妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
14 / 63
第一章 妹を守ってみせる

13

しおりを挟む
 帰路につく馬車の中、座席に座るとドッと疲れが出た。

 ああ、これで義理は果たした。もうエディアルドと関わることはないと思いたい。

 でも、普通に友人を求める十代の女の子、といった印象だ。恋話をしたがったり、好きなタイプを聞きたがったり。

 だが、小説の描写より、大人しそうに見えてもエディアルドはエディアルド。
 現にすでに私のことを調べているあたり、執着する片鱗を見せているじゃないか。

 一回出会っただけの私でさえこうなのだから、本格的に気に入られたら、どうなってしまうのだろう。恐ろしくもあり、想像したくない。

 思うに、カーライル公爵はエディアルドを大事にするあまり、過保護にしすぎたのかもしれない。屋敷に閉じ込めてばかりでは、考える時間が多すぎるだろうに。

 やはり、人は外の光に当たらないとダメなのだろう。
 まあ、カーライル公爵が残された孫を思う気持ちは、理解できなくもないが……。
 揺れる馬車の中、とりあえず一仕事が終わったことで、ほっと一息ついた。

「お姉さま、おかえりなさい。早かったのね」

 出迎えにきたシアナを見ると、心がなごむ。

「ええ、派手な場は疲れちゃうから、挨拶をしてすぐに帰ったわ」

 シアナはふんわりと微笑む。
 私が守りたいのは、この笑顔だ。エディアルドに会わせるわけにはいかない、絶対に。

「お姉さま……?」

 いきなり抱きしめた私にいぶかしむ声を出すシアナの腰に力を込めた。

「ああ、疲れたから、シアナを補給するわ」
「ええっ、なにそれ。お姉さまったら」

 耳元で笑う声がくすぐったくもあり、幸せを感じた。

 ***

「じゃあ、行ってきます。ちゃんと薬飲むのよ」
「行ってらっしゃい」

 私は日課となっている森へ行く。薬草の採取や芽の成長具合の確認など、なかなか忙しい。

 腰を折り、薬草を採取する。
 午前に薬草を採取してから午後に調合し、あとはのんびりとした時間を過ごすルーティンだ。

 ここでの暮らしはすごく気に入っている。シアナにもあっているらしく、今のところ発作も出ることがない。このまま完治してくれるといいのだけど。

 祈りをこめつつ、薬草を摘んだ。

 別荘に戻ると、使用人から一通の封書を差し出された。
 紋章の入った深紅の封蝋印が血のように見え、私は固まる。

 この紋章は――。

 嫌な予感がし、そのまま部屋に持ち帰るも、なかなか封を開ける気にならなかった。

 夜になりようやく勇気を出し、封書を開ける。
 そこに書かれていたのは、ハモンド家から来週のお茶会への誘いだった。

 読み終えると、深いため息をつく。

 もう会わないと伝えて去ったつもりが、ちゃんと伝わらなかったのだろうか。
 手紙を前に、ため息が止まらない。

 無視するわけにもいかないので、断りの返事を出すことにした。

 先日の舞踏会でのお礼と、せっかくのお誘いだけど、来週は用事があるから、お茶会へは参加できないと言葉を選びながら綴った。

 これで納得してくれるといいのだけど――。
 願いつつも返事を書き終えた。

 ***

「えっ、また!?」

 私がハモンド家へ断りの返事をした三日後、またもやお茶会のお誘いの封書が届く。頭を抱え、断りの返事を考える。

 一度目は用事があると断り、では次は……?

 ええい、こうなったら、また用事があると言って断ろう!

 だいたい、一度断られた時点で察して欲しい。もう会う気はないと。

 嫌な断り方だけど、相手も空気を読むだろう、きっと。
 そして私は二度目になる断りの返事を出した。

 数日後、いつものように森へ行く。

 やはりここは薬草の質が良く、成長も早い。煎じて飲んでいるシアナの顔色もすこぶる良くなり、咳も出なくなってきた。この調子なら、早く良くなるかもしれない。

 このままエディアルドを回避できたら――。

 ふと突然、強い風が吹き、被っていたフードが落ちる。 

「わわっ」

 フードから出た髪を抑えつつ顔を上げると、木々の間から人影が見えた。
 顔は見えないが、人が立っている。だって、足が見えるもの。

 なぜか背筋がゾクッとした。

 こんな森の奥、目的がなければ現れない場所だ。

 嫌な予感がした私はカゴを手にすると、一目散に駆け出した。
 背後から視線を感じながらも、怖いので振り返らなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...