40 / 63
第三章 再会
39
しおりを挟む
気づけば執事や使用人が、静かに見守っているが、恥ずかしすぎる。
彼の腕から逃れ、距離を取る。
「来週の狩猟祭はリゼットも出席するだろう?」
「行く予定だけど……」
この時期、狩猟祭が開催される。
豊穣の女神に捧げるため、、腕に自信のある者は狩りに出て獲物を仕留めてくる。狩りに参加せずとも、男性が狩りに出ている間、美味しいお菓子や紅茶を囲みながら帰りを待っていた。
毎年、父が参加していたから、シアナと共に帰りを待っていた。
「今年は俺も出るんだ。じゃあ、会場でまた会おう」
にこにこと笑顔を見せるエディアルドに別れを告げ、馬車に乗り込んだ。
エ、エディアルドってば――。どうしちゃったの。
馬車に乗り込んだ途端、真っ赤になった顔を伏せた。
男性としての人生を取り戻したのは、私のため、とか言ってたけど、正気なの!?
私が介入したせいで大きくエディアルドの運命が狂ってしまったのだろうか。
小説と違ってシアナには興味を示さないが、その分、私に執着している。おまけに私に浮いた話が出なかったのが、まさか指輪のせいだったなんて――。
もしかして、私がエディアルドを振り切らなければ、一生このまま、出会いはなしということ!?
あきらめて、責任を取れということなのだろうか。
小説の展開とは別の方向にそれぞれが歩みだし、未来は誰にもわからない。
私は馬車の中で頭を抱えた。
***
「お父さま、無理はしないで、頑張ってね」
「ああ、任せておけ。豊穣の女神も驚くぐらいの獲物を捧げないとな」
「まあ、毎年ウサギの一匹も獲れたことがないじゃないですか」
毎年狩猟祭に参加している父を応援するため、私とシアナも会場に来ていた。
開催場所はローデンコートの森だ。ここは王族が管理している土地で、年に一度、この祭りの時だけ解放される。
緑に囲まれて、快晴の空に吹く風は、とても心地よい。
貴族たちが出発準備を進める中、ふと第一王子であるケルビン様が登場した。王妃が隣に付き添っているが、浮かない顔をしている。
「第一王子のケルビン様、無理もない。あのお方は本を読むことを好む学者肌なのだから、狩りなどは苦手だろうに。第二王子に至っては賭博場に入り浸りで、行事に顔すら出す気がないようだ」
「だが、ここら辺で周囲に存在をアピールしておかねば、なぜなら――」
貴族たちがヒソヒソと噂話をする中、背後から声がかかった。
「リゼット」
そこにいたのはラフなシャツに弓を手にしたエディアルドだった。私に向かって笑顔で近づいてくると、シアナが父に耳打ちをした。
「エディアルド様だわ」
「なにっ!?」
真っ先に父が反応し、深々と頭を下げる。
「エディアルド様、リゼットとシアナの父でございます。先日は我が娘、シアナのためにありがとうございました
」
丁寧な礼を取る父にエディアルドは優しく手を差し伸べる。
「いえ、リゼットの大事な方なら、自分にとっても大事なので」
にっこり微笑むエディアルドに父が目を丸くした。これはいけない雰囲気だ、それに周囲の人の目もある。
「おっ、お父さま! そろそろ出発の時ですわ、向こうに集まっていますわよ!!」
早く行けと言わんばかりに、背中をグイグイと押した。
エディアルドは笑っているが、あなたも早く行きなさいっていうの!
「リゼット、どんな獲物が欲しい?」
首を傾げてくるが、獲物は豊穣の女神に捧げるはずだ。私自身はなにもいらないと告げた。
「欲がないな」
笑いながらエディアルドも出発点を目指した。
「さっ、私たちはお茶して待っていましょう」
シアナを誘って、テントが設置してある方向へ向かった。
「そろそろ戻ってくる頃かしらね」
シアナと話し込んでいたが、顔を上げた。
ポツポツと参加者たちが獲物を片手に戻ってきていたからだ。
その時、遠くから歩いてくる父の姿を見つける。肩を落としてしょげているのが遠目からでもわかったので、私とシアナは顔を見合わせて笑う。
「今年もダメだったみたいね」
「そうね、残念ね」
その背後から歩いてきたのは、エディアルドだった。彼もまた手に何も持っておらず、手ぶらだった。
だが、よく目を凝らしてみるとシャツが鮮血に染まっている。
まさかケガをしたの!?
驚いてすぐに立ち上がると、椅子がガタッと音を出した。
不安になって凝視するが、彼はいつもと変わらぬ表情で、すたすたと歩いている。どこもケガした様子は見られない。
まさか、あれは返り血を浴びたの?
いったい、どんな獲物を仕留めたというのだろう。そもそもここは王族が管理している土地であり、危険な動物は生息していないはずだ。
たまらず心配になり、エディアルドに近づこうとした。全身に返り血を浴びたエディアルドは私に気づき、顔を上げた。
彼の腕から逃れ、距離を取る。
「来週の狩猟祭はリゼットも出席するだろう?」
「行く予定だけど……」
この時期、狩猟祭が開催される。
豊穣の女神に捧げるため、、腕に自信のある者は狩りに出て獲物を仕留めてくる。狩りに参加せずとも、男性が狩りに出ている間、美味しいお菓子や紅茶を囲みながら帰りを待っていた。
毎年、父が参加していたから、シアナと共に帰りを待っていた。
「今年は俺も出るんだ。じゃあ、会場でまた会おう」
にこにこと笑顔を見せるエディアルドに別れを告げ、馬車に乗り込んだ。
エ、エディアルドってば――。どうしちゃったの。
馬車に乗り込んだ途端、真っ赤になった顔を伏せた。
男性としての人生を取り戻したのは、私のため、とか言ってたけど、正気なの!?
私が介入したせいで大きくエディアルドの運命が狂ってしまったのだろうか。
小説と違ってシアナには興味を示さないが、その分、私に執着している。おまけに私に浮いた話が出なかったのが、まさか指輪のせいだったなんて――。
もしかして、私がエディアルドを振り切らなければ、一生このまま、出会いはなしということ!?
あきらめて、責任を取れということなのだろうか。
小説の展開とは別の方向にそれぞれが歩みだし、未来は誰にもわからない。
私は馬車の中で頭を抱えた。
***
「お父さま、無理はしないで、頑張ってね」
「ああ、任せておけ。豊穣の女神も驚くぐらいの獲物を捧げないとな」
「まあ、毎年ウサギの一匹も獲れたことがないじゃないですか」
毎年狩猟祭に参加している父を応援するため、私とシアナも会場に来ていた。
開催場所はローデンコートの森だ。ここは王族が管理している土地で、年に一度、この祭りの時だけ解放される。
緑に囲まれて、快晴の空に吹く風は、とても心地よい。
貴族たちが出発準備を進める中、ふと第一王子であるケルビン様が登場した。王妃が隣に付き添っているが、浮かない顔をしている。
「第一王子のケルビン様、無理もない。あのお方は本を読むことを好む学者肌なのだから、狩りなどは苦手だろうに。第二王子に至っては賭博場に入り浸りで、行事に顔すら出す気がないようだ」
「だが、ここら辺で周囲に存在をアピールしておかねば、なぜなら――」
貴族たちがヒソヒソと噂話をする中、背後から声がかかった。
「リゼット」
そこにいたのはラフなシャツに弓を手にしたエディアルドだった。私に向かって笑顔で近づいてくると、シアナが父に耳打ちをした。
「エディアルド様だわ」
「なにっ!?」
真っ先に父が反応し、深々と頭を下げる。
「エディアルド様、リゼットとシアナの父でございます。先日は我が娘、シアナのためにありがとうございました
」
丁寧な礼を取る父にエディアルドは優しく手を差し伸べる。
「いえ、リゼットの大事な方なら、自分にとっても大事なので」
にっこり微笑むエディアルドに父が目を丸くした。これはいけない雰囲気だ、それに周囲の人の目もある。
「おっ、お父さま! そろそろ出発の時ですわ、向こうに集まっていますわよ!!」
早く行けと言わんばかりに、背中をグイグイと押した。
エディアルドは笑っているが、あなたも早く行きなさいっていうの!
「リゼット、どんな獲物が欲しい?」
首を傾げてくるが、獲物は豊穣の女神に捧げるはずだ。私自身はなにもいらないと告げた。
「欲がないな」
笑いながらエディアルドも出発点を目指した。
「さっ、私たちはお茶して待っていましょう」
シアナを誘って、テントが設置してある方向へ向かった。
「そろそろ戻ってくる頃かしらね」
シアナと話し込んでいたが、顔を上げた。
ポツポツと参加者たちが獲物を片手に戻ってきていたからだ。
その時、遠くから歩いてくる父の姿を見つける。肩を落としてしょげているのが遠目からでもわかったので、私とシアナは顔を見合わせて笑う。
「今年もダメだったみたいね」
「そうね、残念ね」
その背後から歩いてきたのは、エディアルドだった。彼もまた手に何も持っておらず、手ぶらだった。
だが、よく目を凝らしてみるとシャツが鮮血に染まっている。
まさかケガをしたの!?
驚いてすぐに立ち上がると、椅子がガタッと音を出した。
不安になって凝視するが、彼はいつもと変わらぬ表情で、すたすたと歩いている。どこもケガした様子は見られない。
まさか、あれは返り血を浴びたの?
いったい、どんな獲物を仕留めたというのだろう。そもそもここは王族が管理している土地であり、危険な動物は生息していないはずだ。
たまらず心配になり、エディアルドに近づこうとした。全身に返り血を浴びたエディアルドは私に気づき、顔を上げた。
170
あなたにおすすめの小説
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています
廻り
恋愛
治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。
その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。
そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。
後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。
本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
最終回まで予約投稿済みです。
毎日8時・20時に更新予定です。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる