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第2話 政略結婚から始まる初恋2★
しおりを挟むその日の夕食はエルトンを歓迎するためか、いつも以上に豪勢な食事だった。クレアの誕生日会ぶりなのではないかと思うほどだ。エルトンと父が和やかに談笑する横で、クレアはひたすら料理に舌鼓を打った。
――そして、食事を終えて入浴後。
クレアはどきどきしながら、夫婦の寝室の寝台の上に座っていた。もうすぐエルトンがくると思うと、口から心臓が飛び出てきそうだ。
今夜……事に及ぶんだろうか。
性経験なんて当然ながらないので、緊張感しかない。初めての相手があのエルトンというのも正直嫌だし、どうにかやり過ごす方法はないものか。
つい逃げる方法を考えてしまったが、結婚した以上は遅かれ早かれ、子作りしなければならないのだ。腹をくくるしかない。
どうにか、抱かれる覚悟を決めた時、寝室の扉が開いた。顔を出したのは、もちろんエルトンだ。
「お待たせしました。クリフォー……いえ、クレア」
寝台に上がってくる、エルトン。燭台の明かりに照らされる整った顔立ちは、やっぱり綺麗なんだよなぁと思う。
別にクレアの好みではないが。
「抱きますよ。いいですか」
直球過ぎて雰囲気の欠片もない。さすがのクレアも、口をへの字に曲げた。
「……それで、私が嫌だと申し上げたらどうするんです」
「強引にでも抱きますよ。婿入りした以上、あなたに子を孕ませる義務が私にはありますし」
押し黙るクレアの口を、エルトンの唇がそっと塞ぐ。ファーストキスが一瞬にして奪われてしまった。
「ふぁ…っ……」
驚いた拍子に半開きになった口に、舌が挿し入れられる。咄嗟に舌を引っ込めようとしたが、エルトンの舌は執拗に追いかけてきて、あっさりと捕まった。
深くなっていくキスに、身体から力が抜けていった。ちゅっ、と吸われると、甘い痺れが下半身に届く。なんだか、秘部が疼いて、つい足をもじもじとさせてしまう。
その動作に、エルトンは一笑した。けれど、何も言わずにディープキスを続けながら、クレアをゆっくりと押し倒して衣服を脱がせていく。
「この可愛らしいお胸は、ありのままだったんですね」
まな板も同然の控えめな胸。くすりと笑われて、クレアは頬がカッとなった。
「う、うるさ……あぁっ!」
いきなり、突起を摘ままれて、悲鳴じみた声が出た。
片方は指で弄られ、片方は舌で舐められて、緩やかな快感が全身に広がっていく。秘部が疼いて仕方ない。
「や、やぁ…っ……、え?」
素っ頓狂な声が出たのは、エルトンの愛撫の手が止まったからだ。
「やめますか?」
「え?」
クレアは困惑した顔で、エルトンを見上げた。さっき、強引にでも抱くと言っていたのに、どういう風の吹き回しだ。
「やめ、るの?」
「あなたが本気で嫌ならやめますよ。もっとも」
ぴん、と尖った突起を指で弾かれた。
「ここはこんなになっていますが」
「あ、ぅ……」
感じていることを指摘されて、クレアは赤面した。
だが、身体が高ぶりつつあるのは確かで。ここで、ほっぽり出された方が困る。
「……ください」
「なんです」
「つ、続けて下さい……!」
顔を真っ赤にして催促するクレアの額に、エルトンはキスを落とした。
「いい子ですね」
再開する愛撫の手。
エルトンの愛撫は壊れ物を扱うかのように優しく、繊細なもので。愛……が込められているかは分からないが、じっくりとした責めにクレアは感じさせられた。
エルトンの指が茂みを掻き分けて秘部に触れる。くちゅくちゅと水音を立てながら筋をなぞられると、たまらない快感に襲われた。
――中が熱い。
――疼きを鎮めてほしい。
「エルトンさ、ま…ぁ……」
「どうしました」
「きて、下さい……欲しいです」
熱で潤んだ瞳でねだると、エルトンは満足げに微笑んだ。
「いいですよ。本当にいい子ですね、クレア」
自身も衣服を脱ぎ出すエルトンの姿を、クレアはとろんとした目で見つめた。服の上からでは分からなかったが、エルトンの裸体は均整がとれていて引き締まっている。
そして――はち切れんばかりに膨張した雄芯。
クレアはごくりと生唾を飲み込んだ。あんな大きなものが入るのか、秘部に。いや、赤ん坊はもっと大きいわけだから入らないわけがないと思うが、それでも相当痛いのでは。
そう思うと、クレアは少し冷静になって、かつ怖気づいた。
「エ、エルトン様。あの……やっぱり」
「やめたい、ですか? ここまで煽っておいてそれはないでしょう。観念なさい」
「わっ」
正常位の体勢で、秘部にぐっと雄芯を押し付けられた。圧力をかけられるとそこが少しずつ開いていき、ずぶずぶと飲み込んでいく。
丹念にほぐされていたからだろうか。想像していたような激痛ではなかった。せいぜい、イタ気持ちいいといった感じだ。
「入りましたよ。大丈夫ですか?」
「は、い……」
なんだか、変な感じだ。抜き差しされると、圧迫感があって呼吸がしづらい。
苦しげな顔をするクレアを見かねてか、エルトンは腰の動きはそのままに、宥めるように全身にキスの雨を降らせた。
特に首筋へのキスが一番感じ、くすぐったかった。
「あっ、あぁっ、んんっ!」
身体が異物に慣れてきたらしい。中を擦られるたびに、快楽で頭に火花が散る。もっと、擦ってほしくて、抉ってほしくて、勝手に腰が動く。
いやらしいことをしているとは頭で分かっていても、止められなかった。
「あぁっ、ふぁぁっ、エルトンさ、ま…っ……!」
体重を乗せて奥まで貫かれると、頭が真っ白になる。最初感じていた圧迫感さえ、快楽に上塗りされる。
ぼぅっとしてきて、クレアはエルトンの首にしがみついた。
「んぁっ、気持ち、いいよ…ぉ……」
「可愛いですね、クレア」
――可愛い。
思わぬ言葉に中がキュンと引き締まったのを感じた。実際、エルトンの雄を強く締め付けたらしく、エルトンの顔が歪む。
「くっ……あんまり締め付けないで下さい。出るでしょう」
「出していいよ……全部……、あぁあああああ!」
ぐいっと腰を打ちつけられて、肉奥で熱い雄が弾けた。その衝撃でクレアも達し、秘部から男根を引き抜かれると、どろりとした白濁した蜜液が太腿を伝う。
肩で息をするクレアを、エルトンの腕が抱き締めた。
「ずっと、待っていたんですよ、この日を」
「……え?」
ずっと待っていた、とは。
目を瞬かせるクレアの額に、エルトンは口付ける。
「あの日から、こうなると分かっていましたから」
「あの日、って……?」
「五年前にあなたと出逢った、舞踏会の時のことです。ビュッフェコーナーで赤ワインのグラスを割ってしまったでしょう、クレアは」
もしや、赤ワインまみれにされた、あの憎き日のことか。
思い出して恨み心が再び顔を出そうとした時、エルトンは予想外のことを口にした。
「あの日、あなたが本当は女性だと察しました。もし、それを公表する日がくるとしたら、婿をとる時。その相手として私が選ばれるだろうな、と」
エルトンの予測は正しかったわけだが、クレアは困惑した。
「え、あの、どうして私が本当は女性だと……?」
「衣装に血が付着していたからですよ。赤月の日だったんでしょう」
「え!?」
そう、実はあの日、初めて赤月がきていたのだ。
もっとも、気付いたのは、赤ワインまみれにされて着替えている時で――。
そこでクレアははっとした。
「も、もしかして、あの日、私を赤ワインの海に突き飛ばしたのは……」
「ええ。バレないようにするためです。白い衣装でしたから、放置したら目立つだろうと思いまして」
――クレアの秘密を守るため、だったのか。
そうとは知らず、未だに根に持って嫌がらせしようとしていた自分が恥ずかしい。
「……ありがとうございます、エルトン様」
「その、『様』付けですが。不要です。エルトンで構いません」
エルトンは、ふっと優しく笑った。
「私たちは今日から夫婦なんですから」
どきりと胸が高鳴る。
好みでなかったはずのエルトンの顔が、なんだかカッコよく見えた。
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