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第三章 ランク戦開催
99話 激アツ!大フィーバー
しおりを挟む話は隠し部屋に移動する少し前に遡る。
「エレナ、やはり今回BOSSに引かせるのは『装備ガチャ』ですわ。」
腕を組み、壁に寄りかかるフレデリカがそうつぶやいた。
今、イノチはお風呂に行っているため、ここにはいない。
ガチャ魔法を使用する前に、一度風呂に入りたいと言い出したイノチをエレナたちは快く送り出して、今に至るわけだが…
「それがいいわね。人手が増えるのもいいけど、先に装備を整えたいのが本音。」
反対側の壁にもたれたいたエレナがそう返す。
「えぇ、わたくしも今回戦った他のプレイヤーたちを見ていて、改めて思いましたですわ。この世界ではプレイヤーランクも重要ですが、しっかりとした装備を整えることがそれ以上に重要だと。今のBOSSが他のプレイヤーと一対一で対峙した場合、ランクで優れていても簡単にやられます、ですわ。」
「ほんとそれ…あたしたちが常に近くにいれば守ることはできるけど、今度の生誕祭ではそうもいかないわ。おそらく乱戦になるだろうから、はぐれる可能性も高い…」
「その場合、BOSSには一人で切り抜けてもらわねばならないですわ。」
そこまで話して、二人の間にしばしの沈黙が訪れた。
二人が何を話し合っているのかというと、イノチの装備の軽さについてである。
現在、イノチの装備は『ハンドコントローラー(SR)』と『魔道のローブ(N)』のみであり、命のやりとりをする世界に身を置いている者としてこの軽装はあり得ない。
フレデリカとエレナは、以前からこの状況に懸念を抱いていたのだった。
イノチたちの戦闘スタイルは、エレナとアレックスが前衛、フレデリカが中衛、そして、イノチが後衛となる陣形が基本である。
かなりバランスが取れた陣形であり、エレナたち個々の強さから考えても、敵側にウォタやゼンクラスが出てこない限り、これが崩されることはまずないと言っていい。
そして、イノチ自身もそこに絶対的な信頼を置いているため、自分の装備が疎かになっているのである。
しかし、それだけではない。
もともとイノチが好んでプレイしてきたソーシャルゲームは『アニメRPG』。
ガチャで手に入れたキャラを編成し、ストーリーやクランバトル、個人ランク戦などを楽しむジャンルのものである。
この手のゲームの特徴は、基本的に自分を強化したり自分のために装備を揃える必要がないということ。
故に、イノチは自分の守りを固めることに対する意識が薄いのだ。
タケルのようにキャラを固めつつ、装備も充実させる器用なプレイヤーもいるが、この『アクセルオンライン』内のプレイヤーたちは基本的に自分を強化していく傾向にある。
そして、そんなプレイヤーたちとソロで対峙した場合、イノチは絶対に勝てない。
フレデリカとエレナはそう考えていた。
そして、その考えはあながち間違っていないし、イノチの死は自分の死にもつながると言うことを、二人はしっかりと理解しているのだ。
「では、どうやって『装備ガチャ』を引かせる方向へ持っていくか、ですわ。」
フレデリカが沈黙を破り、作戦を考え始める。
「BOSSはキャラばかり集める傾向にありますですわ。その懲りようは、もはや病気と言っても過言ではない…」
あごに手を置き、静かに考えるフレデリカ。
自分の主人に対して酷い言いようではあるが、それを聞いたエレナも不敵な笑みを浮かべてこう豪語した。
「大丈夫よ!あたしに考えがあるの。BOSSの場合、ゴリ押しが一番よ!」
「ゴリ押し…一理ありますですわね。まぁ、少し不安ですが、BOSSと一番付き合いの長いあなたに任せますわ。」
フレデリカがそううなずいたタイミングで、アレックスが姿を現す。
「二人ともぉ♪BOSS、戻ってくるよぉ♪」
背中の盾を大きく揺らし、そう言いながら走ってきた彼女は、風呂に入っているイノチの監視役を務めていたようだ。
「ならエレナ、あなたの話に合わせます。よろしくですわ。」
フレデリカの言葉にエレナはうなずき、アレックスも笑顔で反応した。
・
・
・
そんなこんなで、エレナの作戦を決行した結果が、目の前で目を輝かせて立っているイノチだった。
どことなく暑苦しいと言うか…うざさを感じさせるイノチの様子に、エレナもフレデリカも少し引き気味だったが、フレデリカが改めて口火を切る。
「エレナ…ここから先はよろしくですわ。」
「なっ…!なんで…!?」
「そりゃあ…あなたが考えた芝居のせいでこうなったのですわ。」
「BOSS、目がキラキラだぁ♪なんか面白いねぇ♪」
楽しげに笑うアレックスを横目にエレナは大きくため息をつくと、恐る恐るイノチへと声をかけた。
「ボ…BOSS?それじゃ、本題に戻っても良いかしら…?」
「いいよ!もちろんだ!」
(なにこれ…めちゃくちゃ暑苦しい…)
輝く目を自分へと向けるイノチに対して、エレナは苦笑いを浮かべながら続ける。
「フレデリカが持ってるこの『希少石』だけど…これをいったいどうするの?」
その問いにもっと顔を輝かせるイノチ。
「それはな、これを錬成の素材にして黄金石を手に入れるのさ!フレデリカの錬成は等価交換が原則だから、"URが確定"するアイテムを素材にすれば、大量の黄金石が手に入る!俺はそう予想してる!」
「…確かに。これは私も見たことがない鉱石ですわ…BOSSの考えも一理有りそうですわね。」
「なら、ちゃっちゃとやっちゃいましょうよ。」
エレナの言葉にうなずいたフレデリカは、テーブルの上に希少石を静かに置くと、その上に手をかざして目を閉じる。
(これは…なんですの?何か計り知れない力を感じますですわ。)
かざした手のひらから普段は感じ得ない未知の力を感じ取り、フレデリカは不思議な気分に包まれていく。
いつもの錬成時に頭に浮かぶ様々な式は出てこない。
浮かぶのは得体の知れないイメージのみ。
フレデリカはそのイメージに支配されたような感覚に落ち入り、無意識に錬成の詠唱を唱えていた。
「万物を創生し得る神の名の下に、我、等しき対価をここに捧げん。」
その瞬間、希少石が輝きを放ち始める。
赤、青、緑、黄色など、様々な色を発しながら、ゆっくりとその輝きを膨らませていく希少石の様子を、イノチたちは固唾を飲んで見守っていた。
一方で、フレデリカは膨らみ始める強大なエネルギーを必死に抑えようと堪えていた。
触れてはいけないものに触れてしまったのではないか。
そう感じさせるほどの質量を持ったエネルギーが、手のひらの下で暴れているのだ。
閃光とは違う…
強力な光を発し続けるそれは、まるで意志を持った無数の蛇のようにグネグネと動き回っている。
(こ…これは…制御できない!)
「BOSS…!!退避を…!!」
「…えっ!?」
抑える腕の限界を感じ、フレデリカはイノチたちへと声をあげたが…
ズドォォォン!!
大きな爆発が巻き起こり、フレデリカもイノチたちもそれに巻き込まれてしまった。
・
・
「うわぁ♪びっくりしたなぁ♪」
砂ぼこりが漂う部屋の中に漆黒の盾がぽつりと立っている。
そして、その裏からひょっこりとアレックスが顔を覗かせた。
彼女だけは間一髪のところで自分の盾に身を隠し、ことなきを得ていたようだ。
「ケホッケホッ…煙たいなぁ♪BOSS♪エレナさぁん、フレデリカさぁん♪」
他の三人の名を呼ぶが返事はない。
「いったいなにが起きたのかなぁ♪みんなぁ~大丈夫ぅ♪」
のほほんとした表情でそうつぶやきつつ、砂ぼこりが収まるのを待つアレックス。
次第に晴れていく煙の先…
ジッと見つめるアレックスの視界には、ゆっくりと信じられない光景が飛び込んでくる。
「わわわぁ~♪激アツな展開だよぉ~♪」
目を輝かせるアレックスの視界には、部屋一面…いや、部屋ぎっしりに詰まった大量の黄金石が映し出されていたのだ。
そして、その黄金石の中から生えている6本の足も…
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