君を想う

ゆっけ

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婚約破棄編

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「!」

 絶叫に驚いて、振り返ったジルベルトは驚きで言葉を無くした。

「ぶふっ!!ぶははははは!!!」

 一人一部始終を見ていたグレンだけが、耐えきれずに吹き出して、お腹を抱えて笑いだした。

 どうしてかと言うと彼ら三人の頭髪が無残にも毟れていたからだ。ロイトは激痛にのた打ち回り、ジョナサンは激痛を堪えて蹲り、ケネスは愕然としていた。そんな三人の後方にレナードが、三人の頭髪を握って無表情で彼らを見ていた。

「これはお仕置きだよ」

 無表情のレナードは毟った髪をその場で投げ捨てると三人に吐き捨てるように言った。

「なん…」

「僕らが何をしたと言うんだ!!」

 怒りで顔を真っ赤にさせて震えるケネスと唾を飛ばしながら叫ぶジョナサン。

「君達は、ジルベルトに何をした?」

 また、その場から掻き消えるレナード。今度はゴキン、ベキンという音が聞こえる。

「「「うぎゃぁぁぁぁぁ 」」」

 再び、絶叫が聞こえる。三人はレナードによって足の骨を折られた為、その場に立っていられずに倒れ込んだ。

「痛ぇーよぉー」

 屈強な肉体を持つケネスだったが、あまりの激痛に涙と脂汗が止まらない。

「俺の、俺の足がぁ!!!」

 激痛にその場で叫ぶ事しか出来ないロイト。身を捩れば、その少しの刺激で折れた患部に激痛が走るからだ。肉体の痛みに弱いジョナサンは早々に気絶している。白目を向いて、鼻水と涎は止めどない。

ーーー阿鼻叫喚。

 恥も外聞も無く、彼等は涙と鼻水を垂れ流している。足を押さえようにも肩の関節さえも外されて身動きができない。

「あ~ぁ、君達は一番怒らせてはいけない者を怒らせちゃったね。因果応報とだけ言っておくね」

 グレンは薄ら笑いを浮かべながら、その場で胡座を掻いて観戦しだした。

「ジルベルトが優しいのを良い事に色々させていたね?例えば、ライラとのデートの為、演劇のチケットを取らせ、四人分の代金は当然のように踏み倒し、他の生徒の前で罵ったり、制服を無意味に脱がせ、その服を時には裂いたり、時には燃やし、投げ捨て、踏みつけた。後は、ただ見ていただけなのに睨んだと因縁をつけ暴行した。顔を殴る事はしなかったね。バレるからかな?主に腹を蹴っていたね。短剣で試し斬りだとか言って、斬りつけたり、刺したりもしていたね。火掻き棒で『お前の穢れた魂を浄化してやる』と意味不明な事を言いながら、熱した棒をジルベルトに当てていたね。それから…」

 レナードは、指折り数えながら、一つ一つ彼等の行いを羅列していく。それに徐々に顔色を悪くするロイト達。

「もう良いだろ!」

 脂汗が止まらないロイトは真っ青な顔でレナードを睨む。この事態を引き起こしたという自覚がないまま。

「そうだ!俺達はライラとジルベルトの為にやったんだ!!」

 ケネスも顔だけレナードに向け、自分達に責は無いのだと宣う。その言葉にレナードははっきりとした侮蔑の色を強くする。

「…手前勝手な言い分だな」

 その言葉に三人はグレンを見た。そこには冷淡な顔をしたグレンと青い顔に瞳を濁られたジルベルト、眦を吊り上げて鬼の形相をしたナルサスがいた。

「だからって骨を折る事ねぇだろ!!!!」

 自分達の旗色が悪くなっている事に気付いたロイトだったが、こんな仕打ちをされる程の事をしたとは思っていない。何処までも自分が正しく、正義なのだと思っているし、ライラの関心を引きたかった行動に不随する影響を考えていなかった。それはレナードが言っていた王族としての自覚が足りないという事に帰結する。

「え?なんでだい?ジルベルトの心の傷は一生治らないんだよ?それに比べたら君達の髪は、また生えるし、骨だってくっついて治るじゃないか。軽いものだろう?」

 心底、不思議そうに首を傾げるレナードに三人は骨が折れて激痛に苛まれ、脂汗を流しながらも美しい笑顔に見蕩れてしまった。そして薄ら寒いものとその残酷さにも気付いた。

「ああ、それから『妨害』の件だけどね。まず、ロイトの階段を突き落とした現場にジルベルトのペンが落ちていたと言っていたけど、あれ位なら誰だってジルベルトの机から盗めるからね?本人が落としたとは限らないし、画鋲だって教科書を破ったのだって、誰だってできる。手紙だって、そうだよ。手紙が残っていれば、筆跡や紙、インク等から調べられるけどね」

 淡々と情報分析していくレナード。実際これらは、まず現行犯でなければジルベルトがやったとは断定できないモノばかりだった。

「これなら非力な女性でもできる事ばかりだね」

 そう言って、チラリとライラを見るレナード。それに釣られて、その場の全員が彼女に視線を向けた。

「え?私?…えっ、違うわ!!」

 突然水を向けられた事に戸惑うライラ。その様子は小動物のようだったがレナードはそんな様子に一切興味はない。

「事実、君が全てやっていたんだろう?」

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