妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

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第一章 妹を守ってみせる

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 そんなことがあった翌日、うんざりする出来事があった。

 また届いたのだ、招待状が―――。

 しかも今回はリチャードが直々に持ってきたそうだ。その場にいなくて良かった、本当に。

「よほどお姉さまのこと、招待したいのよ。行ってあげれば」

 無邪気なシアナだが、行かないのはあなたのためでもあるのだ。

「とにかく私は忙しいの。お茶会に行くぐらいなら、ここで本でも読んでいるわ」
「お姉さまってば、今回は頑固なのね」

 クスリと笑うシアナだが、まったく、人の気も知らないで……。

「だけどお姉さまのこと、気に入ったんじゃない? じゃなきゃ、ここまで誘わないわ」
「別荘での暇つぶしでしょう、きっと。だったら王都に戻ればいいのに。娯楽はここよりも多いはずよ」

 もうこうなれば意地になる。もしくは招待に応じない私に、あっちも自棄になっているか。そうして私は再度、断りの返事を出したのだった。
 
 三回目の断りの返事を出してから、十日が過ぎた。

 三回も断られたら、やっとあきらめたのか、招待状はこなくなった。そして私たちは平穏な日々を過ごしていた。

「じゃあ、行ってくるわ」
「お姉さま、そんなに行かなくていいんじゃない? もう棚がいっぱいだわ」

 シアナの薬が瓶に詰まってびっしりと棚に並ぶ。確かに作りすぎだわ。

「なんだか毎日、日課になってしまって。行かないと落ち着かないのよ。それにいい運動にもなるし」
「はいはい、行ってらっしゃい」

 快く送り出してくれたシアナに別れを告げ、森の小道へと向かう。

 いつものように作業を始めるが、今日は風が強い。

 わき芽を摘み終えたところで、すっくと立ちあがると、木々で羽を休めていた鳥が一斉に飛び立った。

 どうしたのかしら? 
 もしかして熊でも出たとか……。

 急に不安になり、身構える。周囲は得体の知れない緊張に包まれているのを肌で感じる。

 前にもこんなことがあった。
 あの時もなんだか怖く感じて、走って帰ったんだった。

 やはり、今日も帰ってしまおうと、来た早々、帰り支度を始めた。
 ふと森の奥から視線を感じ、顔を上げる。

 誰か……いる……。

 額にじんわりと汗がにじむ。こんな場所、用事がなければ入ってこない。

 恐怖から心臓がどくどくと音を立てる。怖いのに、逃げ出した方がいいと本能が告げているのに、木々の間に視線が集中し、なぜか逸らすことができない。

 ごくりと唾を飲み込むと、揺れる木々の間、歩いてきた人物が視界に入る。
 その人物は羽織っていたローブのフードをゆっくりと下ろした。

 日に当たりキラキラと輝く金の髪に、快晴の空と同じ瞳の色。赤く色づいた唇を不機嫌そうにゆがめ、近づいてくる。

「エディア……」

 どうしてここにいるのだろうと思ったが、恐怖に包まれて動けずにいた。

「リゼット。どうしてお茶会に来てくれないの?」

 まさか、そのためだけにここまできたの?
 それにどこから来たの? 私は通ってきた森の小道にバッと視線を投げた。
 ここに来るには道は一つしかないからだ。

「ふふっ。どうやってここに来たか気になる?」

 エディアルドが肩を揺らして微笑む。

「すぐに教えてあげるよ」

 エディアルドは私に向かい、スッと手を伸ばす。反動でビクリと体が震える私の腕をつかむと、顔に手をかざす。

 不意に眠気が襲ってきて、頭がクラリとした。足に力が入らず、そのまま倒れ込んだ体をエディアルドが抱きかかえた。

「おやすみ、リゼット」

 声が聞こえたのを最後に、意識を手放した。
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