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第10話 王宮の思惑
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「えっ?うん、そうね。これ以上は行ってみるしかないかなって思ったわ」
「俺の話はそれくらいだ。じゃあな、奢ってくれてありがとよ」
私がアッシュに反応すると、禿頭はなぜか礼を言って去って行った。
「アッシュ、なにをしたの?」
「ん?」
こいつ喋らない気だな。あからさますぎるわ。
大方、このテーブルに着いた辺りから洗脳でもしていたわね……。
「白状しなさい。今なら許してあげるから」
「あんな奴はエリーと会話するに値しない。下卑た視線に気付いていただろ?」
やっぱり怒ってたわね。で?
「……」
「でもぶん殴って脅したりしたらエリーが怒るだろうから、魔法で大人しくして喋らせた」
やっぱりやってたわね。
どっちの方法でも怒るわよ!
私だって交渉くらいできるのよ!
「……」
「喋ってることと頭の中を見比べて嘘はついていないことは確認した。あと、気配はたぶんモンスターだ。それだけわかったらもういいかなと思ったから帰らせた」
「人の頭を覗くなって言ったわよね……」
「エリー、怒らないって言ったよな……」
くっ、賢くなったわね……。
「次からはもう連れて来ないわ」
「えぇ……!?」
当たり前でしょ!?
「なんであんな気持ち悪いやつを選ぶんだよ。エリーがあんなのと喋るのなんて、嫌に決まってるだろ!?」
むぅ……心配してるのか……。
でも、それはちょっと過保護なのよ。
アッシュは子犬みたいな目でこっちを見ている。
「あんなのに靡くわけがないじゃない。そんなに私は信頼ないかしら?」
「靡くわけがないとは思うけど、それが仕事上で必要だったらやるだろ?」
よく理解してるじゃない。
「私の体でなんとかなるなら、それで魔族が良い状況になるなら躊躇する気はないわ。前にも言った通りよ」
「だから気になるし、守りたいし、過保護にもなる」
むぅ……。
「きみが好きだし、心配だし、大切だから……。問題もないだろ?」
「……うん。ありがと」
問題だらけな気もするけど、問題がないようにも思う。
まぁ、トラブルじゃないしいっか。
□王宮にて……
「新しいダンジョンだが、ルイン伯爵に探索させて良かったのか?もったいなかったのでは?」
浅慮ですと宣言してまわっているような酷いマヌケ面で王太子が王宮魔術師団長に話しかける。
せっかく見つかったダンジョンだ。
たとえ低級とわかっていても、産出されるドロップアイテムは王国の経済にはプラスだ。
鉱山が1つ見つかったようなものだからだ。
一方で王太子は浅慮にもその利益を独占したいのだ。
せっかく王家の直轄領、それも自らの管轄下にできたダンジョンだから。
王太子にとっては新しい財布を拾ったような感覚だった。
そしてすでに複数の探索者が入り、5層のボス部屋を確認している。
この状況であえてルイン伯爵に探索指令を出す理由がわからないようだった。
「実は鑑定したものたちが口々に危険な兆候を訴えていましてな……」
しかし、王太子に応対する王宮魔術師長は正当な懸念によって動いていた。
ダンジョンが発見される時には必ず神託が下るが、その内容は曖昧で解釈に困る場合があるのは事実だ。
そのため、神託だけでダンジョンランクを決定したりせず、必ずダンジョンの鑑定と探索が行われる。
その鑑定において何か問題があるのであれば、それは探索者が発見できていない何かが存在している可能性はある。
「なるほど。犬には良い指令だな。はっはっは。せいぜい場を整えてくれ。我々のためにな」
説明をされて理解した王太子はとたんにご機嫌になる。もはや王宮魔術師のことは視界に入れておらず、自らの懐に入ってくる金を期待してニヤニヤしている。
「今はまだ隠せているが、できればアッシュごと死んでくれ……」
「ん?なにか言ったか?」
「いえ、なんでもありません。今はまだ"王宮の犬"には使い道がありますので、ダンジョンが制御可能な状態であることを期待しましょう」
「俺の話はそれくらいだ。じゃあな、奢ってくれてありがとよ」
私がアッシュに反応すると、禿頭はなぜか礼を言って去って行った。
「アッシュ、なにをしたの?」
「ん?」
こいつ喋らない気だな。あからさますぎるわ。
大方、このテーブルに着いた辺りから洗脳でもしていたわね……。
「白状しなさい。今なら許してあげるから」
「あんな奴はエリーと会話するに値しない。下卑た視線に気付いていただろ?」
やっぱり怒ってたわね。で?
「……」
「でもぶん殴って脅したりしたらエリーが怒るだろうから、魔法で大人しくして喋らせた」
やっぱりやってたわね。
どっちの方法でも怒るわよ!
私だって交渉くらいできるのよ!
「……」
「喋ってることと頭の中を見比べて嘘はついていないことは確認した。あと、気配はたぶんモンスターだ。それだけわかったらもういいかなと思ったから帰らせた」
「人の頭を覗くなって言ったわよね……」
「エリー、怒らないって言ったよな……」
くっ、賢くなったわね……。
「次からはもう連れて来ないわ」
「えぇ……!?」
当たり前でしょ!?
「なんであんな気持ち悪いやつを選ぶんだよ。エリーがあんなのと喋るのなんて、嫌に決まってるだろ!?」
むぅ……心配してるのか……。
でも、それはちょっと過保護なのよ。
アッシュは子犬みたいな目でこっちを見ている。
「あんなのに靡くわけがないじゃない。そんなに私は信頼ないかしら?」
「靡くわけがないとは思うけど、それが仕事上で必要だったらやるだろ?」
よく理解してるじゃない。
「私の体でなんとかなるなら、それで魔族が良い状況になるなら躊躇する気はないわ。前にも言った通りよ」
「だから気になるし、守りたいし、過保護にもなる」
むぅ……。
「きみが好きだし、心配だし、大切だから……。問題もないだろ?」
「……うん。ありがと」
問題だらけな気もするけど、問題がないようにも思う。
まぁ、トラブルじゃないしいっか。
□王宮にて……
「新しいダンジョンだが、ルイン伯爵に探索させて良かったのか?もったいなかったのでは?」
浅慮ですと宣言してまわっているような酷いマヌケ面で王太子が王宮魔術師団長に話しかける。
せっかく見つかったダンジョンだ。
たとえ低級とわかっていても、産出されるドロップアイテムは王国の経済にはプラスだ。
鉱山が1つ見つかったようなものだからだ。
一方で王太子は浅慮にもその利益を独占したいのだ。
せっかく王家の直轄領、それも自らの管轄下にできたダンジョンだから。
王太子にとっては新しい財布を拾ったような感覚だった。
そしてすでに複数の探索者が入り、5層のボス部屋を確認している。
この状況であえてルイン伯爵に探索指令を出す理由がわからないようだった。
「実は鑑定したものたちが口々に危険な兆候を訴えていましてな……」
しかし、王太子に応対する王宮魔術師長は正当な懸念によって動いていた。
ダンジョンが発見される時には必ず神託が下るが、その内容は曖昧で解釈に困る場合があるのは事実だ。
そのため、神託だけでダンジョンランクを決定したりせず、必ずダンジョンの鑑定と探索が行われる。
その鑑定において何か問題があるのであれば、それは探索者が発見できていない何かが存在している可能性はある。
「なるほど。犬には良い指令だな。はっはっは。せいぜい場を整えてくれ。我々のためにな」
説明をされて理解した王太子はとたんにご機嫌になる。もはや王宮魔術師のことは視界に入れておらず、自らの懐に入ってくる金を期待してニヤニヤしている。
「今はまだ隠せているが、できればアッシュごと死んでくれ……」
「ん?なにか言ったか?」
「いえ、なんでもありません。今はまだ"王宮の犬"には使い道がありますので、ダンジョンが制御可能な状態であることを期待しましょう」
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