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第13話:ポカポカの手と狼たちの銃
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国王の誕生日パーティーを終えて、夜の街を馬車で戻る途中のことだった。
ふと、街道の脇の茂みでうずくまる影が見えた。
「……?あれ、怪我してる?」
思わず馬車を止めてもらい、母と父の視線を感じながらも駆け寄る。
月明かりに照らされたその影は――灰色の毛並みをした大きな狼だった。前足から血が滲み、苦しそうに息をしている。
「リセル、気をつけなさい!」
「だいじょうぶ、見てるだけだから……。」
そう言いながら、そっと手を伸ばした。
狼は怯えた目で俺を見つめるが、牙を剥くことはしなかった。俺はゆっくりと掌を近づけ、心を落ち着ける。
「……大丈夫だよ。痛いの、なくなれ……。」
ポカポカの光が、手のひらに宿る。じんわりとした暖かさが、狼の傷口を包み込むように広がっていく。狼が小さく鳴き、耳をぴくりと震わせた。
「……もうすぐ、よくなるよ。」
その瞬間だった。森の奥から、たくさんの気配が迫ってくる。父が剣に手をかけ、弟子たちも身構える。
だが次々と姿を現したのは――人の姿に変化する狼たち。彼らの瞳は琥珀色に輝き、誇り高く俺を見ていた。
「……ウェアウルフ……?」
母が小さく息を呑む。俺が癒した狼の隣に、一人の壮年の男が跪いた。
「この子を助けてくれたのか……?」
「……えっと、うん。痛そうだったから。」
男は驚いたように目を見開き、やがて深く頭を下げた。
「我らは隣国のウェアウルフの一族。貴殿の優しさ、決して忘れぬ。」
父も母も驚きながら頷き合う。
祖父母も馬車から降りてきて、慎重に言葉を交わした。そのやり取りの中で、ウェアウルフの族長が立ち上がり、重々しい木箱を差し出した。
「これを受け取ってほしい。狩人が使う特別な銃だ。我らの友好の証として贈ろう。」
箱を開けると、銀の細工が美しい長銃が収められていた。今の俺には大きすぎるが、その存在感は圧倒的だ。
「わあ……!」
「まだお前には早いだろう。だが大きくなったら、きっとその手で正しく使える。」
父が微笑み、母が涙ぐむ。
祖父は「なんと立派な品だ」と目を細め、祖母は「ほらリセル、大事にしなさいね」と優しく頭を撫でてくれた。
ウェアウルフの一族は、さらに言葉を続けた。
「今回の縁をもって、我らもこの国と国交を開くとしよう。共に夜を守る者として歩もう。」
その後、城で報告を聞いた国王は大喜びだったという。
「リセルよ、お前は一夜にして国と国を繋いだのだ!」
俺は恥ずかしさに頬を赤くしながらも、胸の奥がじんわり温かくなった。
(もっともっと、大きくなったら……この銃を手に、きっとみんなを守ってみせるよ。)
馬車に揺られながら、胸に新しい決意を刻んだ夜だった。
ふと、街道の脇の茂みでうずくまる影が見えた。
「……?あれ、怪我してる?」
思わず馬車を止めてもらい、母と父の視線を感じながらも駆け寄る。
月明かりに照らされたその影は――灰色の毛並みをした大きな狼だった。前足から血が滲み、苦しそうに息をしている。
「リセル、気をつけなさい!」
「だいじょうぶ、見てるだけだから……。」
そう言いながら、そっと手を伸ばした。
狼は怯えた目で俺を見つめるが、牙を剥くことはしなかった。俺はゆっくりと掌を近づけ、心を落ち着ける。
「……大丈夫だよ。痛いの、なくなれ……。」
ポカポカの光が、手のひらに宿る。じんわりとした暖かさが、狼の傷口を包み込むように広がっていく。狼が小さく鳴き、耳をぴくりと震わせた。
「……もうすぐ、よくなるよ。」
その瞬間だった。森の奥から、たくさんの気配が迫ってくる。父が剣に手をかけ、弟子たちも身構える。
だが次々と姿を現したのは――人の姿に変化する狼たち。彼らの瞳は琥珀色に輝き、誇り高く俺を見ていた。
「……ウェアウルフ……?」
母が小さく息を呑む。俺が癒した狼の隣に、一人の壮年の男が跪いた。
「この子を助けてくれたのか……?」
「……えっと、うん。痛そうだったから。」
男は驚いたように目を見開き、やがて深く頭を下げた。
「我らは隣国のウェアウルフの一族。貴殿の優しさ、決して忘れぬ。」
父も母も驚きながら頷き合う。
祖父母も馬車から降りてきて、慎重に言葉を交わした。そのやり取りの中で、ウェアウルフの族長が立ち上がり、重々しい木箱を差し出した。
「これを受け取ってほしい。狩人が使う特別な銃だ。我らの友好の証として贈ろう。」
箱を開けると、銀の細工が美しい長銃が収められていた。今の俺には大きすぎるが、その存在感は圧倒的だ。
「わあ……!」
「まだお前には早いだろう。だが大きくなったら、きっとその手で正しく使える。」
父が微笑み、母が涙ぐむ。
祖父は「なんと立派な品だ」と目を細め、祖母は「ほらリセル、大事にしなさいね」と優しく頭を撫でてくれた。
ウェアウルフの一族は、さらに言葉を続けた。
「今回の縁をもって、我らもこの国と国交を開くとしよう。共に夜を守る者として歩もう。」
その後、城で報告を聞いた国王は大喜びだったという。
「リセルよ、お前は一夜にして国と国を繋いだのだ!」
俺は恥ずかしさに頬を赤くしながらも、胸の奥がじんわり温かくなった。
(もっともっと、大きくなったら……この銃を手に、きっとみんなを守ってみせるよ。)
馬車に揺られながら、胸に新しい決意を刻んだ夜だった。
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