妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

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第二章 監禁生活

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 さわさわと心地よい風が頬をくすぐる。

 うっすらと目を開けると、少し窓の開いた部屋に寝かされていることに気づく。

 ここは――どこだろう。

 白いカーテンに白いシーツ、壁紙も白い。清潔感のある白を基調とした部屋に、寝かされていた。

 右腕を動かすと、少し痛みが走り、顔をしかめた。
 視線を向けると肩から右腕にかけて、白い包帯がグルグルと巻かれていた。

 私はエディアルドの暴走に巻き込まれ、ケガを――。
 その時、扉がノックされ、一人の女性が入室してきた。

「良かった、目を覚ましたみたいね」

 女性は優しく微笑むとテキパキと動き始めた。

「あの、ここは……」
「ここは魔法治療師の治療室よ。あなた、覚えていないみたいね」

 私がうなずくと、助手だと名乗った女性は丁寧に説明してくれた。

「肩から右腕にかけて鋭利な刃物で切られたみたいに、傷がついていたの。こうスパッとね」

 女性はどのぐらいの傷だったのか、教えてくれた。

「血が大量に出ていたから、驚いて貧血を起こしたのね。そりゃあ、あれだけの出血を見たら、無理もないわ。すぐさま治療したから、もう大丈夫よ。今は少し痛むかもしれないけど、傷跡は消えるはず。マゴス先生の腕は確かよ。魔法治療師マゴス・ティラーといえば、この国で一番有名よ」

 そうか、ジェラールがここまで運んでくれたのだろう。

「治療をして二日ほど眠っていたかしら。良くなるまで、もう少し休んで行ってね」
「二日……」

 そんなに時間がたっていたなんて、それほど重傷だったということだろう。

「すみません。今すぐ帰ります」

 目覚めたのなら、一刻も早く帰りたい。知らない場所は落ち着かないから。私はベッドから起き上がる。

「それであの――お代は……」

 魔法治療師なんて、普通は王族しか使えない特別だ。値段はどのぐらいになるのだろう。
 助手の女性は優しく微笑む。

「いえ、それはもうもらっているから大丈夫。それよりも――」

 女性は胸ポケットからずっしりと中身の詰まった重そうな袋を取り出し、私に手渡す。

「これを渡すように言われていたわ」

 中を開けると金貨がびっしり入っていた。

 うそっ、こんなに……。
 その中に一枚のメッセージカードも入っていた。金貨は帰路の旅費にしてほしいと書かれていた。きっとジェラールの気遣いなのだろう。

 私は助手の女性にお礼を言うと、魔法治療師のもとを去ることにした。
 助手の女性はもう少し様子を見た方がいいと私を引き止めたが、頑として首を縦にふらなかった。

 心配している家族のもとへ早く帰らなければと、心は焦っていた。
 傷跡はしばらく痛むかもしれないが、いつか消えるとのことだった。しばらくは包帯を変えるよう言われ、包帯など一式をいただいた。

 そして私は久々に別荘、シアナのもとへ戻った。

 別荘に戻った私は案の定、シアナにこってり怒られ、心配され、泣かれ……大変だった。

 これで腕の包帯のこと言ったら、ますます心配させちゃうから、秘密だな。ブラウスの上からそっと包帯に触れた。泣きじゃくるシアナを抱きしめながら、ようやく戻ってきたのだと実感した。

 屋敷に戻って二週間が過ぎたころ、私に来客があった。

「こちらへどうぞ、ジェラール様」

 正直もう会いたくはなかったが、わざわざ訪ねてきたのだ、追い返すわけにもいかない。客間に案内し、向かい合って座る。

「リゼット嬢、今回の件は申し訳なかった」

 ジェラールが深々と頭を下げるが、彼に謝罪されても仕方がないことだ。幸い、傷はすっかり完治して跡形もない。魔法治療師の実力に感心していたところだ。

「今回の件はカーライル公爵の耳にも入った。それでこれを――」

 ジェラールは胸元からスッと一枚の紙きれを出した。それは小切手だった。目玉が飛び出しそうになるぐらいの金額が書かれていて、腰を抜かすかと思った。

「こんなにいただけません」
「いや、受け取ってくれ。女性に傷を負わせてしまったことをカーライル公爵も深くお詫びしていた」

 ジェラールは静かに両手を組む。

「これには口止め料も入っている」

 心配せずとも口外はしないつもりだと、うなずいた。
 それにしても莫大な金額で頭がクラクラする。本当にもらってもいいのだろうか。
 半ば強引にジェラールに押し付けられ、受け取ることにした。

「あと――これを」

 ジェラールがテーブルの上に置いたのは、細工が綺麗な宝石箱だった。
 これはエディアルドの宝物だったはず。ジェラールの了解を得て蓋を開けると、宝石がたくさん詰まっていた。

「これは受け取れません」

 どういう意図だろうと考えるが、謝罪のつもりなのかもしれない。
 だが、エディアルドが宝物だと言っていたのに、受け取れない。

「もらってくれ。でないと、君から拒絶されたと感じるだろう」

 拒絶と聞き、胸にドクッとさざ波が立つ。宝石箱を前にして、しばし考え込む。

「じゃあ、これだけ渡してもらえませんか?」

 私がジェラールに手渡したのは、緑の宝石のエメラルド。エディアルドが一番大事にしていると言っていた。せめて、これだけでも返したい。

「――今はどうしていますか?」

 どちらともなく切り出すことのなかった話題を、私から口にする。ジェラールは首を大きく横にふった。
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