妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
6 / 63
第一章 妹を守ってみせる

5

しおりを挟む
 停留所に馬車を止め、目指すのは薬草士のいる店だった。大きな街に薬草士は必ず在中している。
 私はお目当ての店を見つけると、薬草を焙煎するための道具や、薬草を詰める瓶などを買い込んだ。

「ありがとうございました」

 店員に見送られ外に出ると、扉についていたベルがカランコロンと鳴り響いた。
 街は人々が行きかい、にぎわいを見せている。
 どこからかパンが焼けた香ばしい香りが漂い、鼻をスンと鳴らした。

 私がこの街にきた目的はもう一つあった。それはこの街で有名なスイーツの店、ロレーヌ。フルーツをたっぷり使ったパイや、クリームをふんだんに盛りつけているケーキがあると聞く。甘いクリームが大好きなので、さっそくお目当てのロレーヌへと、足を運ぶ。

 店内は大賑わいで、しかも品数も購入制限があった。本当は全種類食べてみたいけれど、これだけの有名店だもの、仕方がない。

 列に並んで、クリームがたっぷりのっていたケーキを、私とシアナの分を購入した。シアナも甘いものが大好きだから、喜んでくれるかしら?

 いそいそとカゴにしまったあとは、少しだけ街を散策して帰ろうか。ご機嫌になって街並みを歩く。

 やがて店がなくなってきた街の外れまで来た。
 そろそろ戻ろうとしたところで、ふと人の集団がいることに気づく。

 あれは――女の子?

 一目で上等だとわかる深い青色に、裾に細やかな刺繍が入っているワンピースを着用していた。フードを被っていたが、長い髪が出ていたので、女性だと思った。そして男三人が取り囲むようにしている。

 男の方はというと、お世辞にも身なりがいいとは言えなかった。胸元を大きく開き、着崩れしているシャツにズボン。顔をにやつかせ、フードの中をのぞき込み、何か話している。

 フードを被った女性は壁に背を向けて立っている。男は壁に手をついて、女性を取り囲んでいた。

 あれじゃあ、逃げ道はないだろう。

 女性の顔は見えないから、状況はよくわからないが、どう見ても不釣り合いな組み合わせだ。
 ここで声をかけるべきか足を止め、私は迷った。タイミングが悪いことに、周囲は私以外の姿は見えなかった。

 注意深く見守っていると、男が女の子の手首をつかんだ。フード越しだが、相手は首を横に振ったのがわかる。あれは拒否の姿勢だ。

 そのまま建物の間にある小道に手を引っ張り、連れて行こうとしたのが見えた。あれは引きずり込もうとしている!

「――なにをやっているの」

 そこで初めて声をかけた。

 私だって男三人を相手に、声をかけるのは勇気がいる。それに、もし私の勘違いだったらと思うと躊躇もしたが、後で後悔するよりもずっといい。

 大丈夫よ、私には最後の手段もあるのだから。
 自分に言い聞かせ、手をギュッと握りしめた。

 男たちはゆっくりと私の顔を見る。品がなく、しまりのない顔。私と同じ年頃の、明らかにならず者に見えた。

「あ?」

 私をバカにするような声を出した一人の男に、他の二人はあざ笑う。

「俺たち、楽しく遊ぼうと思っていたんだ。あんたも混じるか? 俺たちと仲良くしようぜ」

 下品な笑いを響かせる男たちに、身構える。

 その時、フードを被った子が私に視線を向けた。

 ――わ……すごく綺麗な子……!! 

 フードの隙間からこぼれる長い金の髪、快晴を思わせる青い瞳。白い肌に赤く色づいた唇。

 そしてその瞳は不安げに揺れ、私を見つめている。
 あんなに綺麗な子、初めて見たわ。まるで天使か妖精みたい。

 間違いない、絶対、彼らとは無関係だわ。

 私は勢いよく近づくと、男と彼女の間に割って入る。

「嫌がっているじゃない。やめてあげなさいよ」

 彼女をかばうようにして前に立つ。

「やめてあげなさいよ~、だってよ」

 私の声色を真似した男に後方の男たちはゲラゲラと下品な声を出す。

 ダメだ、相手にしていられない。
 小さくため息をつき、振り返る。

「大丈夫?」

 目が合った彼女は頬を赤く染め、うなずいた。私は彼女の手を取り、男たちを無視して歩きだした。

「おい、待てよ」

 肩に手がかけられた瞬間、ブワッと鳥肌が立ち、足を止める。

「どこ行くんだよ、俺たちが遊んでやるって言ってるんだよ」

 私は振り返ると、彼女を背に庇い、男と向き合う。

「結構よ。そんな無理やりなやり方では絶対無理。あなた、もてないでしょ」
「なにい!?」

 相手は図星だったようで、瞬時に顔が真っ赤になり、目を釣り上げた。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...