235 / 290
第四章 全ての想いの行く末
6話 団長のスキル
しおりを挟む「ガハハ!久しぶりだなぉ、嬢ちゃん!」
気持ちの悪い笑みを浮かべ、アレックスに対してそう笑うのは巨大な斧を肩に担いだハーデ。
その横にはすました表情を浮かべるメテルの姿もある。
東門前での戦いを制し、その広場を抜けてレオパルまでの活路を開くべく、王宮内を突き進んでいたエレナとアレックスの前に立ちはだかったのは、クラン『創血の牙』支部長のハーデとメテルであった。
「げえぇぇぇ♪おじさん、また来たのぉ♪」
「こいつら、この前あたしたちにボコボコにされた奴らじゃない。」
ハーデの言葉に対して気持ち悪そうに口を押えるアレックスの横で、エレナは腕を組んだままあきれたようにため息をついた。
「相変わらず余裕を見せつけてくれるぜ。だが、今回はこの前のようにはいかねぇ!!」
「そうです。今回は近くに団長がいますからね。スキルの恩恵を受けた我々はこの前とは違いますよ。」
「スキル...?恩恵?何のことかわからないけど、さっさとそこを通してもらうわ!!」
エレナはそう告げると、両手にダガーを構え、一瞬で二人との距離を詰めた。
そしてそのまま、メテルへ向けてダガーを振りぬいた。
「まずは厄介なあんたからよ!!」
フレデリカとメテルの一戦を見ていたエレナは、厄介なスキルを持つメテルの方を先に倒すべきと判断したのだろう。
しかし、エレナの思惑を見透かしたかのように、そのダガーは空を切った。
「な...!?」
目の前のメテルがいなくなり、一瞬驚いたことで隙ができたエレナに対し、ハーデが巨大な斧を振りかぶる。
「よそ見してんじゃねぇぞぉぉぉ!!」
「ちぃっ!!......!?」
まさに振り下ろされようとしている斧をかわそうと、エレナは回避行動をとろうとしたが、なぜか足がその場から動かさなくなっていることに気づく。
「うそっ?!」
「ガハハハハハ!!死んだぁぁぁぁぁぁ!!!」
目を見開き、エレナに向けて巨大な斧を振り下ろすハーデ。
しかし...
ガキィィィィィン!!
間一髪のところで、アレックスが間に割って入り、大きな盾でその斧を受け止めた。
「アレックス!!」
「うぐぐ...エレナさん、考えずに飛び込んじゃだめだよぉ♪」
エレナを諭すように告げるアレックス。
ギリギリと音を立てながら、斧を抑えるそんなアレックスに対して、ハーデがニヤリと笑みをこぼす。
「さすが嬢ちゃんだぜ!!ほんと惚れ惚れする防御力だぁ!!やっぱりお前は、俺がいただくぜぇぇぇ!!」
「うわっ!キモい♪でも、な...なんだろう♪お...おじさんの力が...前よりも強くなってる♪?」
「アレックス!あたしに任せなさい!!」
動けるようになったことに気づき、必死に耐えるアレックスに加勢しようと立ち上がろうとしたエレナは、突然真横から蹴りを受けてしまう。
「ぐっ!!な…!?」
体勢を崩しながらもその方向に目を向ければ、先ほど姿を消したメテルが笑っている様子がうかがえた。
「よそ見はいけないな。ククク…」
「この…ちょ…調子に…」
イラッとしてすぐに体勢を立て直しすエレナ。
だがその瞬間、メテルに蹴られた部分が赤く光り始めたのだ。
「なにこれ…えぇ!!」
その光は、キーンと収束する音を立て、最後に大きく輝き出す。
そして…
「ヒヒヒ…爆ぜろ!」
メテルがそう笑った瞬間、エレナを中心に大きな爆発が巻き起こった。
「ひゃぁぁぁぁぁ♪」
「ごわぁぁぁ!?」
その衝撃に巻き込まれるアレックスとハーデ。
その横で大笑いしているメテル。
粉塵が巻き起こる中で、彼の笑い声が響き渡った。
そんな中、舞い散る砂ほこりの中から、ハーデがゆっくりと姿を現す。
「メテル…てめぇ、ちったぁ考えてスキル使えや。」
「すまんすまん。しかし、やはり団長のスキルは素晴らしいですね。ステータスの向上の仕方が半端ない。」
埃を払いつつ愚痴をこぼすハーデに笑いながら、メテルは嬉しそうに砂ほこりの中心を見た。
一方、砂ほこりの中では…
「エレナさん、大丈夫♪」
「え…えぇ…。ちょっと効いたわね、イテテテ…」
怪我こそないが、体のところどころを押さえているエレナの元へアレックスが近づいてきた。
「…あいつらの攻撃力、以前より上がっているわよね?」
「うん♪あのおじさんの力、確かに強くなってたよぉ♪」
「たしか…団長がどうとかって言ってたわね。それが関係してるのかしら…」
「たぶんそうだろうねぇ♪」
エレナは大きくため息をついた。
「面倒くさいわ…ほんと。弱いくせにピーピー騒いで…自分の力じゃ何もできないくせに…」
「そうだねぇ♪イライラするよねぇ♪エレナさんにこんなことして…許せないよねぇ…」
少しずつ二人の様子が変わり始める。
表情は暗くなり、ぶつぶつと怨嗟を連ねる二人の背には、ゴゴゴゴゴッという地鳴りのようなものが可視化しているように見えた。
「…アレックス、本気でやるわよ。あいつらに目にものを見せてやるわよ。」
「うん…BOSSの邪魔は…させちゃだめだもんねぇ♪」
・
「さてさてさて…どうするかい?」
漆黒の鎧が不敵に笑うその横で、赤い鎧を着たアカニシはイノチをじっと睨んでいた。
対するイノチも、アカニシから目を離さずにいる。
「アカニシ…」
「またてめぇか…プレイヤーでもねぇのに俺らの邪魔ばかりしやがって…しかも、その面見てるとやっぱりムカつくぜ。」
互いに睨み合うイノチとアカニシ。
アカニシにはもちろんイノチのネームタグは見えていない。
そのため、プレイヤーであることはバレていないが、なにせイノチの顔はそのままなのだ。
彼の中には、イノチに対して疑心しかないのである。
「そかそか、君たちは因縁があったよね。なら、思う存分やっちゃおうか!」
そんな二人を見て笑う漆黒の鎧の男。
手を叩いてふざけたようにそう告げる男の前に、今度はセイドが立つ。
「団長、勘弁してくれよ!俺が仕事嫌いなの知ってるだろ?特にレオパルの件では動きたくねぇのに…」
「そういうなよ、セイド…今日はそういう訳にもいかないんだ。俺の命令は聞いてもらうよ。」
その言葉に大きくため息をつき、仕方なさそうに手を振るセイドは、ちらりとイノチに視線を向けてすぐに背を向けた。
(漆黒の鎧…奴が創血の牙の団長だったのか。セイドのやつ、ナイスタイミングだ。だが、まだ手の内は伏せておくほうがいいな。こちらにはケンタとミノタがいるし…)
セイドはイノチ側についている内通者だ。
ラビリスの大空洞の件で、彼はイノチと手を組んだのだ。
今の視線は彼からの合図…わざと会話に入り込んでイノチたちに情報を渡したのである。
イノチの後ろではケンタとミノタが鼻息を荒くしており、出番はまだかまだかと待ち侘びている。
フレデリカに視線を向けると、彼女もその視線を待っていたかのように小さくうなずいた。
「…とりあえず、こいつらを倒さないと前には進めないようだ。なら、ここで決着をつけるしかない!」
仲間を背にしたイノチは、そう告げて力強く前見る。
その視界には赤い鎧も映り込んでいる。
「いいね!さぁ、君の力を俺にもっと見せてくれよ!」
イノチたちの様子を見た創血の牙団長のロノスは、楽しげにそう言い放った。
その鎧の中で赤い瞳を輝かせて…
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる