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【その後】幼馴染みにかえるまで
★一番可愛い(3)
しおりを挟むセックスするわけじゃないのに、こんな格好で人のベッドで寝るなんて変な感じがする。
あまりなれない状況に居心地の悪さを感じていると、ヒカルが自分の着ていたものをポイポイ脱ぎ始めた。一切躊躇せずに下着まで脱いでから、スルリとベッドへ潜り込んでくる。
「これ、とっちゃおっか」
「……うん」
ヒカルの手によってバスタオルがずらされて俺も裸になった。ベッドの中でヒカルの長い手足が絡みついてくる。シャワーを浴びていた俺よりもヒカルの身体は温かくて、でも少しだけ夏の雨の匂いがした。
温かいね、とヒカルの唇のが俺のうなじのすぐ側で動く。それがくすぐったくて、なんだか照れ臭い。他に目的もなく抱き合うためにこうしている。普段、裸で抱き合うのはセックスの時か、終わって……いよいよ寝るという時だけだ。
「……ヒカルも、服を着てる方がかっこいいかもな」
「え? そう?」
「うん。服を着てないと……"ヒカルみ"が濃すぎるっていうか……。ヒカルって服でいろいろ調和されてたんだなって思った」
「どういう意味!?」
俺が適当に言った言葉にヒカルの反応が大きくなったのが嬉しくてつい笑ってしまう。
本当は服を着ていても、着ていなくてもヒカルの顔はかっこいいと思ってる。ただ、裸でいると真っ白い肌があまりにも綺麗すぎるのと、引き締まった腕や背中が俺と違いすぎるのとで、面食らう。好きだと言われても、こんなに何でも持っている奴がなんで俺を? と信じられない気持ちになる。
「裸だと顔だけ浮いてるってこと?」
「んー? うそうそ、ヒカルは何をしてたってかっこいいよ。自分でもわかるだろ?」
うん、と素直に頷くヒカルに「すげえなあ」って俺は感心してしまう。俺には絶対出来ない、顔のいい奴だけに許された特権だ。
「……さっきは、ごめんね」
嫌だったでしょう、とヒカルが俺の身体を抱き締める。俺もヒカルの腕をぎゅっと掴んだ。腕の中におさまっているのは俺の方だから格好だけ見れば「守られている」というイメージに当てはまるのは俺の方なのだろうけど、慰めてやろう、なんとかしてやろうという気持ちでいた。
「べつに。俺もさ、何をしていたとしても、ヒカルといる時間だって大事に思えばよかったんだよな……。ごめん、変に意地を張って、感じ悪いこと言ってさ」
本当は「嫌い?」と聞かれたことについては「そんなわけないだろ、バカッ! なんでわかんないんだよ!?」ってちょっとだけムカついているけど、ヒカルだって悪いと思っているならわざわざ怒ることもないだろう。
「ルイは優しいね」
「そうだよ。俺はヒカルにだいぶ優しい」
窓の外はまだ雨が降り続いていて、遠くで雷が鳴っている。でも、俺とヒカルの間に流れる空気は和やかだった。それこそ、心地がよくて起き上がる気になれないぐらいには。
「あっ」
俺の腰にヒカルのが当たっていた。顔だけで振り返って、立ってる? と目だけで問いかけるとふいっと視線を逸らされる。これはあれだ。何も言うな、聞くなの時の態度だ。
さっきまで、ちょっと当たっているとは比べ物にならないようなことをしていたのに、どうして気まずそうにするのか俺には不思議で仕方がなかった。
さっきはさっき、今は今ということなんだろうか。ごろりと身体の向きを変えてヒカルと向き合う。身体を密着させるとピタリと閉じた太ももの間にヒカルのモノがおさまる。俺は何も言っていないのに何かを諦めた様子でヒカルがふーっとため息をついた。
「……もう何もしないことになってるから」
「はあ? なんだ、そんなことを気にしてたのかよ……」
「ルイ、約束を破られるの一番嫌うし……」
「ははっ、そこは真面目なのかよ」
こういう健気な部分もあるから憎めない。バカにしているんじゃなくて、「可愛いところもあるじゃん」という意味で俺は笑っているのに、ヒカルは不満そうだった。
「……じゃ、じゃあさ、ヒカルは何もしなければいい。そしたら約束も守ったことになるだろ?」
体力は残っていなかったけど、でも、手で抜くくらいは出来ると思って、ヒカルの硬くなったペニスへ手を伸ばした。ヒカルはすごく驚いていたけど、「いいから」と押しきったらおとなしくなった。
くっついていただけで、こうなる? と俺は手の中の熱い塊を何度も上下に扱いた。さっき、ゴミ箱に捨てられていたコンドームにだっていっぱい出ていたのに。俺と、抱き合っていたから? と思うと堪らない気持ちになる。顔を上げると薄く唇を開けたヒカルと目が合った。
「ん、んぅ……」
声を漏らさないように歯を食い縛ってシーツを握りしめている様子を見ていたら、なんだか俺の顔も熱くなってくる。いいってことだよな? ヒカル、俺の手で気持ちよくなってるのか、と思うとドキドキと胸が高鳴る。抱かれている時とは違う興奮だった。
「……約束破ったって言わないから、俺も触って」
小さな声でそう頼む俺をヒカルは笑ったりしなかった。女のように綺麗な真っ白な手で俺の性器を包み込むと、先端を親指の腹で撫でてカウパーを丁寧に塗り広げていく。俺だってさっき何度も達していたのにヒカルと同じだった。
約束破りを気にするのも、純粋に快感を求めるのも、「嫌いにならないで」と寂しそうにするのも全部がヒカルなんだよなと思う。口で言うのは簡単だけど、全部を受け止めるとのはきっとすごく大変だ。また、迷ったらこんなふうに少しだけ戻れればいいんだろうか。ヒカルが、不安になった時に、少しでも今こうして抱き合ったことを思い出してくれればいいのに。
どちらからともなく荒い呼吸のまま唇を重ね合わせる。深いキスもしたけど、ただ触れあうだけのキスもたくさんした。音をたてて触れ合っていると、気持ちがよくて、幸福だった。微笑んでいる時と同じ形をしているヒカルの唇を俺は夢中で追いかけた。
ヒカルの腕の中で、雨の音が遠くで響く。シーツのシワも、さっきの熱も、なんだか遠い記憶みたいだ。ヒカルの体温と、夏の雨の匂いが混ざったこの瞬間が、ずっと残る気がした。
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