新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい

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第十話 たまには論破しないことも、なくはない

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その夜。

寝室で、ルーファスは珍しく自分から口を開いた。

「カレン」

「何ですか」

「今夜は……俺から誘ってもいいか?」

カレンの眉がわずかに動いた。

「契約履行の一環ですか?」

「違う」

「違う?」

「……違うと思う」

「思う、ですか。曖昧ですね」

「ああ、曖昧だ。でも……」

ルーファスはカレンの目を見た。

「俺は君と、ちゃんと向き合いたいんだ。嘘なしで」

カレンはしばらく黙っていた。
それから、小さく肩をすくめた。

「……ご自由にどうぞ」



翌朝。
カレンが目を覚ますと、隣にルーファスの姿はなかった。
身を起こすと、寝室の扉が開いた。

「あ、起きたか」

ルーファスが水差しとグラスを持って入ってきた。

「……何をしているんですか」

「水。喉、渇いてないか?」

「……」

カレンは黙ってグラスを受け取った。
ルーファスは寝台の端に腰かけ、妻の様子を伺った。

「体調は……大丈夫か?」

「なぜそんなことを聞くんですか」

「昨夜、その……少し激しかったかと思って」

「……」

「痛いところとか、ないか? 無理させてないか?」

カレンはグラスに口をつけたまま答えない。

「俺、これからはちゃんと君のことを——」

「調子に乗らないでください」

遮られた。

「あ……すまない。でも、俺は本当に——」

「……まあ、いいでしょう」

「え?」

ルーファスは目を瞬かせた。

「今……論破しないのか?」

「……たまには」

カレンは窓の外へ視線を向けた。
朝日が差し込んでいる。
その横顔を、ルーファスはじっと見た。
耳が、赤い。

「……カレン」

「何ですか」

「いや……何でもない」

ルーファスは小さく笑った。
カレンは振り向かない。

でも、耳の赤さは消えなかった。

---

「初めて、論破されなかった。……これって、そういうことだよな。

 その『たまに』が増えるように、頑張ろう」

ルーファス・ベルンワード候爵
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