21 / 63
第二章 監禁生活
20
しおりを挟む
「ああ、楽しいな。単にお散歩が、リゼットと一緒ならこんなに楽しいなんて」
エディアルドははしゃいだ声を出す。
「こっち、薬草園も案内してあげる」
エディアルドに手を引かれ、たどり着いた先は薬草が植えられた温室だった。
「すごい、たくさんあるのね」
中には貴重な薬草まであって、びっくりする。この薬草、シアナの病に効くかしら? きょろきょろと周囲を見回しているとエディアルドが口を開く。
「そんなに薬草に興味ある?」
「ええ、咳が出る病に効く薬草はないかしら」
「咳って……妹のため?」
エディアルドは私の家族のことまで調べあげているのだろう。なら、隠しても仕方がない。
「そうよ。療養のために別荘に来たの」
「……ふうん」
どこか面白くなさそうな声を出すエディアルドは、肩をすくめた。
「妹がいなければ、リゼットはここにずっといてくれる?」
突然の発言にギョッとして顔を見つめる。エディアルドは自分の発言を特に気にした様子はない。
「そんなこと言わないで!」
自分で思ったより、大きな声が出た。
「妹がいなければとか、例え話でも悲しくなるわ。あなただって、自分の大切な人がそう言われたら、悲しいでしょ?」
エディアルドはうつむき、じっと考え込んでいる。
「妹がいないから、よくわからないけど……。リゼットが妹を大事にしているのだけは、わかった」
少しでも気持ちが伝わってくれたらと、願わずにいられなかった。
そして夜になり、ベッドの上でエディアルドと話しているとノックがした。
開いた扉の隙間から顔を出したのはジェラールだった。
「リゼット嬢、寝室を準備したので、こちらへ」
案内しようとするジェラールの前に、エディアルドが立ちはだかる。
「なにやってんの? そんな準備なんて、しなくていいから! リゼットは一緒に寝るから」
エディアルドの勢いにジェラールは面食らった。
「正気か!? そんなことが許されるわけないだろう!? 昨夜は同じ部屋で眠ったと聞いて、信じられなかったよ!」
「いいから、ジェラールはあっちに行ってて!!」
扉の脇で二人はギャーギャーとわめき始めた。私は一人、ベッドの上にポツンと取り残されている。
一歩も引かない二人、どこで口を挟むべきかわからず、膝を抱え、傍観していた。
「ふうん、ジェラール、お前、うらやましいんだろう? だが、残念だったな、俺がリゼットと寝るんだ」
ん……?
前からちょいちょい引っかかっていたが、エディアルドは結構口が悪い。その上、自分のことを「俺」と呼んだのは、びっくりした。
そこらへんの女性よりもずっと可愛らしいのに、俺だなんてイメージが……。
ジェラールも興奮しているのか、気にした様子でもない。つまり、この呼び方が二人の間では普通なのかも。
女性として暮らすエディアルド。
薬で成長を抑えていると小説の描写ではあったが、もしかして心は男性なの……?
ううん、まさかね。
見た目はどこから見ても女の子だし、はしゃぐ姿も可愛らしいし、今のところ女性として接している。
これで中身は男性とか言われたら、困惑するだけだ。ここは、最後まで知らないふりを決め、エディアルドとは女同士の友情を築きたい。
やがてジェラールは肩を落とし、深いため息をつく。エディアルドは腕を組み、唇をかみしめている。
「エディア、君が理解するまで何度でも言う。客人と同じ部屋で寝るべきではない」
ジェラールが静かに言い聞かせるよう、淡々と口にする。
「――リゼットはどう思っているの?」
むくれるエディアルドから急に矛先を向けられ、返答に困る。
「えっ……私は……」
ちゃんと言い聞かせてくれと、ジェラールの視線から感じる圧。へそを曲げつつある、エディアルド。
ならここは――。
「私、寝相が悪いじゃない? だから別々の方がいいわ。また蹴っちゃうと悪いし!」
納得がいかない顔をしているエディアルドの横で、ジェラールはあきらかに胸をなでおろした。
「リゼット嬢、案内します。ついて来てください」
へそを曲げているエディアルドをお構いなしに、ジェラールは背を向けた。エディアルドをそのままにするのも気が引けるが、実はジェラールと話がしたかったので、ちょうどいい。
ジェラールは廊下を進むと、一室の前で立ち止まる。
「こちらになります」
「あの――私はいつ頃、帰れるのでしょうか?」
エディアルドが飽きるまでと言っていたが、いつになるのだろう。
「……思いのほか、エディアはあなたに執着している。ですが、エディアには気を付けて」
「えっ……」
どういう風に気をつければいいの!?
ジェラールは力なく、首を横に振る。
「エディアの機嫌の良い時に説得してみるので、待ってて欲しい」
まったく頼りにならないけど、彼しか頼ることができないこの状況、辛い。
そしてジェラールに別れを告げ、案内された部屋に入る。客室なのだろう、この部屋も目がくらみそうなぐらい豪華だった。
私がいなくなって二日目の夜になるけど、シアナ……元気にしているかしら。咳と発作は出ていないかな。ちゃんと薬を飲んでいるかしら。
一人になると考えるのはシアナのこと。やはり心配で気になってしまう。
――明日には帰れるだろうか。
横になるベッドが広すぎて、心細さを感じる。不安な気持ちを隠そうと、目をギュッと閉じた。
エディアルドははしゃいだ声を出す。
「こっち、薬草園も案内してあげる」
エディアルドに手を引かれ、たどり着いた先は薬草が植えられた温室だった。
「すごい、たくさんあるのね」
中には貴重な薬草まであって、びっくりする。この薬草、シアナの病に効くかしら? きょろきょろと周囲を見回しているとエディアルドが口を開く。
「そんなに薬草に興味ある?」
「ええ、咳が出る病に効く薬草はないかしら」
「咳って……妹のため?」
エディアルドは私の家族のことまで調べあげているのだろう。なら、隠しても仕方がない。
「そうよ。療養のために別荘に来たの」
「……ふうん」
どこか面白くなさそうな声を出すエディアルドは、肩をすくめた。
「妹がいなければ、リゼットはここにずっといてくれる?」
突然の発言にギョッとして顔を見つめる。エディアルドは自分の発言を特に気にした様子はない。
「そんなこと言わないで!」
自分で思ったより、大きな声が出た。
「妹がいなければとか、例え話でも悲しくなるわ。あなただって、自分の大切な人がそう言われたら、悲しいでしょ?」
エディアルドはうつむき、じっと考え込んでいる。
「妹がいないから、よくわからないけど……。リゼットが妹を大事にしているのだけは、わかった」
少しでも気持ちが伝わってくれたらと、願わずにいられなかった。
そして夜になり、ベッドの上でエディアルドと話しているとノックがした。
開いた扉の隙間から顔を出したのはジェラールだった。
「リゼット嬢、寝室を準備したので、こちらへ」
案内しようとするジェラールの前に、エディアルドが立ちはだかる。
「なにやってんの? そんな準備なんて、しなくていいから! リゼットは一緒に寝るから」
エディアルドの勢いにジェラールは面食らった。
「正気か!? そんなことが許されるわけないだろう!? 昨夜は同じ部屋で眠ったと聞いて、信じられなかったよ!」
「いいから、ジェラールはあっちに行ってて!!」
扉の脇で二人はギャーギャーとわめき始めた。私は一人、ベッドの上にポツンと取り残されている。
一歩も引かない二人、どこで口を挟むべきかわからず、膝を抱え、傍観していた。
「ふうん、ジェラール、お前、うらやましいんだろう? だが、残念だったな、俺がリゼットと寝るんだ」
ん……?
前からちょいちょい引っかかっていたが、エディアルドは結構口が悪い。その上、自分のことを「俺」と呼んだのは、びっくりした。
そこらへんの女性よりもずっと可愛らしいのに、俺だなんてイメージが……。
ジェラールも興奮しているのか、気にした様子でもない。つまり、この呼び方が二人の間では普通なのかも。
女性として暮らすエディアルド。
薬で成長を抑えていると小説の描写ではあったが、もしかして心は男性なの……?
ううん、まさかね。
見た目はどこから見ても女の子だし、はしゃぐ姿も可愛らしいし、今のところ女性として接している。
これで中身は男性とか言われたら、困惑するだけだ。ここは、最後まで知らないふりを決め、エディアルドとは女同士の友情を築きたい。
やがてジェラールは肩を落とし、深いため息をつく。エディアルドは腕を組み、唇をかみしめている。
「エディア、君が理解するまで何度でも言う。客人と同じ部屋で寝るべきではない」
ジェラールが静かに言い聞かせるよう、淡々と口にする。
「――リゼットはどう思っているの?」
むくれるエディアルドから急に矛先を向けられ、返答に困る。
「えっ……私は……」
ちゃんと言い聞かせてくれと、ジェラールの視線から感じる圧。へそを曲げつつある、エディアルド。
ならここは――。
「私、寝相が悪いじゃない? だから別々の方がいいわ。また蹴っちゃうと悪いし!」
納得がいかない顔をしているエディアルドの横で、ジェラールはあきらかに胸をなでおろした。
「リゼット嬢、案内します。ついて来てください」
へそを曲げているエディアルドをお構いなしに、ジェラールは背を向けた。エディアルドをそのままにするのも気が引けるが、実はジェラールと話がしたかったので、ちょうどいい。
ジェラールは廊下を進むと、一室の前で立ち止まる。
「こちらになります」
「あの――私はいつ頃、帰れるのでしょうか?」
エディアルドが飽きるまでと言っていたが、いつになるのだろう。
「……思いのほか、エディアはあなたに執着している。ですが、エディアには気を付けて」
「えっ……」
どういう風に気をつければいいの!?
ジェラールは力なく、首を横に振る。
「エディアの機嫌の良い時に説得してみるので、待ってて欲しい」
まったく頼りにならないけど、彼しか頼ることができないこの状況、辛い。
そしてジェラールに別れを告げ、案内された部屋に入る。客室なのだろう、この部屋も目がくらみそうなぐらい豪華だった。
私がいなくなって二日目の夜になるけど、シアナ……元気にしているかしら。咳と発作は出ていないかな。ちゃんと薬を飲んでいるかしら。
一人になると考えるのはシアナのこと。やはり心配で気になってしまう。
――明日には帰れるだろうか。
横になるベッドが広すぎて、心細さを感じる。不安な気持ちを隠そうと、目をギュッと閉じた。
190
あなたにおすすめの小説
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています
廻り
恋愛
治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。
その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。
そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。
後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。
本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
最終回まで予約投稿済みです。
毎日8時・20時に更新予定です。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる