6 / 10
転移
6 “閉じ込められた俺”
しおりを挟む
ゆらゆらと、揺れている。
……俺は、どうしたんだったか?
薄く目を開けると、何だか薄暗い。石畳のようなものが眼下に見えるが………歩いてもいないのに、俺は進んでいるようだ。ガチャガチャと扉のノブを乱雑に回しているかのような音が聞こえる。
「…っ、あ…。」
両腕を左右から掴まれた状態で引き摺られていたのだと理解した途端、放り投げられて無様に床を転がった。投げられたようだ、打ち付けた背中が僅かに痛む。気を抜いていたせいで旭に衝撃を送ってしまったかもしれない…
「――…旭っ!」
そうだ、思い出した。俺達は登校中に謎の光を足元から受けて、一度目が覚めたものの殴られて気絶してしまったんだ。
周囲を見回すと、旭は居ない。今俺が居る場所は薄暗くじめっとした部屋のようだ。明かりは一つ、小さな蝋燭があるだけ。…明かりがあるだけマシだな。
先程まで目を閉じていたからか薄暗くともいくらか部屋の様子が伺えるが、床も壁も天井も全てが石畳でできているらしい。
扉は一つ。口の中に溜まる鉄臭い物を吐き出してから、容赦無い暴力を受けて軋む身体を引き摺って近付く。
……金属製だが鉄ではなさそうだ。材質は何だろう?判ったところで意味は無いが。
「……独房か。」
脳裏に浮かんだ言葉を呟く。
実際に目にした事は無いけれど、その言葉がぴったりなこの部屋。部屋と言って良いのかも疑問だな。
扉は押しても引いてもビクともしない。ドアノブらしい物は無く、外からのみ開け閉めできるタイプの様だ。俺は閉じ込められたらしい。
当たり前か、奴等は何故か初対面の俺を目の敵にしていた。そして意識の無いうちにこんな場所に連れてこられたのだ、閉じ込められているのは道理だろう。された側としては、納得できるものではないが。
「……旭…。」
アイツは無事なんだろうか。結局、この訳の分からない状態になってから旭と話せていない。最後に見たのは、俯せに倒れたままの姿だけだ。
不思議と旭に呼ばれているような気がする。
「旭、俺はここだ…。」
明かりの近くに移動し、左手で締め付けられるように苦しい胸元を握り締める。
不安が俺を焦らせるが、現状何も打つ手が無い。
……俺は、どうしたんだったか?
薄く目を開けると、何だか薄暗い。石畳のようなものが眼下に見えるが………歩いてもいないのに、俺は進んでいるようだ。ガチャガチャと扉のノブを乱雑に回しているかのような音が聞こえる。
「…っ、あ…。」
両腕を左右から掴まれた状態で引き摺られていたのだと理解した途端、放り投げられて無様に床を転がった。投げられたようだ、打ち付けた背中が僅かに痛む。気を抜いていたせいで旭に衝撃を送ってしまったかもしれない…
「――…旭っ!」
そうだ、思い出した。俺達は登校中に謎の光を足元から受けて、一度目が覚めたものの殴られて気絶してしまったんだ。
周囲を見回すと、旭は居ない。今俺が居る場所は薄暗くじめっとした部屋のようだ。明かりは一つ、小さな蝋燭があるだけ。…明かりがあるだけマシだな。
先程まで目を閉じていたからか薄暗くともいくらか部屋の様子が伺えるが、床も壁も天井も全てが石畳でできているらしい。
扉は一つ。口の中に溜まる鉄臭い物を吐き出してから、容赦無い暴力を受けて軋む身体を引き摺って近付く。
……金属製だが鉄ではなさそうだ。材質は何だろう?判ったところで意味は無いが。
「……独房か。」
脳裏に浮かんだ言葉を呟く。
実際に目にした事は無いけれど、その言葉がぴったりなこの部屋。部屋と言って良いのかも疑問だな。
扉は押しても引いてもビクともしない。ドアノブらしい物は無く、外からのみ開け閉めできるタイプの様だ。俺は閉じ込められたらしい。
当たり前か、奴等は何故か初対面の俺を目の敵にしていた。そして意識の無いうちにこんな場所に連れてこられたのだ、閉じ込められているのは道理だろう。された側としては、納得できるものではないが。
「……旭…。」
アイツは無事なんだろうか。結局、この訳の分からない状態になってから旭と話せていない。最後に見たのは、俯せに倒れたままの姿だけだ。
不思議と旭に呼ばれているような気がする。
「旭、俺はここだ…。」
明かりの近くに移動し、左手で締め付けられるように苦しい胸元を握り締める。
不安が俺を焦らせるが、現状何も打つ手が無い。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる