22 / 53
第二章 北部の発展を目指して
21
「そして今から皆の雇い主でもあります。どうぞ、よろしくお願いします」
にっこり微笑み、テキパキと指示を出す。
「力のある男性、そうね、三人ぐらいでいいかしら」
そのぐらいの人数であれば、ひとまず足りるだろう。
「ロゼール」
「はっ、はい」
「まず、あなたは馬車でこの三人と屋敷に戻って。そして貯蔵庫にある食料を積んで、またここに戻ってきて」
「い、いったい、なにをなさるおつもりですか?」
いまいちピンときていないロゼールに微笑む。
「私と一緒に南部から運ばれてきた食糧よ。屋敷で使わないのなら、腐らせる前にここで使うわ!」
「そ、それはいけません!」
ロゼールが難色を示した。
「あら、それはどうして?」
「屋敷の物を勝手に動かしてはいけません。イザーク様に許可を取りませんと!」
「大丈夫よ。彼から許可なんて必要ない」
そうよ、彼は食糧をどうにかする気はなさそうだった。人がわざわざ南部から持ってきた食糧を、なんだと思っているのか。このまま腐らせるわけにはいかないわ。
「いいのよ。南部の両親も、定期的に食糧を送ってくれる約束をしたし。不足したら、また送ってもらうわ」
ロゼールがゴクリと喉を鳴らした。
「そして残りの皆さんは、ここを掃除して欲しいの。今すぐ使えるように」
幸い、清掃道具も残っていた。
「食器も鍋も椅子もテーブルも全部よ!」
「本当に食堂をなさるのですか……?」
ロゼールは訝しむ表情を向ける。
「そうよ。私は嘘をつかないわ」
口に手をあて、うふふと笑う。
ロゼールは顔をひきつらせた。
「そのために人を集めてもらったんだから」
ロゼールは半信半疑だったようで、絶句している。
「ここに運び込む食糧が尽きたら、どうなさるのです?」
「言ったでしょ、そしたらまたお父さまに送ってもらうって」
親に甘えているかもしれないが、父にはそれだけの経済力がある。
「かじれる時に、かじりましょう、お父さまの脛は!」
この際、やせ細って骨になるまでいかせていただくわ。
まあ、もっともそのぐらいでセバスティア侯爵家の財力が傾くとは思ってはいない。
「最初に街に来た時に思ったのだけど、結構貧富の差があるのではなくて? 毎日の食事に困っている人々がいるなら、安定した食事の供給が必要よ。たとえ一食でも、毎日必ず食べられると思うと、心の支えになると思うの」
毎日お腹を空かせていては、食べる物のことだけで頭の中はいっぱいだろう。
それに路地裏にはトビーと同じぐらいの年齢の子が、たむろしているのが気になった。
「食堂を開くことによって、人を雇えるじゃない。賃金が発生するわ」
「その賃金は……」
「もちろん、私が払うわよ」
ロゼールを前にして胸を張る。
「こう見えても私、結構お金持ちなんだから。持参金をすべて使っても構わないわ」
万が一資金が不足したら、父が送金してくださるはずだ。それに北部との良好な関係を保ち、目的を果たすことができたのなら、炊き出しなどと比にならない功績を手にすることになる。
だからこそ父は、私の北部での活動を全面的に支援するはずだ。
「さあ、ボーッとしている時間がもったいないわ! 今日から炊き出しを開始するから!」
「今日ですか!?」
「ええ、そうよ。早く準備に取り掛かりましょう」
その時、黙ってことの成り行きを見守っていた、一人のいかつい男性がズイッと前に出た。
「話を聞かせてもらってたんだが――」
強面な男性がいきなり私と距離を詰めたので、ロゼールが私の前に出た。
ドリーもいつでも飛び出せるよう、身構えているのがわかった。
にっこり微笑み、テキパキと指示を出す。
「力のある男性、そうね、三人ぐらいでいいかしら」
そのぐらいの人数であれば、ひとまず足りるだろう。
「ロゼール」
「はっ、はい」
「まず、あなたは馬車でこの三人と屋敷に戻って。そして貯蔵庫にある食料を積んで、またここに戻ってきて」
「い、いったい、なにをなさるおつもりですか?」
いまいちピンときていないロゼールに微笑む。
「私と一緒に南部から運ばれてきた食糧よ。屋敷で使わないのなら、腐らせる前にここで使うわ!」
「そ、それはいけません!」
ロゼールが難色を示した。
「あら、それはどうして?」
「屋敷の物を勝手に動かしてはいけません。イザーク様に許可を取りませんと!」
「大丈夫よ。彼から許可なんて必要ない」
そうよ、彼は食糧をどうにかする気はなさそうだった。人がわざわざ南部から持ってきた食糧を、なんだと思っているのか。このまま腐らせるわけにはいかないわ。
「いいのよ。南部の両親も、定期的に食糧を送ってくれる約束をしたし。不足したら、また送ってもらうわ」
ロゼールがゴクリと喉を鳴らした。
「そして残りの皆さんは、ここを掃除して欲しいの。今すぐ使えるように」
幸い、清掃道具も残っていた。
「食器も鍋も椅子もテーブルも全部よ!」
「本当に食堂をなさるのですか……?」
ロゼールは訝しむ表情を向ける。
「そうよ。私は嘘をつかないわ」
口に手をあて、うふふと笑う。
ロゼールは顔をひきつらせた。
「そのために人を集めてもらったんだから」
ロゼールは半信半疑だったようで、絶句している。
「ここに運び込む食糧が尽きたら、どうなさるのです?」
「言ったでしょ、そしたらまたお父さまに送ってもらうって」
親に甘えているかもしれないが、父にはそれだけの経済力がある。
「かじれる時に、かじりましょう、お父さまの脛は!」
この際、やせ細って骨になるまでいかせていただくわ。
まあ、もっともそのぐらいでセバスティア侯爵家の財力が傾くとは思ってはいない。
「最初に街に来た時に思ったのだけど、結構貧富の差があるのではなくて? 毎日の食事に困っている人々がいるなら、安定した食事の供給が必要よ。たとえ一食でも、毎日必ず食べられると思うと、心の支えになると思うの」
毎日お腹を空かせていては、食べる物のことだけで頭の中はいっぱいだろう。
それに路地裏にはトビーと同じぐらいの年齢の子が、たむろしているのが気になった。
「食堂を開くことによって、人を雇えるじゃない。賃金が発生するわ」
「その賃金は……」
「もちろん、私が払うわよ」
ロゼールを前にして胸を張る。
「こう見えても私、結構お金持ちなんだから。持参金をすべて使っても構わないわ」
万が一資金が不足したら、父が送金してくださるはずだ。それに北部との良好な関係を保ち、目的を果たすことができたのなら、炊き出しなどと比にならない功績を手にすることになる。
だからこそ父は、私の北部での活動を全面的に支援するはずだ。
「さあ、ボーッとしている時間がもったいないわ! 今日から炊き出しを開始するから!」
「今日ですか!?」
「ええ、そうよ。早く準備に取り掛かりましょう」
その時、黙ってことの成り行きを見守っていた、一人のいかつい男性がズイッと前に出た。
「話を聞かせてもらってたんだが――」
強面な男性がいきなり私と距離を詰めたので、ロゼールが私の前に出た。
ドリーもいつでも飛び出せるよう、身構えているのがわかった。
あなたにおすすめの小説
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結】「まずい」と騒ぐだけの毒見役は不要だと追い出されましたが、隣国王子の食卓を守ったら手放してもらえなくなりました
にたまご
恋愛
「穢れた血の孤児が王族の食に触れるな」
七年間、王宮の毒見役として「まずい」と言い続けた少女は、ある日追い出された。
誰も知らなかった。彼女が「まずい」と言うたびに足していた調味料が、食事に混ぜられた毒を中和していたことを。
辿り着いた国境の村の宿屋で、フィーアは初めて自分の料理を作った。
毎日通い詰める無口な旅の商人は、体調が悪そうなのに、フィーアの料理だけは「美味い」と言ってくれて——
彼の銀杯のワインを一口もらった時、フィーアの舌が反応した。
「……にがい」
※短編完結/追放/ざまぁ/溺愛
心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁
柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。
婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。
その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。
好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。
嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。
契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。
謹んで、婚約破棄をお受けいたします。
パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。
小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅
みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。
美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。
アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。
この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。
※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi(がっち)
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。