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得体の知れない...
しおりを挟む楓、皓大、俺の三人はテーブルを見つめたまま固まっていた。そこにあるのは、カップに入った黒っぽい、なんというか、ねちゃねちゃした物体。
「......リナちゃん、これは.....?」
「チョコマフィン?小麦粉いっぱい見つけたから作ってみたの!」
「マフィンて、もっとこう......ふわふわしてなかったっけ...」
リナが得意気に出してきたそれはどう見てもマフィンには似ても似つかない代物だ。膨らんでないし。
「...皓大、彼氏だろ。食え」
「はぁ?んな、明らかな危険物食えるかっつの。てか楓、お前、胃も強いだろ!お前ならいける!」
「毒物分解できるほどじゃねぇ......」
あ......
リナがどこからか出してきた鍋で、後ろから二人の頭を思いきり叩いた。
「ちょとぉ?なにひとが作ったもの危険物扱いしてんのよ!」
確かに二人とも言い過ぎだとは思うが、そんなことよりリナと目が合って、しまったと思った。
「朝陽はそんなこと言わないもんねっ!」
「うっ............ん」
「朝陽めっちゃ戸惑ってんじゃねえか。強要すんなよっ」
「はぁ?朝陽はあんたたちみたいなデリカシーないのとは違うのよ!」
うん、これは食べるしかない
恐る恐るフォークを手に取り、謎の物体と向き合う。無理すんな、という楓の言葉に一瞬心が揺らいだが、リナのためにも食べなきゃという思いがかろうじて勝った。
フォークを差し込むと、ねとっと絡み付いてきたそれに思わず息を呑む。ここまできて尚食べ物には見えない。意を決して口を開いた。
「......味は......チョコ、だね...」
でも、なんだろうか。この口の中に広がる粘着質な食感は。
「朝陽っ、おいしー?」
「...............食べれる」
精一杯の高評価だったのだが、リナは不満そうに口を尖らせる。俺の感想を聞いて皓大が一つのカップまるごと口に放り込んだ。
「ちょっ!あんた大丈夫!?」
「自分で作っといて、大丈夫?って訊くなよ。まぁ、これは.........まずいな」
「......楓?」
皓大に続いてひと口食べた楓が顔をしかめる。見たことないくらい苦々しい顔をしていた。
「お前、よくこれ食えるっつったな」
「まぁ...一応チョコ味だし...」
皓大がはっとしたように不機嫌そうなリナを見る。
「お前自分で食ったか?」
「っ......たべたよぉ?」
「嘘つけっ、ぜってぇ食ってないだろ!ほら、食ってみ」
「いいっ、いいから!あたしはいいっ!」
抵抗するも皓大に無理矢理口に押し込まれたリナは、涙目になりながらやっとのことで飲み込んだ。
「うぇぇ......変な味するー...」
「それみろっ!頼むから味見くらいしとけっつの」
「いや、その前にリナは作んない方がいいだろ」
皓大と楓からの非難に涙目になったリナが勢いよく抱きついてきた。
「わっ...!」
「朝陽ーー...料理教えてぇ...」
「え...俺っ...!?」
戸惑う俺を他所に、皓大はリナの言葉に手を叩いて賛成した。
「おお、良いじゃん。朝陽から、食えるもんの作り方教えてもらえー。それでもダメだったらお前マジで食べ物に触んない方いいわ」
「ふんっ、見てなさいよ!絶対美味しいって言わせてやるんだからっ!!ね!朝陽!」
「え、あ、はい...」
というわけで、リナと料理の練習をすることになった。
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