幼馴染みが屈折している

サトー

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【その後】幼馴染みにかえるまで

★一番可愛い(1)

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 勉強するだけだって言ってたのに。

 仰向けに寝転んだままヒカルを受け入れることしか出来ないのが悔しくて、そんなことを言った。息も上がっていて、言葉につっかえながらじゃないと話せなかったせいですごく聞き取りにくかったと思う。だけど、ヒカルにはしっかりと聞こえていたみたいで「ん?」と反応した後、ピタリと腰の動きを止めた。


「ああ言わないとルイは会いに来てくれなかったでしょ?」
「あっ……」
「それにさあ、少しイチャついた後、シャワーしてきてって俺に言われて、ルイは自分で身体をきれいにしてきたんでしょ? 違う?」
「ひ……、う、あっ……」

 身体を揺さぶられるような激しい動きじゃなくて、ペニスが完全に抜けてしまうギリギリまで腰を引いてからゆっくりと奥まで挿入されるという動きが繰り返される。じっとりとした動きは、俺の知らない場所を何度も擦る。ヒカルにしか気持ちよく出来ない場所。激しくされているわけじゃないのに、「お前だってこうして抱かれることを望んでいたんじゃないか」とねちねち責められているみたいだった。

 全部、ヒカルの言う通りだ。最初は勉強しようと思ってちゃんと教科書を開いていたし、ヒカルだってパソコンで何かをやっていた。
 だけど、「休憩しない? 何か飲む?」と声をかけられてからは……。正直何がどうなってそうなったのか全部は思い出せないけど、最初はふざけて身体を押したりくすぐったりしていただけだった。もう子供じゃないのにこんなことで喜ぶなんて。そんな気もしたけど、付き合うってそういうことなのかと思ったりもした。そこからは雪崩れるようにして、身体への触れ合いがどんどん濃くなって、最終的に俺はヒカルに押し倒されていた。

 したい、と直球でねだられてそれに俺はこくりと頷いて、ヒカルの言うように自分で支度をした。……だから、余計に悔しかった。「最近の俺達って会う度にセックスしてる! このままじゃ絶対ダメだ!」って思っているのに、簡単にそれを忘れて抱き合うことを選ぶ自分の意思の弱さが本当にイヤだ。それをヒカルには見透かされているような気がすることも。何もかもが悔しい。

「ん、あっ、あっ……」
「ルイの、気持ちいいのはここでしょ。ほら……」
「やだ、やめ、やめろよお……」
「あー……、やば、あったかくてめちゃくちゃ気持ちいい……。はー……、全部中で出すよ? いいよね?」

 必死で首を横に何度も振った。……一応、ヒカルはちゃんとゴムを着けている。たぶん、そういう趣味なんだと思う。「ダメ、中に出すのは嫌だ」って抵抗されると興奮するとかいう、闇の深い趣味。

 だけど、とすとすと奥を何度も突かれて俺も限界だった。今、言葉を発したら自分でも引くくらい喘いでしまう。だから必死で歯を食い縛っているしかなかった。
 それが面白くなかったのか、それともかえって「からかって遊んでやろう」とでも思われたのだろうか。ヒカルの目がすーっと細められる。俺の腰を捕まえていた手がお腹の上へ移動してきて、胸元へ向かってくる。今、胸を触られるのは絶対にヤバイ。だけど、必死に隠そうとした手は簡単に払い除けられてしまった。

「あああっ……」
「あー、乳首触ると、すごい締まる……マジで気持ちいい……」

 うっとりした声でそう呟いた後、ヒカルが何度も腰を打ち付けてくる。乳首へのもどかしい快感と、身体の奥を熱い塊でいっぱいにされる感覚。苦しいのに気持ちがよくて、それが少し怖い。
 しがみついたヒカルの背中が少し汗ばんでいる。自分がこんなふうになっている原因であるヒカルにすがることしか今の俺には出来なかった。うぐ、と呻きながら何度もモゾモゾと身を捩る。
 このままだと死ぬ、もう少しゆっくり。心の中でそう訴えながらヒカルの胸を叩くと、何かしらは通じたのかもう一度ペースをゆったりとしたものに戻して、胸を触ることもやめてくれた。



「ねー、ルイ。俺とセックスするの嫌い……?」
「へえ……?」

 なんでそんなこと? と聞きたくなるような質問だった。しかも、俺をじいっと見つめる視線は寂しげで悲しそうだ。まるで、本当は「俺が嫌いなの?」と聞いているみたいに。

「……ううん」

 嫌いじゃない。むしろ嫌いじゃないから困っている。最近は会う度に抱き合っていた。セックスしてそのまま泊まって、翌朝も……ということだって何度もあった。セックスの回数が十回を越えた時に数えるのを辞めてしまったから何回したかはわからない。
 これって普通のことなのか? それとも俺ってだらしない? って俺は思うけど、ヒカルは気持ちいいからいいじゃんっていつだってケロッとしている。そりゃあ、今までいろんな女を抱いてきたお前にとっては些細なことだよなって、時々俺はもやっとする。


「嫌いじゃない……」

 ヒカルの目を見てそう伝えてから、ぎゅっと抱き寄せて身体を密着させた。今、俺がモヤモヤと考えていることを伝えたってますますヒカルが落ち込むだろうから。
 たくさんの異性から「ヒカル君が好き」と選ばれ続けてきたはずなのに、ヒカルの心は空っぽで満たされていなくて、不安定なのだと。付き合うようになってからはそう感じることが多々ある。
 俺がヒカルとのセックスに夢中になりすぎることについて悩んでいるのと同じで、ヒカルはヒカルで、俺の些細な一言で不安になったり、いろいろ考え込んだりしているのだろう。

 その全部に気がついてやれるわけじゃないから。こうやってわかるように合図を送ってきている今はヒカルの気持ちに寄り添おうと思った。
 よしよし、と頭を撫でるとヒカルの肩がピクリと震えた。明るい色の髪はさらさらしていてさわり心地がいい。
 大切にしてやりたい。今と形は違うけど、子供の頃からそんなことを俺が考えていたなんてヒカルはきっと知らないだろう。

「じゃあ好きって言って。俺とセックスするのが好きだって」
「ええ……」

 好きだけど。面と向かって好きだと言うのが未だに俺は恥ずかしい。しかも、今はセックスの最中……というか繋がったままだし。たぶん、それをわかっていて、あえてねだっているのだと思う。
 俺の気持ちを試すような言動と、それから、ぐりぐりとさらに奥まで入ってこようとする熱い塊に「この野郎」とヒカルを軽く睨み付けてみたけど、向こうも一歩も引くつもりはないらしくじっと見つめ返されるだけだった。


「‥…好きだ。ヒカルのことが」

 セックスが好きだからこうしているんじゃない。ヒカルのことが好きだからだ。べつにヒカルの機嫌をとろうと思ったわけじゃない。ただ、意味が全然変わってしまうのが嫌だったから、すごく照れ臭かったけど、ちゃんと伝えないといけないと思った。

「ルイ」

 なぜかすごくビックリした様子で目を見開いた後、ヒカルはぐしゃりと顔を歪めた。バカだなーと思う。好きじゃなかったら一緒にいるわけがないのに。

「ごめん、ごめんね」
「あっ……」

 唇が塞がれてヒカルの手のひらが俺の身体を撫で回す。真っ白な手が俺の性器を包み込みそのまま上下に扱き始めた。自分で抜く時よりもヒカルの手の動きは何倍も気持ちいい。プロみたいだよなってこの前言ったら「なに? プロを知ってるの?」ってヒカルが不機嫌になったことを思い出す。
 それぐらい気持ちがいいのに、身体の自由も奪われて深いキスで呼吸さえもままならない。このまま入ったままの状態でイかされてしまったら、本当に頭のどこかが焼ききれてしまう。折り曲げた膝に体重をかけられていて脚を動かすことも出来ない。俺に出来たのは、ヒカルにされるがままで、唸ることだけだった。

「んっ、ん゛んっ……んぅ……」

 身体が何度か跳ねて、それから俺はヒカルの手と自分の身体を思いきり汚した。

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