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★大事な儀式

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 目を覚ますと、ふかふかのベッドの上にいた。

「ビビっ……!」

 ぴい、と鼻を鳴らすよりも先に、ナオちゃんが俺の名前を呼んだ。助けてくれたの? と俺の大好きな、凛々しい顔を覗き込むと、それだけでナオちゃんは目を潤ませた。

「良かった……! もう二度とビビが目を覚まさないんじゃないかと思ったら、気が気じゃなかったんだぞ……!」
「くーん……」
「いつまでも帰って来ないからきっと何かあったんだと思って……。ビビの乗るバスを調べて、それでそこら中を探し回っていたら、ビビの汚れた服だけが……」

 そこまで話してから、ナオちゃんはおいおい泣いた。ボタボタと大粒の涙が落ちてくる。それを見ていたら、俺も悲しくなってしまって「服もお金も、みんな置いて逃げてしまって、ごめんなさい」と泣いた。
 もちろんナオちゃんは俺の言葉がわからないから「痛かったな、怖かったな」「もっと早く助けてやれなくてごめん……」と謝るばかりだった。

 やっぱり、俺なんか、ただの醜い獣に産まれて、ずーっとおとなしく暮らしていれば良かったんだ。ナオちゃんとお話ししたり、トレーニングをしたり、エッチをしたりする事は出来ないけど、こうやって悲しい思いはさせないですんだはずだ。

 その日の夜はナオちゃんにぎゅうって抱き締められながら眠った。



 それから、十日経っても、俺は人間の姿になることが出来なかった。
 ナオちゃんは毎日俺に魔力を補充してくれるけど、なぜかすぐに空っぽになってしまう。まるで、体のどこかにぽっかり穴が開いてしまったみたいだった。

「まあ……のんびりするのも、たまには悪くないよな」
「ぴい……」
「すぐに元に戻れるようにしてやるからな」

 俺がずっと獣のままでいるせいか、だんだん俺が何を訴えているのか、ナオちゃんはわかってきたようだった。
 お腹が空いたよ、と鳴けば一口大に千切ったパンと、熱すぎないスープ、ふかした芋を食べさせてくれる。眠いよ、と鳴けばベッドまで抱っこで運んでくれる。

 ナオちゃんは、獣の姿の俺を背負ったままトレーニングをするし、散歩にも連れていってくれる。相変わらず近所の人は俺のことを「ブタ? 小さい熊?」と聞くけれど、そのたびにナオちゃんは「違います!」と元気よく否定する。

「俺の世界一可愛い大事な使い魔ですよ!」
「そうなの? ……まあ、確かにブサ可愛いね」
「ブサ……? 見てくださいよ! この可愛いムチムチのあんよを! 怒った時は、地面を引っ掻いて威嚇するんですよ! 野性味があってすごい可愛いですよね!?」
「ぴいい……!」

 やめて、恥ずかしい、やめろよお! と鳴いて暴れると、ナオちゃんは「恥ずかしがるなよお~」と俺を抱き上げて頬擦りする。近所の人がめちゃくちゃ引いているのに、ナオちゃんはそれにはお構いなしで、いつも俺のことを自慢する。

 一緒に魔法少女のアニメを見たり、食事の世話をしてもらったり、このまま獣でいるのもなかなか悪くない。家の手伝いは出来ないけれど、いなくなって迷惑をかけることも無ければ、魔力を集めてもらう必要も無いからだ。


「ビビ……」
「くーん……?」

 時々、抱っこをしてもらっている時や寝る前なんかに、ナオちゃんが顔を近付けてくる時がある。そして真剣な顔で何かを考えた後、「やっぱり、やめとくか……」と残念そうな顔で離れていってしまう。

「ぴい、ぴい」
「ビビは今、獣だろ? 俺がしたいからって、合意も無しにするのはな……」
「くーん……」
「……可愛いなあ。……でも、勝手にチューなんかしたらマズイよなあ……!」

 俺もしたいよ、ナオちゃんが大好き、といくら前足でツンツンしても、ナオちゃんは「可愛いいいいい……! ああ……、何も知らないビビにそんなこと出来ねえよお!」と床を転がり回るばかりで、俺の気持ちは全然わかっていないみたいだった。

 獣でいるのも悪くないと思ったけれど、「大好き」という気持ちが伝わらないのは寂しい。やっぱりもう一度人間に化けられるようになりたいなあ、それで、ナオちゃんとお話をしたり、……チューも、エッチもしてみたいなあ、と思う。

 街で絡まれた時は、とても嫌な思いをして、すっかり元気を無くしてしまっていた。だけど、やっぱりヤられっぱなしは悔しいし、一人前になってアイツ等を見返してやりたい。あんなことくらいで負けてたまるか、だって俺はナオちゃんの使い魔なんだから……、と心の中が勇気で満たされた時だった。

「……び、ビビ!?」
「あ、あれ……? 俺、足でちゃんと立ってる……? も、もしかして……!」

 両手で頬や腕、腹、あちこちを触って確かめる。毛がなくてツルツルした体。オマケにさっきまでと、見えている景色が全然違う。

「人間の姿だ……! やった……! やったあ!」
「うおっ!? 待て待てビビ……! その格好はマズイだろ……!」

 自分が服を着ていないことも忘れて、ナオちゃんに抱き着いて大喜びをしてしまった。もちろん素っ裸だってことを気付いた時には悲鳴をあげたし、すぐにベッドの中へ避難した。
 それから、「おかえり」と抱き寄せられて、ナオちゃんと初めてキスをした。



 使い魔とご主人様の契約を結んでもらう日。

 ナオちゃんは約束通り部屋中を装飾して、たくさんのご馳走を作ってくれた。 
 ナオちゃんのトレーニング器具が片付けられて、ハートのバルーンと色とりどりの花でいっぱいになった部屋はいつもと雰囲気が違う。
 文字の形をしたバルーンを組み合わせて作った、「LOVE」という飾りがいかにもナオちゃんらしい。
「POWER」「MUSCLE」という全然関係ない単語も混ざっているのも面白い。
 全部俺のため……? と思うと、幸せすぎて、夢を見ているみたいだった。

「……今日で一人前になれるんだろ? おめでとう、ビビ……」
「うん……」

 きっと、今日の事は一生忘れられない、それくらい大切な日になるって、感激して目を潤ませていたら、ナオちゃんが「今日は特別な儀式をするだけにしよう」なんて言い出した。

「えっ!? エッチは……!?」
「一日に二つは欲張りすぎだ。大事な儀式だけで、今日は充分だろ……?」
「そんなあ……」

 儀式が完了してちゃんと契約を結べた後は、俺だけのご主人様であるナオちゃんと当然エッチをするものだと思っていたから、すごくガッカリした。
 髪をちゃんと梳かして、新しい服だって着た。「いい匂いだ」って思ってもらえるように、耳の裏や手首の内側に石鹸の香りの練り香水だってつけている。
 早くナオちゃんと愛し合いたい。でも、ナオちゃんは「時間はたっぷりあるから焦らないでいい」「今日は人間の姿のビビと、添い寝がしてみたい」と言う。

「……俺、楽しみは大事に大事に取っておきたいんだ」
「……うん」

 ナオちゃんも俺とエッチがしたいと思ってくれてるんだ、ってことはちゃんと伝わったから「わかった。エッチは楽しみに取っておくね」って返事をすることが出来た。


「ところでビビ。俺達はどうやったら、契約を結べるんだ……?」
「ナオちゃんは何もしなくて大丈夫だよ! 全部、俺に任せて?」

 ここに座って! とベッドで上体を起こした格好になってもらってから、ナオちゃんに目をつぶって待つようお願いをする。

「ビビ? おーい……」
「まだ、待ってて……」


 急いで準備をしないといけない。
 着ているものを全部脱いでから、そうっとベッドの上に上がった。そのまま、ソロソロと四つん這いでナオちゃんに近付く。

「ナオちゃん……。ま、まだ、俺が良いって言うまで、目を開けないでね……? 俺、ナオちゃんが大好き。ずっと好きでいてもいいですか…? 一生懸命頑張るから、良かったら俺だけのご主人様になってください……」

 少し迷ったけど、目を閉じたままでいるナオちゃんのことを眺めてから、唇にキスをした。
……使い魔が人間と契約をするために必要な儀式の内容は「何も身に付けていない状態で、ご主人様にありったけの忠誠を誓う」ということだった。
 生まれた時はみんな裸だったのだから、その姿と忠誠を誓う気持ちを受け入れてもらえれば、使い魔と人間は強い絆で結ばれるのだと言う。

「ん……」

 ナオちゃんの舌が俺の口の中に入ってくる。温かくって、柔らかい部分が触れあって、気持ちがいい。
 人の姿でいる時に、裸は二回も見せてしまっているけれど、今日が大事な儀式の本番なのだと思うとすごくドキドキした。触れられてもいないぺニスからは、もうだらだらと汁が垂れている。

「ん、んんっ……」

 ぴちゃぴちゃ音を立てながら、ナオちゃんは俺の歯の裏を舐めたり、舌を吸ったりした。 まだ、ナオちゃん以外の誰にも見せたことのない肌はすごく敏感で、与えられる刺激に対して鳥肌が立つ。ぴくん、ぴくんと体を震わせながら、ナオちゃんの舌を必死で受け入れた。

 忠誠を誓うってアレで良かったのかな……? もっと難しいことを言わないとダメだったのかな……? 他の所を舐めた方が良かったのかな……? と迷う気持ちはあったけど、勇気を出して「目を開けて……?」とナオちゃんを促した。



「……ナオちゃん、俺だけのご主人様になってくれますか……?」

 絶対絶対ナオちゃんと契約がしたかったから、目を開けたナオちゃんに、ぽつっとした乳首も、小さな臍も、痛いくらいに勃起したぺニスも、手で隠さずに全部をさらけ出した。

「うう……」

 獣の姿で尻の写真を撮られた時よりも、ずっとずっと恥ずかしい。目は潤んでいるし、顔も熱い。だけど大事な儀式だからナオちゃんから目を逸らさずに、頑張って耐え続けた。

「お……」

目を開けたナオちゃんは、ぎょっとした表情を浮かべた後、絶句していた。儀式の内容も伝えていなかったし、引いてしまったのかもしれない。
 心の中の本音は「いやだ、見ないで。恥ずかしい」だけど、「ナオちゃん俺の体、全部見て……?」と声を震わせながら、なんとか気持ちを伝えた。



「わあっ……!?」

 ナオちゃんの腕、と思った瞬間には、がっしりと体を捕まえられて、ベッドに押し倒されていた。

「ナオちゃん……?」
「……無理。もう無理、限界だ。今日はエッチもする」
「へ……!?」
「特別な儀式って、こんなにエロイ事だったのか……ビビが、俺以外と契約を結ばなくて良かった……本当に良かった……」
「ナオちゃ……ん、んぅ……」

 体を押さえつけられて、「好きだ、ビビ。俺だけの使い魔になってくれ」とさっきよりもずっと荒々しく口づけられた。
 ナオちゃんが俺だけのご主人様になってくれたということは、俺は一人前になれたわけで……。まだその実感がほとんど無いまま、誰にも許したことのない体にナオちゃんの手が触れる。

「あっ……」

 胸を触られるのももちろん初めてだった。女の人みたいに膨らんでいるわけでもないのに、大きな手で両胸を何度も揉まれ、時々指で乳首を刺激される。
 このまま、皮膚の下の薄い筋肉が溶けてどろどろになっちゃう……と感じてしまうくらいナオちゃんは俺の胸をいっぱい愛してくれた。

「や、いやあ……」
「ビビ、顔を隠さないで。全部見せて……」
「うう……」

 胸で感じている時の顔を隠せないのは、儀式の時と同じくらい恥ずかしい。でも、大好きなナオちゃんのためにいっぱい頑張るんだって決めたから、「はい」と頷くことにした。
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