元お隣さんとエッチな暮らし

サトー

文字の大きさ
5 / 143

ユウイチさんの心の闇(1)

しおりを挟む

 家族以外の人と一緒に暮らすのは、ユウイチさんが初めてだった。



 ユウイチさんは「二人で生活するんだから当たり前だよ」って笑っていたけど、「こんなに広い部屋を借りてもいいのかな……!?」って戸惑ってしまうくらい、前のマンションに比べて部屋数の多い、新しくて綺麗な物件で暮らせることになった。
 もちろん、良い部屋の家賃は高い。生活費や個人的な出費のことも考えると、俺の収入ではユウイチさんと半分ずつ払うとしても正直言ってかなり厳しそうだった。
俺の給料に合わせるとしたら、もっと古くて狭い家に住まないといけないんだ……って気まずく思っていたら、ユウイチさんが「収入が多い方が、家賃をたくさん払うのはべつに普通のことだから気にしなくていい」って、言ってくれた。

 六階建てのマンションの二階の部屋を借りるけど、ちゃんとエレベーターもついているし、オートロックも、共用の宅配ボックスも使える。
 しかも……マンションの地下にはちゃんと駐車場もある! これでやっと俺も車が買えるんだって思うと、嬉しくて嬉しくて、引っ越しの前日はなかなか眠れなかった。


 だけど、当然一緒だと思っていた寝室は、別々にされてしまった。ユウイチさんがそれだけは絶対に譲らなかったからだ。

「二人で眠れるベッドだってあるし、寝室は一緒じゃダメ? なんで、わざわざ2LDKの部屋を借りるんですか?」
「……マナト、よーく考えてみて欲しい。365日俺と一緒なんだよ」
「でも……」
「365日、俺がいるということについて、よく考えて」

 俺は365日一緒でもいいし、それにユウイチさん、出張とか行くじゃないですか……と言い返そうとはした。だけど、とてもじゃないけどそんなことは出来なかった。なんというか、迫ってくるユウイチさんの「圧」が強すぎて「確かにこの人と寝室が一緒だと、なんだかヤバイのかもしれない」と感じたからだ。それで、ユウイチさんの迫力に押し負けて「……わかりました」と頷いてしまった。


 好きあっていて、それで一緒に生活するのに、寝室が別ってどうなんだろう……と思っていたけど、家具を選びに行った時に「マナトの部屋のカーテンは? どういう色にする?」「マナトの部屋は収納が小さいから、ラックを買うのはどうだろう」というふうに、ユウイチさんからいろいろ気遣って貰えたのは嬉しかった。

「……いいのかな。エアコンも買って貰って、それで、家具もこんなにたくさん……」

 部屋なんて帰ってきて眠れればそれでいいと思っている、と伝えると「マナト専用の部屋なのに? ちゃんと良いものを買おう」って、ユウイチさんにすごくビックリされてしまった。

 ……家族と一緒に狭い県営団地に住んでいた頃は、妹と弟のことは好きだけど俺にも「一人になれる場所」が欲しい、とずっと感じていた。嫌なことがあった日くらいは、誰もいない部屋で横になって一人でぼーっとしたい、と思っても、事情を知らない弟か妹のどっちかは必ず部屋に入ってくるし、些細なことで喧嘩を始めれば、手を出す前に「やめろよ! ケンカすんなっ!」と止めに入らないといけなかった。
 だから、実家を離れて一人で暮らす時は寂しいとも思っていたけれど、生まれて初めて自分だけの居場所が出来たことが嬉しかった。……そんなことユウイチさんには話していないのに、「二人で一緒に暮らすとしても、自分だけの部屋は大事にした方がいい」って、俺だけの部屋をくれた。
 
 ユウイチさんのことを、自分だけの居場所や時間を大切にしてくれるなんてすごく大人だな……と思ったし、優しい人だって心の底から尊敬した。

「あの、俺、新しい部屋を絶対大事にします。本当にありがとうございます……」
「良かった」

 新しい家具をたくさん買って貰った日に、ユウイチさんには何度もお礼を言った。こんなにたくさんいいのかな、って思ってしまうくらい良くして貰って、嬉しいような申し訳ないような……。俺が出世できたら、たくさん恩返しをしないとなー、と考えながらユウイチさんの側をひょこひょこと歩いて、家へと向かっている時だった。

「……新しい家のことだけど」
「はい!」
「マナトの部屋には出来るだけ、アロマやルームフレグランスといった、そういう類いのものは一切置かないで欲しい。……マナトの部屋本来の匂いが損なわれるから」
「……え?」
「あと、今日新しいベッドを注文したことだし、今、マナトが使っている布団は俺が引き取ろうと思う」
「へ……? だ、ダメです……、あんな古くて汚い布団……。絶対ダメです……!」

 やっぱりユウイチさんはユウイチさんだった。俺よりもずっと大人で、優しいけれど、隙あらば布団を百万円で売れとしつこく迫ってくるし、俺が嫌がれば嫌がるほど、ニヤニヤ笑って「可愛いな……」と大喜びする。

 結局粗大ごみの回収予約をしようとしているのがバレた時には、「お願いだから譲って欲しい」と、ユウイチさんは土下座をしてきたけど、何に使われるかを想像するだけで寒気がした。
 だから、「ちょっと匂いを嗅ぐだけだから」と必死で足にすがり付いてくるユウイチさんを無視して、心を鬼にして処分しないといけなかった。……家族以外の人と暮らすのって、楽しいことも嬉しいこともたくさんあるけど、思っていたよりもずっと大変なんだって、一つ学べた。


 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...