3 / 46
婚約破棄編
Ⅲ
しおりを挟む
「大丈夫だよ。ジルベルトの言葉を信じているよ。…と、言ってるけど?ロイト?」
レナードは、ジルベルトに向けていた微笑みを消し、振り向き様にロイトへと射るような視線を向けた。
「レナード、私達の言葉を信じてくれないの?」
可愛らしい声でレナードに話しかけたのは、ライラだ。今までロイトの陰で震えていた彼女は、ピンク色の瞳を潤ませてレナードを見詰めるが、レナード本人は不快そうに眉を片方上げている。
「失礼。貴女は?」
レナードの不快そうな様子に気付かないままに問われたライラは、フワッと花が咲き誇るような笑顔で答えた。
「私はライラです。レナード」
先程までの儚げな様子から一変、頬を染め、自信に溢れたような振る舞いに益々、レナードは顔を顰める。その表情も一瞬だけで次の瞬間には薄ら笑いを顔に貼り付けるとライラへと向き直る。
「そうですか。では、ライラ嬢。私は、これでも王族です。王族の名を軽々しく呼ばないでいただけるかな」
いつもは、笑顔を絶やさないレナードが、しっかりと不愉快そうな顔を作り、自分に見惚れるライラに注意する。
「え?」
レナードの返答が理解できないのか、ライラは一瞬呆けた。
というのも、初めて会った時にロイトもジョナサンもケネスも彼女が、笑顔で名前を呼ぶだけで頬を染めたからだ。彼女は、その経験則から笑顔で自分が名前を呼ぶと自分に好意を持つと知っていたから今も、また笑顔でレナードの名前を呼んだのだが、彼は好意どころか嫌悪感をライラに示している。
「叔父上!俺の婚約者だぞ!!」
レナードのあまりの対応にロイトが激昂するが、レナードは、そんなロイトにも咎めるような藍色の瞳を向ける。
「ロイト、彼女は王族ではないのだよ。身分という常識が、まるでわかっていない。私に対しては『様』か『王弟殿下』等の敬称をつけるべきなんだよ。それと身分の低い者は…」
「彼女は、婚約者だ!!」
顔を赤くし喚きながらレナードに食って掛かるロイトだが、レナードはどこ吹く風で彼の言葉をいなすとロイトを窘める。
「だから、なんだというんだい?ライラ嬢とジルベルトの婚約を勝手に破棄したからと言って、ロイトと婚約はしていないだろう?婚約するのにも様々な手続きをしなければならないがロイトはそれをこの場で正式に行ったのかい?行っていないだろう?ならばライラ嬢はただの男爵令嬢なんだよ。仮にロイトの婚約者だろうと彼女は結婚していない今の状態ではまだ王族ではないんだよ。そんなたかが男爵令嬢が私に話しかけて良いと思っているのかい?本当は話し掛けるのも私からなんだよ。それと上位の者の話を遮ってはいけないよ。これは君に言っているんだよロイト。私は王位継承順位第一位だ。王太子でもないロイトは第二位なのだからね」
「……」
「と、言うけれど私は君と違って王族としての力を無闇に振り回したりしないよ。今回は忠告だけにしておくよ」
レナードの正論にロイトは反論出来ないでいるのを確認したレナードは、長い睫毛を伏せて顔に影を落とし、嘆息するとジルベルトを組み伏せているケネスに話し掛けた。
「で?君は、いつまで無実のジルベルトを苦しめるんだい?」
レナードは、ジルベルトに向けていた微笑みを消し、振り向き様にロイトへと射るような視線を向けた。
「レナード、私達の言葉を信じてくれないの?」
可愛らしい声でレナードに話しかけたのは、ライラだ。今までロイトの陰で震えていた彼女は、ピンク色の瞳を潤ませてレナードを見詰めるが、レナード本人は不快そうに眉を片方上げている。
「失礼。貴女は?」
レナードの不快そうな様子に気付かないままに問われたライラは、フワッと花が咲き誇るような笑顔で答えた。
「私はライラです。レナード」
先程までの儚げな様子から一変、頬を染め、自信に溢れたような振る舞いに益々、レナードは顔を顰める。その表情も一瞬だけで次の瞬間には薄ら笑いを顔に貼り付けるとライラへと向き直る。
「そうですか。では、ライラ嬢。私は、これでも王族です。王族の名を軽々しく呼ばないでいただけるかな」
いつもは、笑顔を絶やさないレナードが、しっかりと不愉快そうな顔を作り、自分に見惚れるライラに注意する。
「え?」
レナードの返答が理解できないのか、ライラは一瞬呆けた。
というのも、初めて会った時にロイトもジョナサンもケネスも彼女が、笑顔で名前を呼ぶだけで頬を染めたからだ。彼女は、その経験則から笑顔で自分が名前を呼ぶと自分に好意を持つと知っていたから今も、また笑顔でレナードの名前を呼んだのだが、彼は好意どころか嫌悪感をライラに示している。
「叔父上!俺の婚約者だぞ!!」
レナードのあまりの対応にロイトが激昂するが、レナードは、そんなロイトにも咎めるような藍色の瞳を向ける。
「ロイト、彼女は王族ではないのだよ。身分という常識が、まるでわかっていない。私に対しては『様』か『王弟殿下』等の敬称をつけるべきなんだよ。それと身分の低い者は…」
「彼女は、婚約者だ!!」
顔を赤くし喚きながらレナードに食って掛かるロイトだが、レナードはどこ吹く風で彼の言葉をいなすとロイトを窘める。
「だから、なんだというんだい?ライラ嬢とジルベルトの婚約を勝手に破棄したからと言って、ロイトと婚約はしていないだろう?婚約するのにも様々な手続きをしなければならないがロイトはそれをこの場で正式に行ったのかい?行っていないだろう?ならばライラ嬢はただの男爵令嬢なんだよ。仮にロイトの婚約者だろうと彼女は結婚していない今の状態ではまだ王族ではないんだよ。そんなたかが男爵令嬢が私に話しかけて良いと思っているのかい?本当は話し掛けるのも私からなんだよ。それと上位の者の話を遮ってはいけないよ。これは君に言っているんだよロイト。私は王位継承順位第一位だ。王太子でもないロイトは第二位なのだからね」
「……」
「と、言うけれど私は君と違って王族としての力を無闇に振り回したりしないよ。今回は忠告だけにしておくよ」
レナードの正論にロイトは反論出来ないでいるのを確認したレナードは、長い睫毛を伏せて顔に影を落とし、嘆息するとジルベルトを組み伏せているケネスに話し掛けた。
「で?君は、いつまで無実のジルベルトを苦しめるんだい?」
10
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
破滅したくない悪役令嬢によって、攻略対象の王子様とくっつけられそうです
村咲
恋愛
伯爵令嬢ミシェルは、第一王子にして勇者であるアンリから求婚されていた。
しかし、アンリが魔王退治の旅から帰ってきたとき、旅の仲間である聖女とアンリの婚約が宣言されてしまう。
原因はここが乙女ゲームの世界であり、ヒロインである聖女が旅の間にイベントを進めたためである――と、ミシェルは友人である王女アデライトから教えられる。
実はアデライトは、悪役令嬢というゲームの敵役。アンリと聖女が結婚すれば、アデライトは処刑されてしまうらしい。
処刑を回避したいアデライトは、どうにかミシェルとアンリをくっつけようと画策するが……。
アンリの方にも、なにやら事情があるようで?
カクヨムにも転載しています。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる