妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
27 / 63
第二章 監禁生活

26

しおりを挟む
 ゆっくりと瞼を開けるとあたり一面は闇に包まれていた。自身の体さえ、どこにあるのかわからない。

 体は存在せず、意識だけが闇に落ちてしまったような感覚。
 だが背後に感じる気配に、息をのむ。

 ――なにか、いる。

 怖くて振り返ることもできない。たが、今にも私を飲み込もうとしているのを感じる。

 大型動物に耳元でハッハッと吐息を聞かされているような心境になり、鳥肌の立つ感覚に、ごくりと息をのむ。
 真っ暗闇の中、出口が見えない。この闇に溶けて同化してしまうような気がした時、目の前のずっと先に、フッと光が見えた。

 ――あれだ!!

 私は光の方へ駆け出した。ただ、真っすぐに光のある方を目指す。
 耳元で気配が感じるが消えてはくれない。それどころか、徐々に距離を詰め、今にも私を獲って食べそうな勢いだ。足がすくみそうになるが、立ち止まってはいけない。

 やがて光のゴールが近づき、安堵する。

 徐々に闇が近づいてくる感覚に、今さらながら、足がガクガクときた。しまった、ゴールが近くなったことで、気が緩んでしまった。

「あっ!!」

 肝心なところで足がもつれ、転んでしまう。

 モウオシマイダネ――

 闇が勝利を確認し、あざ笑うような声が聞こえた。
 嫌よ、私は家に帰るのだから――!

 唇をグッと噛みしめ立ち上がり、再び足を動かした時、右腕にヒヤリとした感覚がある。

 ――捕まってしまう!!

 全身に鳥肌が立つと同時に反射的に顔を伏せた。だが、次の瞬間、周囲をまばゆい光が包む。

 そこに現れたのは大きな光の輝きだった。
 私の背後にいるなにかが、ひるんだのを感じた。

 ――今だ!

 私はチャンスを逃さす、光の方向へと飛び込んだ瞬間、左手の薬指が熱くなった。

 薄れゆく意識の中、私に光の精霊の加護を預けた夢の中の女性が、優しく微笑んだ気がした――。

 ゆっくりと瞼を開けると、エディアルドが苦渋の表情を浮かべ、側で立ち尽くしていた。

「どうして――」

 絞りだす声は、自分が負けたとは信じがたい様子だった。

「私の勝ちね」

 私はエディアルドに向かって声をかけた。だが全身に力が入らない。
 もしかしたら精霊の加護を使いすぎてしまったのかな。夢と現実ともつかない世界を全力で走って、とても疲れている。

 ダメだ、瞼を開けていられない。私は意識を手放した。

 ***

 次に目を開けると周囲は明るくなっていた。
 もしかしてもう朝なのだろうか。部屋に日差しが入り込んでいる。私はあのまま、ずっと眠り続けたのだろうか。

「リゼット……」

 ベッド脇からエディアルドがガバッと身を起こした。もしかして一晩中、ついていてくれたの? エディアルドの美しい顔にクマが浮かんでいるので、きっとそうなのだろう。

「心配かけてごめんね」

 エディアルドの頬にそっと触れると柔らかく微笑み、私の手に頬ずりした。

「良かった、すごく心配した」

 私の感触を確かめるように、手を握る。

「朝食を食べましょうか」

 いつも通りの私にエディアルドはホッとしたようで、準備してくると告げ、部屋から出ていく。今日でお別れなのだから、笑顔で別れると決めていたのだ。

 ***

「嫌だ。絶対に嫌」

 エディアルドと向かい合い、穏やかな雰囲気の中で朝食を食べ終えた。勝負にも勝ったし、穏便に帰れると思っていた。だが、エディアルドの様子が豹変したのは、朝食後のデザートを食べていた時。

 そう、私が帰ると言い出してからだ。

「エディア、いい加減にしろ」

 様子を見守っていたジェラールが仲裁に入る。

「そこまで頑なな態度はどうしたんだ。お前は一人の人間の人生を奪うことになるんだぞ」

 強い口調で叱責するがエディアルドは無言だ。

「自我を貫くのもいい加減にしろ! リゼット嬢に嫌われてもいいのか!?」

 そこでエディアルドの顔に動揺が走る。目を大きく見開いたのち、すごい勢いで顔を向ける。

「――俺がこんな姿だから嫌だったの……?」

 大きな目が潤み、今にも泣きだしそうにクシャリとゆがむ。
 エディアルドは綺麗にまとめた髪を、かきむしり始めた。

「もう、やめてやる! こんな姿、俺じゃない!!」

 低い声は完全に男性のものだ。

「やめろ、エディア!!」
「俺がこんな恥ずかしい格好だから、リゼットは俺から去っていくんだ」

 それは魂の叫びのようにも聞こえた。

 今の姿は本人が望んだわけじゃない。五大属性の精霊の加護を抑えているのだってそうだ。性別も精霊の加護も、すべて封じられている。

 部屋に禍々しい空気が立ち込め始める。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...