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百六話 エレディア村12

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「その秘密基地ってのはまだなのか?」


「もうすこしだよ、おっさん!」


「おっさんひんじゃくー」


とエレディアの子供達に馬鹿に
され、手を引かれながら俺は今、
無理やり長い坂を上らされていた。


「というか、秘密基地って
言ってるけど、さっきから
ちらほら人と会うんだが......」


「だってみんなのひみつきちなんだもん。」


「むらでね、みっかにいっかっいはね、
そこにいかなきゃいけないるーるなの。」


「それは村の掟か何かか?」


嫌がる俺とは対照的に、のりのりで
村の女の子と手を繋ぎながら先を
進むタチアナが言った。


「そうだよー、きまりごと。」


「なら、秘密基地ちゃうやん。」


「言うな、隼人。」


「すみません。」











「ついたよ、おねーちゃん!」


「おぉ、驚いたな......」



「おっさんもほらみてみて!」


「......うぉ、すげぇ......」


俺を待ち構えていたのは、
まるでプライベートビーチのような
洞窟に隠された浜辺だった。
天井には人一人が通れるか通れないか
ぐらいの細い割れ目があり、そこから
月の光がスポットライトのように
海面を照らしている。
その照らされた海の中には
何か分からないが、青く光輝く
ワカメのようなものが生えており、
そのワカメのようなものから
発せられる青い光が、この薄暗い洞窟を
照らしている。


「ここは地上ではないのか? 」


「ちじょう?」


タチアナの発した言葉の意味が
わからない村の子供は、首をかしげる。


「あれだけ、坂を上ったんだ。
地上の標高とあっていても
おかしくない。ほら、タチアナ、この
海の奥、みて見ろ。」


「......小さな穴がいくつかあるな......」


「この海の中には小魚がいっぱい
いるし、外の海とここの海は
あの穴とつながってるんじゃないか?」


「あのね、おとうさんね、
あのあなにはね、ちかずいたら
だめだっていってた。」


「あのあなのそとにはきけんが
いっぱいだって!」


「おっきいおさかないるって!」


「なるほど。あの穴の奥は
我々が来たジュラ島周辺の
海というわけか。隼人、
もしかしたら我々はあの海底洞窟
を通らずとも、あの小さな穴を
こじ開ければ外に出れるかもしれないぞ。」


「いや、それは無理。俺、泳げないから。」



ここで見栄をはって、その案にのっても、
溺れるのは目に見えてるから、
ここで告白しておいた。




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