妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
7 / 63
第一章 妹を守ってみせる

6

しおりを挟む
 身の危険を感じ、私は身構える。

「いいから、こっちにこいよ! まとめて遊んでやるから!!」

 男からグッと手首をつかまれた時、私は手に意識を集中する。

 今こそ、学んだことを生かす時よ!
 熱くなる手のひらが輝きだし、光が集まる。そしてあっという間に、小さな光の球が出来上がる。

「これでも食らえ!!」

 私は男たちに向かい、光の球を投げつけた。

「わぁぁぁあ!!」

 一人の男の肩に当たり、光の球は大きく弾け飛んだ。光を直視した男たちは、まぶしさで目をやられたのだろう。地面に崩れ落ち、顔に手をあててうめいている。

 彼らには強烈な目くらましになったはずだ。

「今のうちよ! 急いで!」

 口に手を当て目を大きく見開き、ただその様子を眺めていた少女。戸惑っているのかもしれない。

 少女の手を取り、ギュッと握りしめる。ハッとした表情で我に返った彼女を、急いでその場から連れ出した。

「はぁ、はぁ、ここまで来れば、もう大丈夫かしら」

 店が立ち並び、人が多い場所まで走ってきた。人目があることにホッとして足を止めた。肩で息をしながら少女の顔を見ると、戸惑いの色が浮かんでいた。

 あっ、いけない。ちょっと強引すぎたかしら。

「ごめんなさいね、おせっかいかと思ったのだけど、ほおっておけなくて」

 少女はハッとして顔を上げ、首を大きく横に振る。

「……あ、ありがとう」

 瞳をきらきらと輝かせている様子を見ると、迷惑ではなかったようで良かった。

「……すごい」

 ホッとして胸をなでおろすと、ぽつりと声が聞こえた。

「あれは精霊の加護、しかも光属性だよね?」
「ええ、そうだけど」
「やっぱり! 初めて光の精霊の加護を見た!」

 少女は若干興奮しているのか、前のめりになった。

 実は実践で使うのは初めてだったとは、言えやしない雰囲気だ。だが、私も必死だったのだ。

 あの地面に転がっていた男たちは無事だったのだろうか。少し心配になるが、そう力を込めたつもりはないので、深手は追わないはずだ。これで嫌がる女性を力づくで、なんて懲りて欲しい。

 精霊の加護も今後は、もっとコントロールできるようになりたいな。
 私も、まだまだ勉強しないとな――。

「ねえ、君はどこから来たの?」

 少女はどう見ても一般庶民には見えない。着ている服装からいって貴族だろう。

「誰かとはぐれてしまったの?」

 周囲をキョロキョロと見まわし、それらしい人を探すが、無理だった。これだけ人が多ければ、わからない。

 少女は口の端を上げて、にっこりと微笑んだ。

 うわぁ、天使の微笑みだわ。

 私より少しだけ背の低い、彼女の青い瞳に吸い込まれそうだ。

 でも、どこかで見たことがあるような気がする。だけど、こんなに綺麗な子だったら、会ったら絶対に忘れないだろうから、気のせいか。

「もう、大丈夫かしら?」

 彼女を残して行くことに気が引けるが、仕方ない。ここでお別れだ。彼女はハッとして両手を組むと、コクコクとうなずいた。

「じゃあ、私はもう行くから、気をつけてね。あまり人気のない場所に近寄らないでね」

 手をふって別れようとしたその時、腕をガシッとつかまれた。
 想像以上に強い力だったので、よろめいてしまう。私の腰を支えながら、彼女は耳元でささやいた。

「もっと話したい」

 え、そう言われても、立ち話もなんだし、シアナも帰りを待っている。

「ごめんね、もう帰らないといけないの」

 一瞬にして女の子の表情が曇ったが、すぐに顔をパッと上げた。

「――また会える?」

 えっ……。
 彼女が私の目をジッと見つめる。真剣な表情で私の返答を待っている様子にたじろいでしまった。

「ちゃんとお礼がしたいし。私の名前は――」

 改めて背筋を正し、胸元に手を当て、口を開いた少女。
 その洗礼された一連の動作を食い入るように見つめる。なぜか目が離せなかった。

「いた! いらっしゃった!!」

 その時、背後から男の焦った声が聞こえ、振り返る。
 バタバタと人が集まる足音が聞こえる。そこには騎士の姿をした男三人が必死の形相で駆けつけてきた。

 だが騎士の姿を視界に入れた少女は顔をゆがめた。そして小さく――チッと聞こえた。

 え、今の舌打ち? まさかね。こんな可憐な少女に限って、それはない。空耳、空耳。

 気を取り直して、彼女と向き合おうとした私に、騎士の野太い声が響く。

「無事に見つかって良かったです!! 心配しました、もう勝手に抜け出さないで下さい、エディア様!!」

 ……えっ……。

 聞こえてきた名前に思考が停止する。

 う そ で し ょ う

 信じられない思いで、時計仕掛けの人形のようにギギギと少女の顔を見つめた。

 金髪碧眼、白い肌に大きな瞳の美少女……。

 エディアルドだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 『エディア』は彼が女性の姿で名乗っていた名前だ。

 どうして忘れていたんだろう、こんな大事なこと!! 小説でも美少女の描写だったじゃない!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...