが、それでも楽しませてもらったわ!!」
「…わかっていやがったか。だが、それはお前も一緒だろう。」
「我は隠してなどおらん!人間如きにはこの程度で十分ということだ。まぁ、互いに本気でやっても、我が勝つことは変わらんがな!!クハハハハ!!」
余裕で笑うウォタの態度に、男は不満気に舌打ちをすると、ダガーを腰に収めた。
「もう終いか?つまらんのう…」
「言っただろ…腕試しだなと。」
二人が話していると、イノチとエレナ、そして、ミコトに肩を借りて歩くフレデリカがウォタの後ろに近づいてきた。
「お前は…なんでこんなことするんだ!」
「…」
「黙ってないでなんとか言えよ!」
イノチが叫ぶも、男は何かを考えるように顎に手を置いている。
「BOSS…あんまり刺激しないでよ。悔しいけど、今のあたしたちじゃ、あいつには勝てないんだから!」
「わかってるよ!…でも、エレナの右眼が…」
「これぐらいなんてことないわ…命があるだけね。でも、次会う時は絶対にボコボコにしてやるわ!」
「…そうですわ…ぐっ…」
「おっ…おい…それは言い過ぎじゃないか…今、刺激するなって…自分で…」
「ククク…」
イノチたちのやりとりを聞いていた男は、突然笑い出す。
「ククク…ハハハハっ…!!」
「なっ…何を笑ってる!こっちの質問に答え…」
「ハハハ…拍子抜けしたんだよ、お前ら見てたらな。まぁ良い、そのドラゴンに免じて今回は見逃してやる。」
「我に負けとって偉そうな奴だな。」
「負けてねぇ…それとお前!」
「おっ…俺か!?」
ウォタの言葉に不満を露わにしながらも、男はイノチを指差して呼ぶ。
「そう、お前だ、お前…ランクはいくつだ?」
「なんだよ、突然…教えるわけないだろ!」
「…ふん、どうせ『超初級ダンジョン』なんかに挑んでんだ…『20』かそこらだろうが…隠すほどのことでもないだろう。」
「ぐっ…!」
「相変わらず見透かされとるのぉ…」
「えぇ…嘘が下手くそなの、うちのBOSSは…」
後ろで好き放題言っているエレナとウォタを無視して、イノチは男に問いかける。
「えーえー、どうせ弱いですよ、俺は!ランクなんか聞いてどうすんだよ!」
「…忠告しといてやる。さっさと『80』まで上げとけ…そうすれば、その召喚キャラたちも、もう少しは強くなるぜ。」
「はっ…『80』まで?エレナたちが強くなるって…」
「ランクが『20』になれば、キャラがスキルを覚える…『40』でも『60』でもそれは一緒だ。んで『80』になりゃあ、キャラや装備のグレードアップ機能が開放される。具体的には、レアリティを上げれるようになるんだ。必要な素材は、キャラや装備によるが…こういったゲームでは、その辺が大事だってのは知ってんだろ?」
「なんでわざわざ…そんなことを教えてくれるんだ…。いきなり襲いかかってきて、信用できるわけないだろ!」
イノチの問いかけに、男は肩をすくめると再び話を続ける。
「…もうすぐ大型のランク戦が始まる…ジパン国内でな。」
「ランク戦…?」
「プレイヤー同士が闘うんだよ!期間が決められて、その間はいつでもどこでも闘っていいんだ。正々堂々、挑んでもよし。忍び寄って首をカッ切ってもよし。」
「カッ切るって…殺し合うって事か?!」
突然の男の言葉に、イノチは驚いた表情を浮かべる。
「ふん…多くの都市で、新しいプレイヤーがどんどん増えてるからな。おそらく間違いない。その内、端末に通知が届くからよく確認しとけ。」
「しっ…質問に答えろよ!なんでランク戦なんて…そんなことしなきゃなんないんだ!」
男は、その問いかけにはニヤリと笑みを浮かべる。
「そんなこと、俺が知るわけないだろ…」
「なっ…待てよ!!」
歩き始めた男をイノチは呼び止めようとするが、男は一瞬で5階層の奥にあった青く光る円の前まで移動する。
そして、振り返る。
「次に会った時は容赦しないぜ。」
「待てよ!!お前はなんで…なんでプレイヤーを襲うんだ!」
その言葉には答えず、男は口元でニヤリと笑みを浮かべると、青い円の中に消えていった。
それを見ていたイノチは、悔しそうに地面にあった石を蹴り飛ばす。
音を立てて転がるそれは、青い円の前まで転がって止まった。
「とりあえず…みんな生きとるんだ。今回はそれで良しとしようではないか。」
「……」
ウォタの言葉にイノチは答えない。
その背中は小さく震えている。
「あの青い円は、おそらく外への出口になっているようね。」
ウォタを先頭に一同は青い円に入る。
すると、円が小さく光り輝いて、イノチたちは5階層から外界へと戻ってきた。
エレナとフレデリカを木の下に座らせると、イノチはウォタに馬車をここまで連れて来るようお願いをする。
「イノチ…くん。さっきの人の話…殺し合うとか言ってたけど…どういう意味なんだろう。」
ウォタを見送っていたイノチへ、ミコトが問いかけてきた。
その言葉に歯を食いしばり、拳を握りしめると、イノチはミコトへと振り返る。
「ミコト…館に帰ったら話があるんだ。」
「え…?話って…」
「帰ったら話す。そして、その上で提案させてくれ。」
今まで間にないほどに真剣なイノチの表情を見て、ミコトは小さくうなずくのであった。
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