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【その後】幼馴染みにかえるまで
★ただいま(4)
しおりを挟むヒカルがもともと住んでいた学生用のマンションを出て、ちゃんとした部屋を借りよう、という話になった時、当然俺は2LDKの部屋を借りて寝室は別々にするものだと思っていた。
それなのにヒカルは「寝室を分けるのは嫌だ」と絶対に譲らなかった。立地はルイの職場に近くていいし、家賃は全部俺が払ってもいいから、寝室だけは一緒じゃないとダメだ、と言って聞かなかった。
ヒカルが仕事の関係で知り合ったという、看板を出していない不動産会社も「……ヒカルとグルなのか?」と疑いたくなる程、1LDKの物件ばかりを推してくる。芸能人御用達だとかいう会社なだけあって、どの物件も洒落ていて新しいのに、なぜか俺の希望する2LDKの部屋は古くて、外観や間取りにクセのある物件ばかりだった。
結局、ヒカルの言う「二人で暮らすのにちょうどいい、広めの1LDK」に越してきて、もう二年が過ぎる。
「ルイ、俺のわがままを聞いてくれて、ありがとう。お互い忙しくて二人の時間が取れないことも増えてきたよね。だからさ、せめて家にいる時だけはルイの側にいさせて……」
この部屋へ引っ越して来た日の夜に、一本一本が細い睫毛を伏せて懇願して来るヒカルは、いつもよりもずっと繊細そうで、儚げに見えた。
いやいや、待てよ、いつもはどれだけ残業が続こうと「まだまだ足りない、もっと満足させて」とすごい力で俺の事を押さえつけて、何度も体を求めて来るような奴なのに、急に弱々しくなるなんておかしいだろ……と思ってはいたものの、結局俺は「いいよ」と頷いてしまった。
「良かった。ふふっ、俺、ルイの事を、ずっとずっと離さない……」
「いつも一緒にいただろ。何言ってんだよ」
恋人どうしになってからのここ数年は、子供の頃以上にベタベタしてくるな……と俺は半ば呆れていたのに、ヒカルはずっと「嬉しい」とデレデレしていた。
◆
「ヒカル、待って、あっ、いやだっ……!」
「ここ? ここが、気持ちいいの……?」
「あああっ……!」
「ふふ、モゾモゾしちゃって可愛い……」
大きく開かれた膝を閉じてしまいたいのに、ヒカルの汗に濡れた手がそれを許さない。痛いくらいに勃起した俺のペニスを、俺自身に見せつけるかのように、ぐ、と立てた膝が押さえ付けられる。
抱かれる事どころか、触れられるのも、誰かの肌の温もりを感じることも久しぶりの体は、長い前戯の果てにヒカルを受け入れただけで、意思とは関係なく敏感に反応してしまう。
射精に至るほどの直接的な強い快感ではないのに、より深く繋がろうとヒカルが下腹部を押し付けてきただけで、体のナカが熱くて苦しい。
ヒカルが、「ずっとずっと離さない」と言っていたのは本当だった。一緒に眠る日は、広いベッドの真ん中でヒカルに抱き締められながら眠るのが当たり前で、「今夜は、いい?」と求められる日は、しつこく何度も絶頂に導かれ、くたくたになるまで抱かれる。
そして、今夜もそうだった。
愛してるよ、と何度も囁かれながら、全身が蕩けてしまうくらい、ヒカルに尽くされた。柔らかい唇は音を立てて、何度も俺の首や胸に吸い付き、時々乳首を唇で挟んだ。
生暖かい舌が背中を這い回っている間、無意識に腰が揺れてしまうのを「ダメ、そんなふうに、一人でしないで」と、うっとりとした甘い声でヒカルに咎められた時は、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「は、あ……っ、んんっ……」
「まだ、キツイ?」
「ん、ううっ……」
しばらくこのままでいよう、と言うヒカルに頷きながらシーツを握りしめていると、胸を撫で回される。散々舐められながら、吸われた後の乳首に触れられて、じーんと痺れるような感覚に体が跳ねた。
ヒカルとの初めてのセックスでは、今になって思うと、とても乱暴で無茶なことをした。それ以降、回数を重ねていくうちに、少しずつ俺の体もヒカルの体も、男どうしのセックスに慣れていった。
だけど、一ヶ月も期間を空けると、体がヒカルを受け入れるのには、それなりに手間も時間もかかるし、覚悟もいる。
今も、ヒカルはいきなり腰を振るなんてことはせずに、ただ繋がったままでいる。
大丈夫? と言いたげな顔で、自分の性器が俺の体に馴染むのを待っていた。
普段から自分の指を使ってソコを慣らしておくのが一番いいんだろうけど、どうしても抵抗があって、俺はなかなかそうする事が出来ずにいた。
「ヒカル、ごめ……、もう動いてもいいからっ……」
「ルイ……」
腰を少しだけ振ってヒカルの事を促す。立てた膝を大きく開いたまま、ぎこちなく尻を動かす姿はきっと不格好に違いなかった。
ヒカルが覆い被さるようにして、ゆっくりと顔を近付けてくる。「大丈夫だよ、全部俺がしてあげるから」と頬や額に何度も唇が触れた。
「あっ……!」
「ここ、触ってあげる。気持ちい……?」
「あっ、あっ……」
ヒカルの長い指で、ペニスを扱かれる。先端に次々と浮いては垂れていく先走りのせいで、ヌチ、ヌチという音が嫌でも聞こえてしまう。
「あっ、ひかるっ、それ、だめ……」
「気持ちいい……? ルイのナカ、すごいよ、ぎゅーって、俺のを締め付けてくる……」
「あっ、いやだっ……!」
上下する手の動きに合わせて、繋がっている部分が締まるのが自分でもよくわかる。根元まで挿入されたヒカルの性器を咥え込んだソコは、奥への刺激を求めて、疼き始めていた。
「い、いやだっ、やめろよ……!」
「どうして……? こんなに気持ち良さそうなのに……。ねえ、一回出したら?」
「もっと、ゆっくり……っ」
イくのは嫌だ、と首を横に振ると、ヒカルが困った様子で笑う。気持ちよくない訳でもないし、恥ずかしいわけでもない。ヒカルの背中に腕を回して思いきり体を密着させた。
「すぐ終わりたくない、ヒカル、もっと……」
一度出し切ってしまうと、そのままグッタリしてしまう気がしていたから、自分だけ先に射精するのはどうしても避けたかった。とてもゆっくりしたペースになってしまうかもしれないけれど、ヒカルと少しでも長くこうしていたい。
「ルイ……」
目が合った、と思った瞬間にはヒカルに唇を塞がれて、めちゃくちゃに口づけられていた。すぐ終わりたくない、が上手く伝わったのか、射精を促そうとしてくるヒカルの手からも解放された。繋がっている部分も、まだ動かさないまま。
ただ、息をする暇さえも奪うような激しいキスで、ヒカルがどれだけ俺の事を求めているかは伝わってくる。俺の歯列や上顎をなぞるヒカルの舌に夢中で自分の舌を絡めた。
「んっ、んんーっ……」
「……ルイ」
唇が離れても、頭がボーッとする。唾液が溢れた口許を拭うのも忘れて、ヒカルの紅潮した頬をぼんやりと眺めていた。
「俺はずっとずっと、ルイの事を待っていたよ……」
「んっ……」
「……もっと早く、こうしたかった」
海外にいたんだからしょうがないだろう、と言い返すのが憚られるほど、ヒカルの眼差しは真剣だった。真っ白な胸元には汗が滲んでいる。
何を言い返すべきか迷っていると、抜けるギリギリまで引き抜かれた性器が、ゆっくりと再び挿入された。
「好きだよ、ルイ……」
「あっ、ああっ、ひかるっ……」
「俺には、ルイだけだよ……」
うっすらと微笑みを浮かべるヒカルはどことなくうっとりとしている。もっと早く、こうしたかったって? いつからだ? と聞き返したくなるような、ネットリとした言い方だった。
「ここが好き?」
「ああっ……! それ、いやだっ……!」
浅い所を何度も突かれていると、出し入れされるヒカルの性器の動きに合わせて、自然と腰がユラユラと揺れる。じっとりとした、全身を舐め回すような視線を感じながら、俺の体はヒカルを求め続けていた。
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