お隣さんがパンツを見せろと言うからプロ意識を持ってそれに応える

サトー

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呼び方(2)

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「俺もユウイチさんって呼んでもいいですか? 名前で呼びたいな……」

 リンちゃんみたいに呼び捨てで呼ぶのは俺には難しいけど、この呼び方ならたぶん大丈夫だと思う。変な間が空いた後、生田さんは「ん、ん、なるほど、それはいい」と言ってくれた。話し方もなんだかぎこちない。急に距離を詰めすぎたかなって少し焦ったけど、いいって言ってくれているから、たぶん大丈夫なんだろう。

 前の彼女と別れた後にも女の人との関わりはあったし、いろいろあったけど、でも、誰かとちゃんと恋愛するのはずいぶん久しぶりだった。だから、こんな些細なやり取りでも、「嬉しいな」という気持ちになってしまう。


「ずっと可愛い名前だと思っていたから、マナトって呼べるのは嬉しいよ」
「本当? 俺もすごく嬉しいです」
「たぶん、わかりにくいと思うんだけど、俺は……マナトの言葉や仕草の一つ一つに喜んでいて、それをすごく大事に思っているんだよ」

 与えてもらうばかりで、俺は何を返せるんだろう? とずっと思っていたから、生田さんの言葉にホッとする。俺が「もっと仲良くなりたい」と思っている時は生田さんも同じ気持ちでいるのかもしれない。そう考えると、なんとなく心が軽くなったような気がする。
 

「ユウイチさん、ユウイチさん……」
「……練習?」
「うん、はい、そうです!」
「……ふー」

 この人はユウイチさん……と頭の中で自分に言い聞かせた。

 俺と違って生田さんは練習なんかしないでも、「マナト」という呼び方へ自然に切り替えることが出来ていた。べつに勝ち負けを競っているわけじゃないけど、「自分から言い出したのに、これじゃあ負けてしまう……!」と思えてくる。
 だから、寝る前の支度をする時間は「ユウイチさん、ユウイチさん」って、なるべくくっついて過ごした。ユウイチさんは優しいから、そんな俺を鬱陶しがらずに「可愛い可愛い」って構ってくれる。

「眠いけど眠りたくないなー。寝たら今日が終わって帰らないといけないから……」

 隣どうしの部屋に住んでいるんだから、会おうと思えばすぐ会える。でも、明日になったら二人とも学校や仕事へ行かないといけない。ユウイチさんと過ごす、この穏やかな時間が終わって慌ただしい生活に戻らないといけないことが寂しく感じられた。

「マナトが帰ってしまうと俺も寂しいよ」

 本当にそう思っているのか、それとも気を遣って俺に合わせてくれているのか、俺には上手く読み取れない。ユウイチさんの淡々とした口調は、「それはそれ、仕事は仕事。だから仕方ない」と割り切っているようにも感じられたけど、でも、ユウイチさんは、嘘をつかないんじゃないかって思う。



「もう少し起きてる?」

 ユウイチさんからそう聞かれて迷わず頷いた。テレビは消えていて、二人とも寝る前の支度だって済んでいる。ベッドまで連れていかれたのに、起きているかと聞かれた。俺はその意味をちゃんとわかっているから、ベッドの中で自分からユウイチさんに身体をくっつけた。いっぱいユウイチさんって呼んで、大好きって伝えたい。二人とも気持ちよくなれたらいいなって思いながら。


「あ……」

 ユウイチさんが顔を俺のうなじに埋めている。絶対匂いを嗅がれているけど「ダメです」と言って、もぞもぞと体勢を変えることは出来なかった。俺の身体に触れているユウイチさんの指先が微かに動くのが、くすぐったくて気持ちいい。ちょうど服で隠れていない二の腕を撫でているのは、たまたまじゃなくて、あえてそうしているんだろうか。

「ん、んっ……」
「いい匂いがするね。永遠に吸っていたいぐらい」
「だめっ……、絶対だめです」

 いい匂いがするのはユウイチさんの家で借りたお風呂で髪や身体を一生懸命洗ったからだ。普段の俺はすごく汗かきでいい匂いなんてしないから、きっと、ユウイチさんに嫌われてしまう。これは本当なのに、俺が必死になるのが面白かったのかユウイチさんは「んふ」と笑った。

「マナト」
「あっ……!」
「恥ずかしいのかな……? 可愛いな……」

 耳の側で囁くようにマナトと呼ばれた瞬間、背中がぞくぞくして、身体が小さく震えた。

「マナトはいつでもいい匂いがするから、大丈夫だよ。……ここも、ここも」
「ひいっ……、だ、だめ、だめですっ」

 首筋の匂いをクンクンと嗅ぎながら、ユウイチさんの手のひらが俺の胸や脇、それに股間にも撫でるようにして触れていく。ユウイチさんの好きないい匂いがするという場所を教えるために。
 匂いを嗅がれたら恥ずかしい場所ばかりで、もしかしてセックスの時にもいっぱい嗅がれてしまっていたのかなと思うと恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

「可愛い、マナト。好きだよ」
「ま、待って……あっ、あ……」

 あ、これヤバイかも。マナト、と呼ばれながら触れられると、身体がじわじわと甘く痺れていくような、感覚に包まれる。それに気がついた時にはユウイチさんに身体をがっちりと捕まえられていて身動きが取れなかった。

 ああ、俺はこういう雰囲気が大好きなのかもって、ユウイチさんの腕の中で気づいてしまった。俺は単純だから、マナトって名前を呼んでもらえながら抱き合っていると、ユウイチさんとの距離がもっと縮まったような気がして嬉しい。
 ぽーっとしながら、「上脱ごっか」という言葉に頷いた。



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