ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
69 / 290
第二章 始まる争い

4話 ゴゴゴゴゴッ

しおりを挟む

「『ランク戦』かぁ…」


イスに座るミコトは、足をぶらぶらさせながら、自信なさげに下を向いた。


「うん。いつ開催されるかはまだわからないけど、近々始まるのは間違いないみたい…そして、その『ランク戦』はプレイヤー同士が戦い合って…」


イノチはそこまで言って、口を止めた。

これ以上先を言っても良いことなどない…ミコトの不安をいたずらに煽る必要などないと思ったからだ。

頭を振って気を取り直し、イノチは再び口を開く。


「『ランク戦』を戦い抜くための準備として、明日、みんなに提案しようと思ってたんだけど、その前にせっかくだからミコトに意見を聞いておこうかな…」

「…ん…意見?」


顔を上げるミコトに、イノチは笑顔で話しかけた。


「さっきも言ったけど、『ランク100』を目指す必要性が出てきた…だから、明後日からは『超上級ダンジョン』に挑戦していこうと思うんだ。」


ダンジョンには難易度が設定されている。

現在、『アクセルオンライン』上に現れているダンジョンには、超初級、初級、中級、上級、超上級、超級、神級のダンジョンがランダムに生成され、その位置をマップで知ることができる。

ダンジョンは、難易度が上がれば出現するモンスターも強くなり、階層も多くなる。

しかし、その詳細情報には出現モンスターの情報が記されているし、難易度にも適正ランクが設定されているため、自分たちがどこに挑戦できるか一目でわかると言うわけだ。

『超初級』で虫の大群に追いかけられたイノチは、その設定がどこまで信用できるのか定かではないと思っているが…

とはいえ、あの頃とは違い、ランクを80まで上げたイノチとミコトは、すでに『上級ダンジョン』まで攻略していたのだ。


「『超』がつくくらいだから、敵モンスターの強さも格段に上がる…平均 Lv.は75くらいだね。モンスターのタイプによっては苦戦を強いられるかもしれない。要は危険が増すってこと…どう思う?」

「…そうだね。でも、ウンエイさんの言葉を信じるかどうかは別として、ランク戦に備えて『ランク100』を目指すには、どんどん難しいダンジョンに挑戦していかないとダメだよね。森や鉱山に出るモンスターも、基本的にそんなに強くないし…」


確かにそうだとイノチも思った。
RPGという設定にしては、通常エンカウントするモンスターがそんなに強くない。

倒せばアイテムや経験値はドロップするから、初心者にはもってこいだが、ある程度からのランク上げにはあまり適しているとは言えないのだ。


(まるで効率よくランク上げさせるために、『ダンジョン』があとから追加されたみたいだ…ウンエイたちが管理する世界と『アクセルオンライン』というゲーム。そこに何かあるってことかな…)

「それに…」


イノチが少し考えに耽っていると、ミコトが少し悩んだように口を開く。


「それにね…最近ゼンちゃんがもっと強い敵と闘いたいって言って聞かないんだ。」

「えっ…ゼンさんが…?」

「うん…私は、順序よく進みたいって言うんだけど、強い敵と闘った方が効率的だろって…」


どこかの誰かも同じようなことを言っていたと、イノチは思い返す。

ガチャで手に入れたキャラクターは、血の気が多くなるのか…それとも単にそういう性格のキャラクターを引いてしまったのだろうか…

この世界で仲間になったウォタは、あまりそういうことを言わないから、なおさらそう感じる。

そんなことを考えつつ、苦笑いを浮かべながら、イノチはミコトに声をかけた。


「なら、なおさら明日は喜ぶんじゃないかな。朝食が終わったらみんなに話そう。で、明日は『超上級』のための準備をする!」

「うん、そうだね!」


笑顔で微笑んだミコトに、イノチはついつい見惚れてしまう。

鼓動が高鳴り、耳が熱くなるのがわかる。
ミコトもそんなイノチに気づいて、顔を赤らめてうつむいた。

二人の間に、再び沈黙が訪れた。

時計の針が戸惑いなく、その歩みを進めていく。

虫たちの小さな合唱が、夜風の匂いとともに窓から入り込んできた。


「あのさ…!」
「あっ…あの!」


とっさに上げた声が重なり合う。


「あっ…」
「あ…」


頬を染めたまま、二人の視線が交差し合う。


「ぷっ…ククク…アハハハハ!」

「え…あれ…?」


突然、お腹を抱えながら必死に笑いを堪えるミコト。そんなミコトにイノチは少し混乱気味だ。


「ごめん…ククク…ごめんね…なんかおかしくって。」

「俺…おかしなこと言ったかな…」

「違うの。今みたいに人と見つめ合うなんて、私、今までしたことなかったんだけど…それなのに今は、見知らぬ世界でイノチくんと話してる。」


笑いながら目に浮かぶ涙を指で拭うミコト。その涙がどんな感情から流れたものか、今のイノチに知る由はない。


「ミッ…ミコト、あのさ…」


イノチが何か決心したような表情で、ミコトに声をかけたその時だった。


「ちょっ…あんたたち、押さないで!!倒れる…倒れ…っ!!」


エレナの声が聞こえたかと思えば、バーンッと部屋のドアが開かれ、エレナ、フレデリカ、メイ、そして、ウォタとゼンが雪崩れ込んできたのだ。


「なっ…お前ら!!何やってんだ!!」

「やばっ!!逃げるわよ!!」


エレナの声に、フレデリカとメイ、そしてゼンは一目散に部屋から逃げ出していく。


「お主ら…まっ…まて!」


バンッ!


「なっ…!?」


一歩逃げ遅れ、あたふたと部屋から出ようとしていたウォタの目の前で、扉が突然閉まる。

そして、その横には暗い笑みを浮かべるミコトが立っていたのであった。


「ウォタさん…?」


その背には、『ゴゴゴゴゴッ』という謎の地鳴りが可視できるほどのオーラを放っていたのだった。





「ふぅ…」


"ウンエイ"と名乗った女性は、部屋に入るとフードを外した。

再び、薄暗いモニタールームで、指をパチンッと鳴らせば、メインモニターの画面だけがつく。

その前のイスに座ろうとして、ハッとした。


「首尾はどうじゃ?」


いつの間にか後ろにいる人影。

筋肉質な上半身と腰に巻いた白い布。
顔は…暗くてよく見えない。

しかし、明らかにウンエイの額には汗がにじみ、緊張が溢れ出ている。


「どっ…どうしてこちらへ…いつお戻りに?」

「さっきじゃ…そしたらたまたまお主を見かけてな。…で、どうなんじゃ?」

「いらっしゃらない間に『ランク戦』の開催が決定しました。このままではと思い、先ほど接触を…」

「ふむ…」


男は顎に手を置く。
それに対して、ウンエイはごくりと唾を飲み込んだ。

二人の間に重い空気が流れ、沈黙が訪れる。

そして、再び男が沈黙を破る。


「あいわかった。引き続き頼む…それと…」

「はっ…はい!」


振り返ることができずにウンエイが返事をすると、男は思いついたままを告げていく。


「『解析』の機能はあれでいいのだが、『開発』と『分析』はもう少し性能を強化…それに加えて元ある『書換』の性能も上げといてくれ。」

「かしこまりました…」


その言葉を聞くと、男は口元で白い歯が見えるほどニカッと笑い、「期待しとるよ」と言い残して、暗闇に消えていった。


「相変わらず、突然なお方ですね…」


大きく息を吐き出し、汗を拭うウンエイの目の前では、イノチが映るモニターが煌々と光っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...