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第三章 ランク戦開催
10話 創血の牙
しおりを挟む「団長!!」
広間に大きな声がこだまし、周りの皆が注目する。
そんな中、ガチャガチャと鎧を擦らせて歩く赤黒のツートンカラーの髪の男が、漆黒の鎧をまとう男へと詰め寄っていく。
「よう、アカニシ。どうした?そんなにイラついて。」
「どうしたじゃないっすよ!聞いてください!レオパルの奴から、反抗勢力を潰せと命令されちまった!!」
顔まで真っ黒な兜を被っている男は、表情はわからないが面白そうに笑い、こもった声でアカニシに答える。
「ハハハ、そうかい!お前に頼んだのか、レオパルは。」
「ハハハじゃないっすよ!もうすぐランク戦が始まるってのに、反抗勢力の相手なんかしてらんねぇよ!!」
「まぁそう言うなよ。俺たち『創血の牙』は国公認のクランなんだぜ。国に支援してもらいながら活動したんだから、国から要請があれば、動かなきゃならないのは道理だろ。」
「そうですけど…だけど!俺はランク戦に参加したくて、このクランに入ったんだ!このままじゃ、参加できないどころか、ただただ国の言いなりになるだけになっちまう!!」
「焦んなよ。ランク戦の開催まであと1か月あるんだぜ。その間に終わらせればいいだけじゃないか。」
「俺は…プレイヤーと戦いたいんだよ!!」
「アカニシ…」
吠えるアカニシに対して、黒い鎧の男は真面目な口調になった。
「お前は副団長なんだぜ。そこんとこよく考えろよ。」
「うっ…」
突然の変化した空気に怯んだアカニシに対して、男は再び柔らかい口調に戻る。
「俺はお前を買ってるんだ。頼むぜ…副団長。」
そう言うと、アカニシの肩をポンと叩いてすれ違い、周りに聞こえるように声を上げる。
「みんな、聞いてくれ!レオパルから例の反抗勢力について、御達しが出たようだ。1時間後に会議を行うから、各地区の幹部に集まるように声をかけてくれ!」
その声を聞いて、各々動き出すクランのメンバーたち。
それを見ながら、男はアカニシに言う。
「ハハハ、楽しんでいこうぜ!アカニシ!」
「はっ…はい。」
そう言って去っていく男を、アカニシはジッと眺めていた。
・
「みんな、集まったか?」
「サザナミの支部長がまだです。」
「サザナミ?セイドか…あいつにしては珍しいじゃん。会議に遅れるなんて。」
「なにやら、用を済ませてからくるから先に始めておいてほしいとのことだそうで…」
「そっか…それなら先に始めようぜ。レアー、説明よろしく。」
黒鎧の男は、レアーと呼ぶ男にそう声をかけた。
首から下を真っ黒な装束で覆っている男は、頭を下げると説明を始める。
「本日、副団長がレオパル5世に呼び出しを受け、これに応じました。内容は最近、力を増してきている反抗勢力への対処の依頼です。奴らは現在、各都市ごとにその数を増やしており、国家転覆を画策しているようですね。」
「レアー、対処って言ってもよぉ、奴らの居場所はわかってんのか?」
大柄なひげ面の男が、頬杖をついたまま口を挟んだ。
「いえ、それはわかっておりません。帝国も掴めてはいないようで。」
「はっ!それもわからねぇのに、ぶっ潰せたぁ!相変わらず自分勝手でアホな王様だぜ!レオパルはよぉ!」
「ハーデ、口を慎めよ。曲がりなりにも奴はこの国の王だ。俺たちはその王から資金をもらって活動してるんだからな。」
黒い鎧の男が、ひげ面を諭すように告げる。
「団長、わかっちゃいるがよ。じゃあ、どうやって探すんだよ。リシアは思った以上に広いぜ!いくら俺たちのクランがデカイって言っても、500弱の人数じゃできることは限られる。」
「ハーデの言うとおりです。」
その横に座る長髪の男が、ひげ面に続いて口を開く。
「我々は、支部ごとに各都市に分散していますからね。一つの都市には50名程度しかいません。その人数で、どうやって反抗勢力の奴らを探すのですか?」
「…」
レアーは答えない。
その代わりに団長が口を開いた。
「ハーデとメテルの言うとおり、まだなんーもわかんねぇし、どうするかも決めてねぇ。だからさ、こんなのはどうだ?」
団長の合図で、レアーがあるものをテーブルに広げる。
大きめの四角い洋紙皮には、表が描かれていて、各都市とそこを管轄する支部長の名が記されていた。
「団長、これはなんだよ。」
「これか?得点表だ。」
「得点表…?」
首を傾げるハーデとメテルに、面白そうな声を上げる団長。
「そうだ。奴らを単純にぶっ潰しても、何にも楽しくねぇだろ?だからさ、何の情報もねぇこの状況だからこそ、誰が1番に奴らを見つけるか、みんなで競い合ったら楽しいんじゃねぇか!」
黒い兜の中で大きく笑っている団長に対して、ハーデが楽しげな笑みを浮かべる。
「なるほどな!俺はそういうの嫌いじゃねぇぜ!!団長の案に乗った!」
「はぁ…団長の悪い癖ですよ、まったく。」
対照的に、メテルは目を閉じてあきれ顔を浮かべている。
「団長、思いつきでやるのはいいんですが、ルールはどうするんです?得点の付け方とか、禁止事項とか…」
「ルール?そんなめんどくさいもんは必要ないだろ。決まりはただ一つだ。」
「一つ…ですか?」
反抗勢力の対処について、納得はしていないアカニシ。
その顔にはわわかりやすく不満の色が浮かんでいる。
そんなアカニシの問いかけに対し、団長は自信げに指を一本立てた。
「早い者勝ちで仲間割れは禁止!これだけだ!」
・
「さぁて、戻って仲間たちと作戦会議だな!」
「とりあえず、自分たちの街から、ですかな。」
ハーデやメテルなど支部長たちが、そう話しながら退席していく中、アカニシは団長の前に立っていた。
「どうした?アカニシ、そんな怖い顔をして。」
「団長…一つ約束してくれよ。」
「何をだい?」
「ランク戦までに、この話はケリをつける。だから、ランク戦では俺に先陣を切らせてくれ。」
その言葉に腕を組み、アカニシを見据える団長。
兜を被っていて、表情はわからない。
アカニシは、その瞳の奥で彼が何を考えているのかがわからなかった。
カチャッと金属の擦れる音を立て、腕を下ろした団長はアカニシに告げる。
「…わかった。約束しよう。」
アカニシは頭を下げると、その場を離れていった。
「野心は…ある。が…」
「プレイヤーの域はでない…ですか?」
後ろにレアーが立って、そうつぶやいた。
「そういえば、セイドの奴はどうしたんだ?」
「話を伝えたら、了解した、団長によろしくと伝えてくれと…」
「結局来なかったのか?あの野郎、相変わらずだな。」
肩をすくめ、歩き出す団長。
レアーもその後に続く。
「これから楽しくなりそうだ。」
「ランク戦まで1か月…それまでに対処できますかね。」
「まぁ、五分五分ってとこかな。」
「団長はどうするので?」
「俺か…?俺はな…」
鎧の中で、楽しげな笑い声が響いた。
「もっと楽しいことをするんだ!」
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