妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
16 / 63
第二章 監禁生活

15

しおりを挟む
 周囲の気配を感じ取り、眉をピクリとひそめた。
 重い瞼をゆっくりと開けると、視界に入ったのは豪華な彫刻が施された、見覚えのない天井。

「…………」

 どこだろう、ここは。自分の状況が理解できず、思考が停止する。

「起きた!?」

 その時、ヌッと顔を出した人物に驚きのあまり、ベッドから転がり落ちてしまった。

「エディア!?」
「はは、驚きすぎ!」

 エディアルドは肩を震わせクスクスと笑うが、説明して欲しい、この状況を。

 私は森で薬草採取していたはずだ。いきなりエディアルドが出現したと思ったら気を失い、目覚めたら知らない屋敷だなんて、驚きを通り過ぎている。

「こ、ここはどこ?」

 焦って周囲をキョロキョロと見まわすが、見覚えがない。広い部屋に豪華な調度品はどれをとっても高級品に思えた。

「まあ、そう焦らずに」

 にこにこと笑って私をなだめるが、焦るに決まっているわ!

「まずはここに座って」

 エディアルドは椅子を引いてくれた。目の前のテーブルには紅茶と焼き菓子が準備されている。

 まずは話をしようと思い、しぶしぶと腰かけた。
 エディアルドみずから紅茶を淹れてくれ私に差し出すと、前の席に腰かけた。
 心を落ち着けようと、紅茶を口にする。

「あ……美味しい」

 フワッと香る茶葉とあっさりとした飲み口に、少しだけ和んだ。

「気に入ってくれて良かった」

 エディアルドは嬉しそうに頬を綻ばせた。だが、紅茶の話をしにきたのではない。

「それで、なぜ私を連れてきたの?」

 それも無理やりに近い形で。質問するとエディアルドは目をキョトンとさせた。

「だって、何度誘ってもリゼットが来てくれないから。こうするしかないでしょ?」

 ダメだ、この子、誘拐みたいな手を使って、ちっとも反省していない。

 不自由な生活を強いることが多かったので、周囲はエディアルドの望みはなんでも叶えるのが普通になっていた。それが原因となり、わがままになった。この状況を考え、頭を抱えたくなった。

「そもそも私をどうやって連れてきたの?」

 エディアルド以外の人の姿は見えなかったが、どうしたのだろう。そもそもあの場に来たのだって――。

「ああ、簡単だよ」

 エディアルドは空間にスッと手を伸ばすと、そこから念じ始めた。

 禍々しい空気に包まれ、空間が歪み始めた。
 あれは闇の精霊の加護だ……!

「これで空間移動したんだ」

 得意げに微笑むエディアルドだが、この力の前では逃れられないと感じた。闇の精霊の加護をここまで使いこなせる人間はそういないだろう。

「言ってなかったけど、五大属性の精霊の加護を持っているんだ」

 少し照れくさそうに鼻をかくエディアルドだけど、うん、知ってる……。

「リゼットを屋敷に招待したいって相談したら、五大属性の精霊たちはみんな力を貸してくれたよ!」

 無邪気な笑顔で言うエディアルドだが、あなた、じゅぶん使いこなしているのね。

 だったら、精霊も止めてよ、エディアルドを。
 そこまでエディアルドに忠誠を誓うのかと、頭がクラクラした。

 エディアルドは精霊の加護の力を抑えるための薬を長期間、服用していた。
 あまりにも巨大な力をその身に宿しているので、幼い頃は使いこなすことができず、暴走してしまうことが多々あった。そのため、薬の力で抑えていたはず。

 だが、成長するにつれ、薬では到底抑えることができなくなった、と描写されていた。もしかしたら、今も薬は飲んではいるけれど、意味がないのかもしれない。

「リゼットも光の精霊の加護があるだろう? すごいな」
「ええ、まぁ……」

 五大属性持ちに言われましても……な気持ちになるが、黙っていた。それにあまり精霊の加護を使いこなせていない。せいぜい、小さな光の球を作り出すか、薬草の効果が微増になるぐらいだし。

 紅茶を飲んでいる間も、エディアルドは上機嫌で見つめてくる。

「それで、紅茶を飲み終えたら帰してくれるの?」

 私が質問するとエディアルドは組んでいた手から顔を上げた。

「帰さないよ」
「えっ?」

 一瞬、聞き間違えかと思い、パチパチと瞼を瞬かせた。

「あははっ。そんなわけないじゃん。びっくりした?」

 急に噴き出したエディアルドにホッとした。

「しばらくゆっくりしていって。いっぱい話して遊んで満足したら、帰してあげるから!」

 ん? しばらく? 

「今日じゃないの? しばらくっていつ!?」

 思わず声が焦ってしまうが、エディアルドは呑気だ。

「うーん、飽きるまでかな?」

 エディアルドは人差し指を口に当て、しばし考える様子を見せるが、完全に面白がっている。

 私は絶望を感じ、テーブルに突っ伏した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない

花瀬ゆらぎ
恋愛
囚われた弟を救うため、貧民育ちのリーゼは公爵令嬢になりすまし、騎士団長シルヴィオに嫁いだ。 彼女に与えられた任務は、夫を監視すること。 結婚後、新居で待っていたのは、「氷の騎士」と恐れられる無口な夫。 しかし──戦地から帰還した彼は、別人のようにリーゼを溺愛し始めて……!? 「あなたのことを考えない日は一日たりともなかった」 次第にシルヴィオに惹かれていくリーゼ。けれど彼女は知らない。この結婚には、さらなる罠が仕掛けられていることを。 守り守られ真の夫婦を目指す恋愛ファンタジー! ※ヒロインが実家で虐げられるシリアスな展開がありますが、ヒーローによる救済・溺愛へと繋がります。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

処理中です...