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ビビとナオちゃん
しおりを挟む初めてエッチをして以来、ナオちゃんは何かに目覚めてしまったらしく、自分の腹筋に精液をかけられるのを好むようになってしまった。
しかも、「固くてすごく立派だろ? どう?」と、ちょっと威張ってくる。こんな良い筋肉にぶっかけられるなんてビビも嬉しいだろ? とでも言いたいのかもしれない。
すごく恥ずかしいけど……ナオちゃんが喜ぶから、エッチのたびに俺のペニスで腹筋をツンツンしてあげる。それから、胡座をかいたナオちゃんに跨がった状態で性器を受け入れて、イク時は全部ナオちゃんの腹筋にかける。
ちょっと変だけど、俺の大事なご主人様だから仕方ない。
ナオちゃんのために、エッチの後もそうじゃない日も、夜寝る時は、俺は獣の体に戻るようにしている。同じ使い魔達からいじめられて来た醜い姿だけど、ナオちゃんが「世界一可愛いだろ」と言い張るからだ。時々、魔法手帳の日記に俺の写真を載せては「ほら! みんなビビちゃんに触ってみたい、可愛いって言ってるだろ!」と大騒ぎする。
俺が時々、ナオちゃんの日記に「ぶさいくなおれに やさしくしてくれて ありがと」と書き込むと、「そんなこと言わないで!」「可愛いよ」「ビビちゃん、大好き」と優しい言葉が返ってくる。ナオちゃんのおかげで、獣姿の俺を見て、バカにするヤツばかりじゃないんだって知った。
ナオちゃんと契約してご主人様になって貰ったことは、二人でエリちゃんに報告しにいった。エリちゃんは「……な、上手くいっただろ」と得意気にしていた。
「……ビビ、一人の人間にずっと自分だけを見てもらえるのは、いいもんだろ? 私は羊四百匹も一緒に見てるからな……」
寂しい思いをしてきたビビには、そういうヤツが必要だって私はわかっていたんだ、って長かった髪をバッサリと切ったエリちゃんは俺とナオちゃんの事を祝福してくれた。
ナオちゃんは相変わらず、世界中に張り巡らされた糸状の魔力の点検と補修であちこちに自転車で出掛けていく。体を動かしているうえに、魔力を扱うからいつもヘトヘトになって帰ってくる。
「自転車で移動するのは全く苦にならないんだよ。筋肉に効いてるのを感じるから」
だけどとにかく腹が減る、というナオちゃんの何か役に立ちたいなあ、と思って
ナオちゃんの大好きなプロテインとかいう粉を棒状にして、いつでも食べられるようにしてみた。
プロテインと砂糖と、牛乳と豆を粉状にしたものと、油とバター。それから、押し麦やドライフルーツを混ぜて焼くと、しっとりとした美味しいケーキになる。
いつも牛乳でどろどろに溶かしたプロテインを飲んでいたナオちゃんは「プロテイン弁当だ!」と大喜びした。
最初はナオちゃんのためだけに作っていたけど、ナオちゃんが「みんなも食べたがってるんだ」と筋肉仲間をいっぱい連れて来るから、俺はプロテインのケーキを売る店を始めた。
店に来るお客さんは、たいていナオちゃんみたいに大きな体をしている。そして、すごく俺に優しい。「とっても美味しいよ」「お釣りはいらないよ」とみんな紳士的だ。
ただ、二言目には「プロテインケーキを売ってるのに、そんなに細いなんて……!」「君、鍛えがいのある良い体をしてるね~!」「今日からすぐ出来るトレーニングメニューを考えてあげたよ」と俺の体を大きくしようとしてくるから困っている。
夕方になるとナオちゃんが自転車で迎えに来てくれて、一緒に帰る。疲れている時は、獣の姿でナオちゃんにおぶってもらう。ナオちゃんは、お客さんである筋肉仲間や近所の人に、俺がどんな姿であろうと、必ずこう言う。
「俺の世界一可愛い、大切な恋人なんだ!」
そのたびに、ちょっぴり恥ずかしいけど、この人と契約出来て良かった、他の誰でもない「ビビ」でいられて良かったって、俺は自分が使い魔として産まれたことに感謝している。(完)
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