悪役令嬢目指して奮闘中

L0tus

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悪役令嬢?

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――人生とは、得てして思い通りにならないものである。

ええ、そんな事は分かっていましたわ。あたしとして生きてきたウン年とわたくしのこの13年で、嫌と言うほど理解してきていましたのよ。
それでも!この言葉を言わせていただきますわ!

ど う し て こ う な っ た ! ! ?



「どうかなさいまして?シルビアンナ様。」

同じ女性なのにこちらがときめいてしまう程の、艶やかでありながらも清楚さを感じるという素晴らしい笑顔を向ける、私の右腕に白魚のような手をした両手を絡ませている彼女。――あたしはノーマルだと思っていたのだけれど、一瞬押し倒してやろうかと思ってしまったのは内緒ですわ。
そんな彼女にこちらも微笑みを返す。

「……いえ、何でもありませんのよ、エルルカ様。」
「そうですか。何かありましたら、私に言ってくださいませ。シルビアンナ様の憂いは私が排除いたしますから。」

笑を深めてそう言うと、私の腕にしなだれかかる彼女は、私が呼んだ通りのエルルカ嬢その人。何故私にくっついて…???と頭の上に疑問符が行列を作っている。少し記憶を整理いたしましょう。
学園長のお話が終わった後、ゲームでは当代の騎士達の紹介があったのだけれど、実際にはそんなものは無かった。その代わり、国王陛下からの祝辞があり、その中に聖女と騎士の発表会を公的な祭事として近日に行われることが発表されていた。マジかよ。マジだわ。
そうして長たらしく感じた時間も終わり、生徒達は各々の教室へとばらけた。席は前世の大学のようにひな壇になっていて、どこに座るも自由。私は真ん中あたりの段の、窓際を選んで座ったのだけど……気付いたら、エルルカ様がこうしてくっついていた。
……物凄く今更ではあるけれど。確かにアステリスクは、ライバルキャラとの百合ルートがあるわ。全攻略キャラのハッピー、ノーマル、バッドエンド解放、全スチル回収後にやっと選べるようになる、エルルカルートが。
しかしその道はまさに茨の道と言える。トリプルSのステータスをオールMAXにしなければいけないし、隠しキャラを含めた全攻略対象の好感度を一定まで上げなければいけない。そして一度でもエルルカの好感度を下げるとバッドエンドしか未来が無いという……そのエルルカの好感度パラメーターは表示されないし、公式では一切の情報が出ず、攻略方も開示されなかったルート。やり込み要素が好きな人が初めて見つけた時は、ネットがかなり盛り上がったとだけ言っておくわ…。それ考えたら、初めてクリアした人は勇者よね。

「シルビアンナ様、お昼はご一緒しませんこと?父からここの学食はとても美味だと聞いておりましたので、楽しみにしていましたの。」
「あ、いえ、その……。」

しなだれかかったまま、上目遣いで私を見上げてくるエルルカ様。間違っている、私にその目を向けるのを間違っている!男にやれ!とあたしが心の中で叫んでいる!!クラッと来てしまうのが悲しい!何という女子力の高さよ…。
言葉に詰まり、助けがないかと軽く周囲を見回すと、周囲の生徒達は遠巻きにこちらを見ていた。そりゃ、公爵家の令嬢がね……下位の貴族の娘に対して媚を売るような真似してるんだものね……と現実から逃げようとしたところで、ふと見知った顔を見つける。

「申し訳ありません、エルルカ様。私はお昼は暫く先約がございますの。ねぇリグロイン?」

自然と上がる口角は貴族界を渡り歩くために必要な、初歩的な仮面。エルルカ様のように綺麗に微笑めないけれどね。
私に名を呼ばれた、目が合った途端に逃げようとしていた彼――日に焼けた健康的な肌に、リロイと同じチョコレート色の短髪を持ったリグロインは、動きを止めるとため息を吐きながら私達の傍へと出てくる。

「……はい、エルルカ様には申し訳無いのですが。」

両手を後ろに回し、背筋を伸ばしながら顎を引いて目線を伏せているリグロインは、まるで騎士のよう。彼は将来的にシルベストリ家の騎士となるべく修行を積んでいるからだ。

「そう畏まらないで結構ですわ、学友ではありませんの。学園長様も仰っていましたが、学園では皆等しく一人のヒューマンなのですわ。学園ではもっと気兼ねなく接してくださいませ。」
「ありがとうございます、エルルカ様。」

そう言いながら私の腕からようやく身を起こしてリグロインに向き直るエルルカ様。リグロインも姿勢を楽なように若干崩す。

「ですが、先約がありましたのなら残念ですが諦めるしかないですわね…。」

伏せるのをやめて翡翠色の瞳を私に向けてくるリグロイン。あ、ちょっと視線が痛い。姉弟揃って私に不敬ではなくて!?とか思いながら視線を隣の彼女へと逸らす。
目は口ほどに物を言う。私はそっとエルルカ様の瞳を見詰めたのだが、……あれ?この子、本当にエルルカ?と思う程純粋な瞳をしていらっしゃる。
現実とゲームは違うのだというのは分かりきっていたつもりなのだけど、警戒していた私が間違っていたのかしら……?これは真意を探るしかありませんね。

「いえ、折角のお申しですもの。後日、改めて日取りを決めてご一緒しませんか?」
「本当ですか?光栄ですわ、宜しくお願い致しますシルビアンナ様!」
「約束ですわ、エルルカ様。それでは失礼します。」

花が咲くように笑うエルルカ様に、私も改めて笑顔を返してから、一言挨拶をして立ち上がりリグロインの元へ。目配せをしつつ横を通り過ぎると、慣れたもので彼は後ろをついてきてくれる。
教室を出る時に一度エルルカ様を振り返ると、先程の会話を聞いていた周囲の生徒達に群がられていた。美少女だし身分高いし、お近付きになりたい人達がこぞってアピールでもしているのだろうか?と考える辺り、あたしは捻くれている性格をしてるんだなと小さく溜息を吐いた。
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