妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
33 / 63
第三章 再会

32

しおりを挟む
 エディアルドが男になった? いや、違う、元から男だったが、男性として生きていくと決意したってこと?

 それに第三王子として認められたということは、王位継承権を得たということ。エディアルドの祖父はカーライル公爵なので、立場的にも申し分ない。

 だが、カーライル公爵はエディアルドが表に出ることを認めたのだろうか。
 小説とは違う展開に先が読めない。 

 エディアルドは堂々と立ち、周囲をぐるりと見まわす。

「このたび紹介にあった、エディアルド・カーライル・ロバール、この五大属性の精霊の加護をすべてのロバールの民のために使うと、ここに誓おう!」

 ワイングラスを大きく手に掲げた。

 周囲からは歓声が上がり、視線をその身に集めている。持って生まれた王者の気品なのか、皆の視線を引きつけてやまない。

 ふと国王から少し離れた場所で浮かない表情を浮かべているのは、王妃だ。
 王妃には息子が二人いて、どちらも精霊の加護はなく、ポッと出のエディアルドにこれだけ注目されては、そりゃあ、面白くはないだろう。それに王妃の息子、第一王子は気弱で覇気がなく、第二王子は軽薄で賭博などに溺れていると、もっぱらの噂だ。

 ――これは王宮に嵐が吹き荒れそうだ。

 嫌な予感がして身震いをした。
 苦い顔をしている王妃とその息子たちとは対照的に、華やかにスポットライトを浴びているエディアルド。

 その隣にはジェラールが控えているのも確認できた。彼は腹心としてエディアルドを支えていくのだろう。

 しかしエディアルドは、とんでもなく魅力的に成長したものだ。女の子の格好をしていた時から、美少女だとは思っていたが、男性になったら神々しいまでの美貌を周囲に見せつけている。

 小説では闇が多いヤンデレな様子だったが、華やかな表舞台を歩くのなら、きっと性格も変わったのだろう。小説のようなルートはたどらないと思えた。

 もしかして私が関わったことで、展開が変わってしまったのだろうか。だって、こんなルートはなかったもの。

 あと、一つだけ心配なことがある。杞憂かもしれないが、シアナのこと。

 小説の中であれだけ執着したのだから。今、二人は出会ってしまったら、また展開が変わってしまうかもしれない。それこそ、今世でもシアナに執着しないとは言い切れない。

 やはり、シアナとエディアルドは会わせないほうがいいだろう。

 エディアルドの周囲には早くも人が群がり始めている。貴族たちは第三王子がどんな人物が見極めようとしているのか、はたまた取り込もうと目論んでいるのか。ちゃっかりアリッサも近くにいて、彼の視界に入ろうと必死になっていた。さすが、行動の早いことで。

 なんにせよ、私には関係のないことだ。権力争いなどにも、巻き込まれるわけにはいかない。今日はシアナを連れて帰ろう。

 壁際から離れ、きらびやかな集団に背を向ける。ちょうど、ダンスの始まりを告げる音楽が流れ始めた。

 フッと広間を見ると、ぱっちりと目が合った――。エディアルドと。

 彼は周囲の人々に声をかけられているのも気にせず、その場を離れた。そしてあろうことか、こちらに向かって歩き出した。

 えっ、なになに!? どうしたの? まさか、私のもとへ向かっているとか、言わないわよね。

 エディアルドから真っすぐな視線を投げかけられ、思考が停止する。ただ黙って彼が近づいてくるのを、目を見開き固まっていた。

 やがてすぐ近く、手を伸ばせば容易に届く距離にまで来た。
 エディアルドは端正な顔立ちに、爽やかな微笑みを浮かべた。

「リゼット」

 私は返事をするべきなのだろうが、言葉が見つからず、ただ彼を見つめた。首元が視界に入ると、エディアルドの胸元を飾っているクラバットについている宝石は、緑色のエメラルドだと気づく。

 あれは――私がエディアルドに返した宝石かもしれない。私の瞳と同じ色だから一番気に入っていると言っていた――。

「踊ろう」

 サッと差し出された手を躊躇するが、皆が見守る中、取らないのは失礼だ。深々と頭を下げたあと、差し出された手を重ねた。

 途端、グッと強く手を握られたと思ったら、指を絡められた。
 エディアルドは膝をつき、私の左手の甲に口づけを落とす。

 真っ赤になった私に優しく微笑むと、立ち上がってリードして広間の中央へ移動した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...