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第二章 監禁生活
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「ああ、楽しいな。単にお散歩が、リゼットと一緒ならこんなに楽しいなんて」
エディアルドははしゃいだ声を出す。
「こっち、薬草園も案内してあげる」
エディアルドに手を引かれ、たどり着いた先は薬草が植えられた温室だった。
「すごい、たくさんあるのね」
中には貴重な薬草まであって、びっくりする。この薬草、シアナの病に効くかしら? きょろきょろと周囲を見回しているとエディアルドが口を開く。
「そんなに薬草に興味ある?」
「ええ、咳が出る病に効く薬草はないかしら」
「咳って……妹のため?」
エディアルドは私の家族のことまで調べあげているのだろう。なら、隠しても仕方がない。
「そうよ。療養のために別荘に来たの」
「……ふうん」
どこか面白くなさそうな声を出すエディアルドは、肩をすくめた。
「妹がいなければ、リゼットはここにずっといてくれる?」
突然の発言にギョッとして顔を見つめる。エディアルドは自分の発言を特に気にした様子はない。
「そんなこと言わないで!」
自分で思ったより、大きな声が出た。
「妹がいなければとか、例え話でも悲しくなるわ。あなただって、自分の大切な人がそう言われたら、悲しいでしょ?」
エディアルドはうつむき、じっと考え込んでいる。
「妹がいないから、よくわからないけど……。リゼットが妹を大事にしているのだけは、わかった」
少しでも気持ちが伝わってくれたらと、願わずにいられなかった。
そして夜になり、ベッドの上でエディアルドと話しているとノックがした。
開いた扉の隙間から顔を出したのはジェラールだった。
「リゼット嬢、寝室を準備したので、こちらへ」
案内しようとするジェラールの前に、エディアルドが立ちはだかる。
「なにやってんの? そんな準備なんて、しなくていいから! リゼットは一緒に寝るから」
エディアルドの勢いにジェラールは面食らった。
「正気か!? そんなことが許されるわけないだろう!? 昨夜は同じ部屋で眠ったと聞いて、信じられなかったよ!」
「いいから、ジェラールはあっちに行ってて!!」
扉の脇で二人はギャーギャーとわめき始めた。私は一人、ベッドの上にポツンと取り残されている。
一歩も引かない二人、どこで口を挟むべきかわからず、膝を抱え、傍観していた。
「ふうん、ジェラール、お前、うらやましいんだろう? だが、残念だったな、俺がリゼットと寝るんだ」
ん……?
前からちょいちょい引っかかっていたが、エディアルドは結構口が悪い。その上、自分のことを「俺」と呼んだのは、びっくりした。
そこらへんの女性よりもずっと可愛らしいのに、俺だなんてイメージが……。
ジェラールも興奮しているのか、気にした様子でもない。つまり、この呼び方が二人の間では普通なのかも。
女性として暮らすエディアルド。
薬で成長を抑えていると小説の描写ではあったが、もしかして心は男性なの……?
ううん、まさかね。
見た目はどこから見ても女の子だし、はしゃぐ姿も可愛らしいし、今のところ女性として接している。
これで中身は男性とか言われたら、困惑するだけだ。ここは、最後まで知らないふりを決め、エディアルドとは女同士の友情を築きたい。
やがてジェラールは肩を落とし、深いため息をつく。エディアルドは腕を組み、唇をかみしめている。
「エディア、君が理解するまで何度でも言う。客人と同じ部屋で寝るべきではない」
ジェラールが静かに言い聞かせるよう、淡々と口にする。
「――リゼットはどう思っているの?」
むくれるエディアルドから急に矛先を向けられ、返答に困る。
「えっ……私は……」
ちゃんと言い聞かせてくれと、ジェラールの視線から感じる圧。へそを曲げつつある、エディアルド。
ならここは――。
「私、寝相が悪いじゃない? だから別々の方がいいわ。また蹴っちゃうと悪いし!」
納得がいかない顔をしているエディアルドの横で、ジェラールはあきらかに胸をなでおろした。
「リゼット嬢、案内します。ついて来てください」
へそを曲げているエディアルドをお構いなしに、ジェラールは背を向けた。エディアルドをそのままにするのも気が引けるが、実はジェラールと話がしたかったので、ちょうどいい。
ジェラールは廊下を進むと、一室の前で立ち止まる。
「こちらになります」
「あの――私はいつ頃、帰れるのでしょうか?」
エディアルドが飽きるまでと言っていたが、いつになるのだろう。
「……思いのほか、エディアはあなたに執着している。ですが、エディアには気を付けて」
「えっ……」
どういう風に気をつければいいの!?
ジェラールは力なく、首を横に振る。
「エディアの機嫌の良い時に説得してみるので、待ってて欲しい」
まったく頼りにならないけど、彼しか頼ることができないこの状況、辛い。
そしてジェラールに別れを告げ、案内された部屋に入る。客室なのだろう、この部屋も目がくらみそうなぐらい豪華だった。
私がいなくなって二日目の夜になるけど、シアナ……元気にしているかしら。咳と発作は出ていないかな。ちゃんと薬を飲んでいるかしら。
一人になると考えるのはシアナのこと。やはり心配で気になってしまう。
――明日には帰れるだろうか。
横になるベッドが広すぎて、心細さを感じる。不安な気持ちを隠そうと、目をギュッと閉じた。
エディアルドははしゃいだ声を出す。
「こっち、薬草園も案内してあげる」
エディアルドに手を引かれ、たどり着いた先は薬草が植えられた温室だった。
「すごい、たくさんあるのね」
中には貴重な薬草まであって、びっくりする。この薬草、シアナの病に効くかしら? きょろきょろと周囲を見回しているとエディアルドが口を開く。
「そんなに薬草に興味ある?」
「ええ、咳が出る病に効く薬草はないかしら」
「咳って……妹のため?」
エディアルドは私の家族のことまで調べあげているのだろう。なら、隠しても仕方がない。
「そうよ。療養のために別荘に来たの」
「……ふうん」
どこか面白くなさそうな声を出すエディアルドは、肩をすくめた。
「妹がいなければ、リゼットはここにずっといてくれる?」
突然の発言にギョッとして顔を見つめる。エディアルドは自分の発言を特に気にした様子はない。
「そんなこと言わないで!」
自分で思ったより、大きな声が出た。
「妹がいなければとか、例え話でも悲しくなるわ。あなただって、自分の大切な人がそう言われたら、悲しいでしょ?」
エディアルドはうつむき、じっと考え込んでいる。
「妹がいないから、よくわからないけど……。リゼットが妹を大事にしているのだけは、わかった」
少しでも気持ちが伝わってくれたらと、願わずにいられなかった。
そして夜になり、ベッドの上でエディアルドと話しているとノックがした。
開いた扉の隙間から顔を出したのはジェラールだった。
「リゼット嬢、寝室を準備したので、こちらへ」
案内しようとするジェラールの前に、エディアルドが立ちはだかる。
「なにやってんの? そんな準備なんて、しなくていいから! リゼットは一緒に寝るから」
エディアルドの勢いにジェラールは面食らった。
「正気か!? そんなことが許されるわけないだろう!? 昨夜は同じ部屋で眠ったと聞いて、信じられなかったよ!」
「いいから、ジェラールはあっちに行ってて!!」
扉の脇で二人はギャーギャーとわめき始めた。私は一人、ベッドの上にポツンと取り残されている。
一歩も引かない二人、どこで口を挟むべきかわからず、膝を抱え、傍観していた。
「ふうん、ジェラール、お前、うらやましいんだろう? だが、残念だったな、俺がリゼットと寝るんだ」
ん……?
前からちょいちょい引っかかっていたが、エディアルドは結構口が悪い。その上、自分のことを「俺」と呼んだのは、びっくりした。
そこらへんの女性よりもずっと可愛らしいのに、俺だなんてイメージが……。
ジェラールも興奮しているのか、気にした様子でもない。つまり、この呼び方が二人の間では普通なのかも。
女性として暮らすエディアルド。
薬で成長を抑えていると小説の描写ではあったが、もしかして心は男性なの……?
ううん、まさかね。
見た目はどこから見ても女の子だし、はしゃぐ姿も可愛らしいし、今のところ女性として接している。
これで中身は男性とか言われたら、困惑するだけだ。ここは、最後まで知らないふりを決め、エディアルドとは女同士の友情を築きたい。
やがてジェラールは肩を落とし、深いため息をつく。エディアルドは腕を組み、唇をかみしめている。
「エディア、君が理解するまで何度でも言う。客人と同じ部屋で寝るべきではない」
ジェラールが静かに言い聞かせるよう、淡々と口にする。
「――リゼットはどう思っているの?」
むくれるエディアルドから急に矛先を向けられ、返答に困る。
「えっ……私は……」
ちゃんと言い聞かせてくれと、ジェラールの視線から感じる圧。へそを曲げつつある、エディアルド。
ならここは――。
「私、寝相が悪いじゃない? だから別々の方がいいわ。また蹴っちゃうと悪いし!」
納得がいかない顔をしているエディアルドの横で、ジェラールはあきらかに胸をなでおろした。
「リゼット嬢、案内します。ついて来てください」
へそを曲げているエディアルドをお構いなしに、ジェラールは背を向けた。エディアルドをそのままにするのも気が引けるが、実はジェラールと話がしたかったので、ちょうどいい。
ジェラールは廊下を進むと、一室の前で立ち止まる。
「こちらになります」
「あの――私はいつ頃、帰れるのでしょうか?」
エディアルドが飽きるまでと言っていたが、いつになるのだろう。
「……思いのほか、エディアはあなたに執着している。ですが、エディアには気を付けて」
「えっ……」
どういう風に気をつければいいの!?
ジェラールは力なく、首を横に振る。
「エディアの機嫌の良い時に説得してみるので、待ってて欲しい」
まったく頼りにならないけど、彼しか頼ることができないこの状況、辛い。
そしてジェラールに別れを告げ、案内された部屋に入る。客室なのだろう、この部屋も目がくらみそうなぐらい豪華だった。
私がいなくなって二日目の夜になるけど、シアナ……元気にしているかしら。咳と発作は出ていないかな。ちゃんと薬を飲んでいるかしら。
一人になると考えるのはシアナのこと。やはり心配で気になってしまう。
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