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弱点
しおりを挟むおぉ...なんか新鮮
リサと楓が用事があって出掛けているときに皓大がバイトを終えて帰ってきた。拾われてきて以来、皓大と二人きりというのは初めてだ。
「皓くん...あの、あんま飲んだらリサちゃん怒るよ......」
「バイトで疲れて帰ってきて飲まないわけにいかないだろー?」
おじさんみたいなことを言う皓大に苦笑いしながら、ずっと気になっていたことを訊いてみた。
「皓くんっていくつ?」
「俺も楓も二十一だよ」
「え、俺と一緒なの!?」
ぽかんと口を開けて皓大を見ると、皓大も俺に負けないくらい間抜けな顔をしていた。
「ええええええっ!お前、成人してたのか!めっちゃ年下だと思ってたわ」
あ、その反応デジャヴ
「こんなちっせえのにな」
皓大にひょいと持ち上げられる。
「楓がペット飼い始めて大人しくなったってお前、ちょっと有名になってんぞ」
「え......」
俺ペットですか。ていうか、そんなことで有名になんかなるんだろうか。
「楓が大人しくしてるのは一大事なんだよ」
皓大がからからと楽しそうに笑う。
「俺やリナ拾ったときはそんなことなかったのになぁ。まぁ、朝陽は怖がりそうだかんな」
「......拾われたの?」
「そうだよ。俺らはあいつに助けられたの。あんなに怖ぇくせにな」
気づいていた。楓が二人を見ているときの目は、どんなに冷たい態度をとっていても優しい。その理由がわかって、身体の内側がほんわり温かくなった。
こんなにも温かい場所を作ってくれたのはやっぱり楓だったんだなぁ...
「朝陽変な顔してる」
「皓くんと二人ってなんか緊張してたんだけど、力抜けちゃった」
金髪の人って怖いのだと思い込んでいたけど、皓大は怖くない。こんなに近くにいても安心してられる、ふざけてるけどいい人なのだなぁと思った。
「お前、最初あんなにびびってたくせに、慣れるとガードゆるっゆるなのな」
「...ッふぇ?」
ソファに押し倒されて、両手を頭の上で一纏めに押さえられる。恐怖感はないが、突然の展開に驚いて俺は身体を硬くする。
「楓といっつもこんな感じ?」
「え、え、え...っ」
「ほんとすぐ真っ赤になるな」
「アッ......だめっ...あ...」
「アハハッ、ダメッ......ひあっ、アハハハハっ」
皓大の手が脇とわき腹をくすぐり続けている。息も吸えないし、もがいても逃げられないし、ほんとにもう限界だ。
「も、むりっ...おなかつるからあっ...」
「はぁ、弱ぇなぁ」
やっと離れていった皓大の手に安堵しつつ、ソファの上でぐったりする俺。さっきのは撤回しよう。皓大はふざけてるけどいい人、じゃなくて、いい人だけどふざけてるんだ。
ほんと、ふざけてる。笑いすぎてお腹痛い。
「ちょっとお?なに朝陽いじめてんのよ」
ソファの背もたれに隠れて姿は見えないが、リナの声が部屋に響いた。それで助かったと思ったのが間違いだった。
「朝陽、わき腹めっちゃ弱ぇの」
「あんたがやるとただのセクハラなのよ!......でも、ちょっとたのしそ...」
「え...リナちゃん...?」
リナの目がキラキラしている。まるで新しいおもちゃをもらった子供だ。本能的にこれはヤバいと感じる。
「朝陽ー、こっちきて?お帰りのハグして?」
「......やだ」
お帰りのハグはちょっとしてみたくもあったけど、そんなことしようものなら捕獲されて限界まで弄ばれるのは目に見えている。
「えぇー...じゃあいいよ、ただいまのハグするから」
そう言って両手を広げて近づいてくるリナから逃げようとしたが、遅かった。呆気なく捕まってしまう。
「つーかまーえたっ」
「や、むりっ...アッ、リナちゃんっ!アハハハハッ、ハアッ、ひっ」
「こっちはぁ?」
「ひゃぁあっ、あはっ、ハハハッ...もやめっ!...っ」
そのあと帰ってきた楓は呆れた顔をしただけで助けてはくれなかった。
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