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第三章 ランク戦開催
91話 ミコト×ゼン=…
しおりを挟む「ドラゴニックフォームッッッ!!」
ゼンがそう叫ぶと、ミコトの体が輝きに包まれた。
気づけば自分も同じような輝きに飲み込まれていく。
「なっ…なんだぁ!この光は…!?」
一方で、突然目の前で輝き始めたミコトに驚いた八岐大蛇だが、目に染みるほどの強烈な眩しさに目を開けていられない。
「な…この光は何!?」
ミコトも突然のことに驚きを隠せずにいた。
しかし、いつの間にか自分のそばにゼンの姿があることに気づく。
「ミコト…無事でよかった。」
「ゼンちゃん!!」
歓喜と安堵の視線を向けるミコト。
光の中で顔を合わせる二人…ゼンも笑顔を浮かべて話しかける。
「詳しい事情は後で説明するから、今は私に従ってくれないか?」
その言葉にミコトは笑顔でうなずいた。
「もちろんだよ!私はゼンちゃんが無事でいてくれただけで満足だから!でも、この光はいったい…」
「これは私とミコト、二人のスキルの効果だ。」
「私とゼンちゃんの…?」
突然のことに理解が追いつかないのだろう。
ミコトは、キョロキョロと周りの光を確認するように首を動かしている。
そんなミコトに、ゼンは事情を端的に説明を行う。
「時間もないようだから簡単に。これはミコトと私が力を合わせて使うスキルのようだ。そして、その力は覚醒体にも及ぶらしい。」
「覚醒体に…と言うことは八岐大蛇のことも…」
「あぁ…」
覚醒体に及ぶほどの力を発揮できるスキル。
そう聞いてミコトは嬉しそうにゼンに顔を向けた。
対するゼンもミコトの目を見つめる。
そして、二人同時に息を合わせて言葉を発したのだが…
「倒せる!」
「止められる!」
まさかのシンクロならず…
二人とも驚いた顔を浮かべていたが、先に口を開いたのはゼンだった。
「ミコト…まさかオロチのやつを倒さずに止めるつもりなのか!?」
「う…ん…やっぱりダメかな?」
自信なさげにも笑顔を浮かべるミコト。
そんな彼女に理由を問う。
「なぜだ?あれだけ大変な目に遭ったというのに…やつを許せるのか?体もそんなに傷つけられたというのに…」
「そうだね、確かにたくさん嫌なことはされたけど…でも、だからと言ってやっつけちゃうのは、なんとなく違う気がするんだ。うまく説明できないんだけどね。」
そう言って苦笑いを浮かべるミコトを見て、ゼンは改めてあることを感じていた。
今回自分が覚醒体へ至るための条件をクリアできた理由。
それはミコトなのだ、と。
八岐大蛇にすら"思いやり"を向けることができる。
そんな彼女の優しさに触れてきたからこそ、覚醒体へ至る条件をクリアできたのだろう。
まだ、アマテラスの言う"それ"が何なのかは具体的にわからないが…
ゼンはミコトへ笑顔を向けた。
「わかった。ミコトの意思を尊重しよう。」
「ありがとう。」
二人は顔を合わせ、手を取り合う。
そして、自然に頭に浮かんできた一つの言葉を唱えたのだ。
「「フュージョン…」」
その瞬間、ミコトとゼンの体が再び大きく光り輝き、二人の体が重なり合い始める。
ミコトの頭に二本の角が生え、その髪の毛が赤く染まっていく。
両腕、両脚にはゼンと同じように竜種の鱗を纏い、着ていた服は上から下までゼンの鱗の色と同じ真紅へと変化する。
そして、その胸には赤い宝石が一つ現れ、妖艶な輝きを放って煌めいた。
閉じていた瞳をゆっくりと開けば、その中に現れたのは竜種によく似た綺麗な細長い瞳孔。
臀部から伸び上がった赤く美しい尻尾が揺らめくその姿は、まるで小さなゼンのようにも見える。
ミコトの体はスキルにより大きく変貌を遂げたのだった。
「こ…この姿は…あれ?ゼンちゃん?どこに…」
自分の変わりようにミコトは驚いていたが、ゼンの姿がないことに気づく。
キョロキョロと辺りを探しているミコトだったが、頭の中でゼンの声が聞こえてきた。
『私はここにいるぞ、安心しろ。しかし、変わったスキルだな。これは…私自身ががミコトの中に溶け込んでいるような…』
「ゼンちゃんと私が…?」
『あぁ…しかし、今までの私と比べ物にならないほどの力を感じるな。力がとてつもなくみなぎるぞ。』
「そう…なんだ…私にはまだよくわからないけど…なんだかコスプレしてるみたい…で、恥ずかしいな。」
自分の姿を見回して、モジモジと恥ずかしそうに体をよじるミコトと、それを笑うゼン。
そうしているうちに、二人を包んでいた光が静かに霧散していき、目の前には八岐大蛇の姿が現れた。
「て…てめえは…なんだその姿は…?竜…?」
光の中から現れたミコトの姿を見て驚く八岐大蛇。
そんな八岐大蛇に対して、ミコトは眼差しを強めてこう告げた。
「さっきまではやられたい放題だったけど、今度はそうはいかないよ!」
ビシッと指を差してそう口上を切ったミコトに対して、八岐大蛇は先ほどのイラ立ちが再び込み上げてきた。
「なんだかよくわかんねぇけど…やっぱりイラつくぜ。ゼンの野郎はどこへ行った?」
『私はこの子の中にいるぞ!お前は私とミコトで止める!』
「その女の…中?なんだそりゃ!!しかも俺を止めるだと?お前らがか?さっきまで俺にやられっぱなしだったお前らが?…ちょっと姿形が変わったからって、調子に乗るんじゃねぇ!!」
『調子になどのっておらん!私も覚醒したのだ!通常とは違う形だがな!』
「覚醒…だとぉ…!?その姿がそうだってのかぁ!?」
『そうだ!』
そこまで聞いた八岐大蛇は口を閉じ、肩を震わせた。
覚醒?女の中に入り込むことが?それで竜種の覚醒だというのか?
拳を強く握りしめ、音がたつほどに歯を食いしばる。
目の前の同胞は何を言っているのか…
そして、再び口を開く。
「ゼン…てめぇは…何を言ってやがるんだぁぁぁ!!!」
そう叫んだ八岐大蛇は、突然ミコトへと飛びかかった。
そのスピードはこれまでで一番速いと言っていいだろう。
それほどまでに八岐大蛇の怒りは高まっていたのだ。
一気に間合いを詰めて、目の前のミコトに向けて鋭い爪を振りかざす八岐大蛇。
しかし…
その手は空を切った。
「なっ!?」
予想していなかったミコトの動きにその姿を見失う。
驚き、その行方を必死に追うがミコトはどこにもいない。
「くっそ!ど…どこへ行った!?」
「こっちだよ!」
真後ろから聞こえた声に振り返れば、そこには仁王立ちで腕を組むミコトの姿があった。
まさか背後を取られるとは思っていなかった八岐大蛇。
「て…てめぇ…その動きは…」
「だよね!自分でも驚いてます。」
「あぁ…?」
その言葉を聞いた八岐大蛇は訝しげな表情を浮かべた。
しかし、今の動きに一番驚いているのはミコト、そしてゼンだった。
『ミコト…これはすごいぞ…』
「そうみたいだね。八岐大蛇の攻撃がとっても遅く感じて、自分の動きがとっても速く感じた…ていうか、全部の動きがゆっくり見えるよ。」
『確かに…これが覚醒体の力…私とミコトの力か。いけるぞ、ミコト!今度はこちらから仕掛けよう!』
「う…うん!!」
「てめぇら、何をごちゃごちゃと話してやがる!!」
再び咆哮を上げる八岐大蛇。
だが…
「大丈夫!もう話は終わりだから…」
「なっ!?」
気づけば、いつのまにか自分の懐の中にいるミコト。
その姿に八岐大蛇は驚愕した。
(見えなかったぞ…やはりさっきの動きは…!)
その瞬間、ドンッと鈍い音が響いた。
腹部に今まで受けたことがないほどの衝撃を感じる。
「な…?が…はっ…」
吐血しながらものすごい勢いで吹き飛ばされていく八岐大蛇。
木々を薙ぎ倒し、地面を抉って転がっていき、少し離れた位置で轟音とともに大きな砂ほこりを巻き上げた。
「す…すごいパンチ力だね…。」
『う…うむ…』
撃ち抜いた右拳を前に出したまま、目の前の光景に愕然とするミコト。
同様に、ゼンも驚きを隠せないでいる。
「調子に乗るなぁぁぁぁぁ!!!」
突然、砂ほこりの中から八岐大蛇が飛び出してきて、そう叫びながらミコトへと拳を放つ。
…が、ミコトはそれをいとも簡単に左手で受け止めてしまった。
小さな衝撃波が辺りに波紋のように広がっていく。
驚きに目を見開くも、八岐大蛇はすぐに左脚で蹴りを放つ。
しかし、今度は右手でそれを防がれてしまう。
「ちぃっ!!」
焦った八岐大蛇は、今度は尻尾で攻撃しようと体を捻ったが…
不意に、掴んでいた八岐大蛇の拳を手離したミコトは、八岐大蛇が認識できない速さで下から蹴り上げたのだ。
「グハッ…!」
自分が空高く蹴り上げた八岐大蛇の姿を見て、ミコトは小さく笑みをこぼす。
「あは…けっこう高く上がったね。」
ゼンはその言葉に一瞬、違和感を感じたのだった。
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