妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

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第二章 監禁生活

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 窓辺から鳥のさえずりが聞こえる。
 薄っすらと瞼を開けると、天使の描かれた天井が視界に入る。

 ああ、昨夜、私は客間に案内されたんだっけ……。

 ボーッとした頭で考えつつ、顔を横に向けると、そこにも天使がいた。
 長いまつげに白い肌、スースーと呼吸すると上下する胸に、少しだけ開けた赤い唇。

 ジェラールにあれだけ怒られてたのに……。夜中に忍び込んだみたいだ。
 じっくりと観察をするが、本当にこれで男だなんて、信じられないわ。

 でも、もしかしたら――。女性かもしれないじゃない。小説と違う場合もあるだろうし。

 エディアルドを起こさないようにベッドから下りようとすると、腰に腕が回され、背後から抱きしめられた。

「おはよう、リゼット……」

 ギュッと腰にまとわりつくが、寝ぼけているのか。

「おはよう、エディア。忍び込んだのね」
「うん……うるさいジェラールの言うことなんて、聞いちゃいられない」

 半分夢の中にいながらも、文句を言ってくる。

「リゼット、いい匂い」

 顔を耳元に近づけてきたのでくすぐったくて、ひゃあっと驚く。

「もう、起きましょう」

 変なの私、ドキドキすることなんてないのに。単に友情のスキンシップじゃない。
 まだベッドに横になるエディアルドを残し、先に身支度を始めた。

 そして今日もエディアルドの希望で双子コーデだ。よほど気に入ったらしい。

 クラシカルで、袖や袖口にたっぷりのフリルがついた色違いのワンピースをエディアルドが出してきた。襟元もフリルがたっぷりで、可愛らしい印象のワンピースに身を包む私を見たエディアルドは、満足そうに笑う。

 そしてまた庭園を散歩していると、水の流れる音が聞こえて顔を上げた。
 耳を澄ましていると、エディアルドは私の手を引いて歩く。
 連れていかれた先には小川があり、綺麗な水が流れていた。まさか、屋敷の中に川があるなんて……。広大な敷地に今さらながら、びっくりする。

 大きな石がオブジェになり、その間を水が流れている。手をひたすと、冷たくて気持ち良かった。不意に風が吹き、被っていた帽子が飛び、川に落ちてしまった。

「あっ……」
「いいよ。帽子ぐらい。行こう」

 エディアルドは気にしないように言うが、そんなわけにいかない。川といっても観賞用に作った人工的な川なので浅いはずだ。よく見ると小さな魚が泳いでいる。

 私は靴を脱ぐと、不安そうに見守るエディアルドに大丈夫と告げ、帽子を取りに行く。

 水に浸した足が気持ちよいと思いながら進み、無事に帽子を拾い上げる。エディアルドに向かって帽子を振った。

「早く戻っておいでよ、リゼット」

 心配そうに声をかけるエディアルドのもとに戻ろうと足を進めた時、岩場に足が滑ってしまう。

「きゃっ!」

 そのまま体制を崩し、水のなかに尻もちをついた。

「リゼットっ!」

 焦ったエディアルドが濡れるのも気にせず、私に駆け寄ってきた。どうせ、ここまで濡れてしまったのなら――。

「えいっ!」

 私は手で水を救うと、エディアルドへかけた。一瞬、エディアルドはなにが起きたのかわからなかったようで、目をぱちくりとさせた。そして続いてもう一回、水をかけた。

「リゼット! 人を心配させて!!」

 エディアルドも水をすくっては、私に向かってかけてくるので、私もお返しとばかりに水をかけた。

 なにがそんなに面白いのだろうというぐらい、エディアルドと二人で笑いながら水をかけあった。全身ぐっしょり濡れている。

 やがてお互い体力が尽きたのか、肩で息をして見つめあう。
 私たちは、子供みたいな遊びに、なぜこんなにも夢中になっているのだろうか。

「リゼット、ずぶ濡れだ」
「そっちこそ」

 私たちは声を出して笑いだす。
 晴れた空の下、見る人が見たら、異様な光景かもしれないが、とても楽しかった。

 そのまま散歩を続行するわけにいかないので、屋敷に戻ることにした。
 私たちを見たジェラールはなにごとかと心配したが、水遊びの結果だと告げると、すぐに呆れを含んだ態度に変わる。

 まずは着替えることにし、エディアルドと別れた。
 あ、また双子コーデにするのかな? 確認しなくちゃ。

 別れたばかりのエディアルドの着替えている部屋の扉を開けた。

「着替えの服って――」

 そこで視界に入った光景に息をのんだ。

 綺麗な髪を一つにまとめ、上半身ドレスを脱いだエディアルドがいた。

 その上半身には胸のふくらみがなく、平坦。細身だが筋肉もあり、どこから見ても男性だった。
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