俺が証人だ。

氷天玄兎

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三話

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「ねぇ、綾坂先生。貴方はいつになったらそういうネタが尽きるんですか?」

昼休み、先生の休憩時間にわざわざ邪魔をしに来た。すると、頭を撫でられる。だが、その手を片手で勢いよく払い除ける。あまり、こういうことは好かない。慰めや誉めを受けているみたいだから。

「俺のネタが尽きるっていうのは、慧の俺へのいたずらが無くなった時ぐらいだな。」

そうサラリと言ってくる。綾坂先生は僕の予想の斜め上をいく不思議な先生なのだ。綾坂先生は基本的に無表情。身長は僕と同じで、180㎝と、見下されも見上げもしない対等な感覚だ。声は、一言一言がズッシリと重みを感じる低さで、言い返すことをたまに忘れそうになる。
こんなだから、僕は仕返しできないのか、いや、それは言い訳にしかならない。

「綾坂先生が僕のいたずらに驚いて叱ってくれたら僕は、いたずらをやめるんですがね。」

なんて、なげやりな風に言うと、彼は

「何だかんだで勉強や授業しっかりやって成績も良い…そんな良い子を叱ることは出来ない。それと、お前みたいな不思議なやつがいること自体が驚きだったな。」

と、飽きれ半分に答える。

「もういいです。さよなら。」

勢いよく職員室のドアを閉めて、急いで屋上へ向かう。目尻に溜まった熱いものが、こぼれ落ちる前に。
嗚呼、そういう風に言うから嫌いなんだ。自分自身も、先生のことも嫌になるんだ。
いつも、良い子、という言葉が出てくる。ふざけるなっていつも思う。僕は叱られたいんだ。それなのに、結果はの方は良い方にしか進んでくれない。
将来が約束されてる、とは実に嫌な響きだ。それは、鳥が鳥籠の中にいて誰かが適度に餌を与えていれば安全というのと同じ。いつか、鳥籠の外に逃げ出してやりたい。そして、一生帰らず、ずっと飛び続けたい。
綾坂先生だって、今までの先生と同じだ、きっと。ただ、少し違うように見えていただけ。そうやって自分に言い聞かせる。
こんな自分を叱ってくれる人が、もし、存在するなら一体いつ現れるんだろう。
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