取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

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いざ安住の地へ

<家> 花

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 おかしいと思わないか?

 えっ?思うって?
 そうだよね。
 うんうん。ん?
 ベオグラード侯爵や第2妃が敵国との内通とか、軍事や政治の妨害で捕まらないのかって?
 違う。それじゃない。

 もちろんフィンが目的を達し、ミカエル王子が次代の国王に決まった後、あいつらは一掃された。
 いろんな証拠を押さえられているんだ。逃げ逃れなんてできないし、させはしない。
 証拠の大半をどうやって集めたのかと国王陛下から私が直接問われるという対応に困るシチュエーションがあったのは内緒だが。

 違う、そこじゃないんだ。
 この話のタイトルを思い出してほしい。
 そう、『私は家だ』だ。
 なのにこの状況はどうなんだ。

 フィン視点の話ばっかりじゃないか。
 ちょっとは私にも活躍させろ。
 えっ?十分凄かったって?
 それほどでもないけど。

 ん?
 素敵だって?もっと活躍が見たいって?
 そうだろうそうだろう。
 そのためにはきっちりとこの作品を評価してもらって、作者に次回作を書く気力を与えてほしい。


 フィンは無事、自身の望みの通り魔道具研究所長に就任した。
 今はお祖父さまやローレンスたちと研究所に籠っているんだろう。
 まったく、私のところにもたまにはやってこいと言いたい。

 まぁ、みんな幸せな結論になってよかったのは確かだがな。

 ミカエル王子はとてもよくできた人物だった。
 頭もいいし、気が回るし、発言はしっかりしているし、ユーモアも理解してくれる。

 魔道具のことを改めてお礼を言われたとき、何か欲しいものを聞かれてフィンとの時間と答えたらなんと王城の庭園に私の居場所を作ってくれた。
 なんて素晴らしい。さすが次期国王さまだ。

 もともと湖畔にいたので自然に囲まれた場所は好きだが、このような眺めがよく絵になる穏やかな場所というのも嬉しい。
 そしてさらば商人。もうお前に売られることもないし、家主がいなくても壊される心配はない。

 こんないい場所なのになぜフィンは帰ってこない。
 もっと胃袋をつかむべきだろうか。
 それとも毎晩首根っこをつかんで引っ張り込むか……。

 ん?誰か来たな。



 ゆっくりと庭園に入ってくるのは……あれは国王陛下だ。
 何かあったのだろうか?
 前にここに来たときはだいぶ疲れた顔をしていたが……。

「失礼する、家殿」
『国王陛下。どうぞ』
 なにを驚いている?私だってそれなりの対応をするときはする。
 国王陛下はこの楽園の主なのだから。

「少し話したいと思ってな。突然すまない」
『気になさることはない。ここはあなたの庭園なのだ。管理の行き届いた場所でとてもすごしやすい』
「そう言ってもらえるとありがたい」
 そしてこの方は私に対してとても丁重な対応をしてくれている。
 フィンはなにどうを話したんだ?

「あなたは魔道具ではなく、召喚されてやってきたと聞いた」
『その通りだ。だが、それがなにか?』
「いや、ラーハーグ様がもたらしたものと言うのは凄いなと思ってな。様々な歴史を変えていっているのは間違いない」
 もしかしたらそうなのかもしれない。
 今回もこの国の行く末を変えたのは確かだ。
 もちろんフィンがいなかったらそんな手出しはしていないし、できないが。

 むしろ昔むかついてとある国の軍をぶっ飛ばしたことの方が重大な気が……。

「教えてほしいことがある」
 昔を思い出していると、国王陛下に声をかけられる。
 改まって何だろう?

「これでよかったのかと悩むことは多々ある。しかし、思う限り今は最善だ。少なくとも半年前に思い描いていたどんな未来よりも良い。それをもたらしてくれたことに感謝する」
『礼ならばフィンへ。私は強力したまでだ』
 事実として未来を変えたが、面と向かっての感謝はこそばゆい。
 私がやったのはフィンを励まして、知ってる知識をひけらかして、土砂をばらまいたくらいだぞ?

 
「そこで……あなたの目的は?」
『ん?』
 目的か……。たしかに気になるのかもしれないな。私が国王陛下の立ち位置だったら気になる。こいつ何をしたくてこんなに協力するんだ?って。
 ある意味怖いのかもしれないな。
 魔道具ならまだしも、そうじゃないと言ったばかりだ。じゃあなんなんだって言われても、自分自身よくわからないが。

「何かラーハーグ様に指示を受けたりしているのだろうか?」
『それはない。そもそも会ったこともない』
「ないのか?召喚されたときとかには……?そもそもではなぜラーハーグ様が召喚したとわかっているのだ?」
 うんうん。今は時間がある。しっかりと話しておこう。
 こんな楽園を誤解で追い出されるとか嫌だ。

『少し長くなるが……?』
「話してくれるならお願いしたい」
『では』
 そう言って国王に料理を出す私。
 長くなるんだから食いながら聞いてほしい。ついでにワインも出しておこう。
後から思えば毒見もなくよく食べたな、この国王様は。

 私は召喚された日の神との会話を思い出して説明する。
 ラーハーグ様とやらには会っていないが、あのなんだったっけか、2級神?との会話を。

 そしてその後の物語。
 私がこの世界に降り立ち、ぐーたらしたり、誰かに手を貸してきた歴史。

 それを聞いた後、国王陛下は一泊させてほしいと言われたのでその通りにした。
 翌日大変満足された様子の国王陛下が庭園を通り抜けて王城に戻っていった。

 
 その後、私の周りに私の好きな花が植えられた。
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