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三章
48話 失恋の超え方 / ユーグ
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< 小さな設定 >
果実水の好み
ノエル → 甘味
アレックス → 甘味
カミュ → 酸味
クロード → 酸味
ユーグ → 甘味
ドニ → 甘味
ディエリ → 酸味
おまけ 国政管理室 → 超甘味
< 小話 >
――恋の終わった日に
自領に帰る道を馬に揺られながら考える。
ざわざわと騒ぐ胸の痛みは何だろう。もやもやとして、胸をせりあがるのは何だろう。
知る限りの病に当てはまらない症状だ。
「アングラード領を出てから、ユーグ様が静かだ……」
「静かなのはいいけど、なんか放心してないか?」
後ろで従者と護衛が囁き合う。聞こえてるんだけど?
赤く染まる空はこんなに苦しい色をしていただろうか。
この先で何度こんな気持ちを味わうのだろうか。
誰かたった一人を見つけて、答えの先を知るまで何度も繰り返すのかと思うとげんなりする。
「大人になっるって大変だよね……」
「はぁ?」
「ええ?!」
僕の呟きに変な声を二人が上げる。うるさいなぁ。今はそっとしておいて欲しい気分だ。
「ちょ、ちょっとユーグ様?! なんですそれ? 私のついていない間に何やったんですか? 事と次第でご当主様とエルヴェ様に私は怒られます!」
従者が僕の隣に並んでまくしたてる。確かに兄さんと父さんが聞いたら大騒ぎだろうな。絶対二人とも泣きたい僕より泣く。
「失恋した……兄さんと父さんには黙ってて」
「はぁ? あ! 私兵団の女の子ですか? それとも、村娘の子ですか? 誰です? ユーグ様の色気に引っかからないって何者ですか?」
今度は護衛のが反対側に並んでまくしたてる。青くなって赤くなって大騒ぎ。人の事で大騒ぎする二人は少し面白い。
でも、相手の子は秘密。キャロルの事は誰も知らない。知らない事を教えてくれた僕の秘密の女の子。
キスの先の答えを彼女と知りたかった。
赤い唇。さよならと言ったのに、銀の髪も紫の瞳も思い出すとまだ胸が高鳴る。
そして、もやもやと胸をせりあがる何かが、また増えてくる。
「二人の知らない子だよ。ねぇ、こういう時って皆はどうしてる?」
知らない事は先人に教えを乞う。すごく大事なシュレッサーの学び方だ。
僕の言葉に二人の大人が顔を見合わせる。
「「任せて下さい! シュレッサーは失恋のプロです!」」
胸を張って二人が声を合わせて答える。確かに皆よく振られてるよね。でも、そんなプロにはなりたくないな。
「失恋したら叫ぶんです。思い切り思いのたけを乗せて、ちょうど良い夕日です! さぁ、叫びましょう!」
「そうです! すっきりしますよ!! 私たちは耳をふさぎますので、言い残した思いを叫んですっきりです!」
言って、二人が馬上で耳をふさぐ。
胸を押さえると、そこにもやもやが溜まっていて、確かにせりあがる何かは言葉になる気がした。
大きく息を吸い込む。人生でこんなに大きな声を出そうと思ったのは初めてかもしれない。
「――――――――――――――――――――!」
「 ―――! ―――! ―――! 」
「―――、――――!」
かっこつけて言えなかった言葉。諦めよく我慢した言葉。知らなかった。
本当に僕は君がこんなに好きだったんだね。
吐き出した後の胸は確かに軽くなっていて、振り返った大人はニヤニヤしていた。
さよなら、僕の初恋の人。少しだけ大人になって、失恋の超え方を僕は知る。
果実水の好み
ノエル → 甘味
アレックス → 甘味
カミュ → 酸味
クロード → 酸味
ユーグ → 甘味
ドニ → 甘味
ディエリ → 酸味
おまけ 国政管理室 → 超甘味
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――恋の終わった日に
自領に帰る道を馬に揺られながら考える。
ざわざわと騒ぐ胸の痛みは何だろう。もやもやとして、胸をせりあがるのは何だろう。
知る限りの病に当てはまらない症状だ。
「アングラード領を出てから、ユーグ様が静かだ……」
「静かなのはいいけど、なんか放心してないか?」
後ろで従者と護衛が囁き合う。聞こえてるんだけど?
赤く染まる空はこんなに苦しい色をしていただろうか。
この先で何度こんな気持ちを味わうのだろうか。
誰かたった一人を見つけて、答えの先を知るまで何度も繰り返すのかと思うとげんなりする。
「大人になっるって大変だよね……」
「はぁ?」
「ええ?!」
僕の呟きに変な声を二人が上げる。うるさいなぁ。今はそっとしておいて欲しい気分だ。
「ちょ、ちょっとユーグ様?! なんですそれ? 私のついていない間に何やったんですか? 事と次第でご当主様とエルヴェ様に私は怒られます!」
従者が僕の隣に並んでまくしたてる。確かに兄さんと父さんが聞いたら大騒ぎだろうな。絶対二人とも泣きたい僕より泣く。
「失恋した……兄さんと父さんには黙ってて」
「はぁ? あ! 私兵団の女の子ですか? それとも、村娘の子ですか? 誰です? ユーグ様の色気に引っかからないって何者ですか?」
今度は護衛のが反対側に並んでまくしたてる。青くなって赤くなって大騒ぎ。人の事で大騒ぎする二人は少し面白い。
でも、相手の子は秘密。キャロルの事は誰も知らない。知らない事を教えてくれた僕の秘密の女の子。
キスの先の答えを彼女と知りたかった。
赤い唇。さよならと言ったのに、銀の髪も紫の瞳も思い出すとまだ胸が高鳴る。
そして、もやもやと胸をせりあがる何かが、また増えてくる。
「二人の知らない子だよ。ねぇ、こういう時って皆はどうしてる?」
知らない事は先人に教えを乞う。すごく大事なシュレッサーの学び方だ。
僕の言葉に二人の大人が顔を見合わせる。
「「任せて下さい! シュレッサーは失恋のプロです!」」
胸を張って二人が声を合わせて答える。確かに皆よく振られてるよね。でも、そんなプロにはなりたくないな。
「失恋したら叫ぶんです。思い切り思いのたけを乗せて、ちょうど良い夕日です! さぁ、叫びましょう!」
「そうです! すっきりしますよ!! 私たちは耳をふさぎますので、言い残した思いを叫んですっきりです!」
言って、二人が馬上で耳をふさぐ。
胸を押さえると、そこにもやもやが溜まっていて、確かにせりあがる何かは言葉になる気がした。
大きく息を吸い込む。人生でこんなに大きな声を出そうと思ったのは初めてかもしれない。
「――――――――――――――――――――!」
「 ―――! ―――! ―――! 」
「―――、――――!」
かっこつけて言えなかった言葉。諦めよく我慢した言葉。知らなかった。
本当に僕は君がこんなに好きだったんだね。
吐き出した後の胸は確かに軽くなっていて、振り返った大人はニヤニヤしていた。
さよなら、僕の初恋の人。少しだけ大人になって、失恋の超え方を僕は知る。
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