え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

文字の大きさ
52 / 68
第二部  復興編

32.急展開

しおりを挟む
翌日の部族長会議で、ライド王子からすごい提案がいくつも出され、会議は踊りに踊った。 

俺は正体を隠したまま、その狂乱のさまを斜め後ろでしれっと見ていた。 

みんな目からウロコ落ちまくりだな。 

まずは一昨日発明?したナムールのおにぎりを全員にふるまって、族長達をおにぎり教に入信させ、ナムール米の生産を始めることになった。 

麦との生産場所を整理する為に、何ヶ所かの水たまりの取水口を埋めて麦畑を拡大する場所と、水たまりを結合させてナムール米の作付け場所を広くする整地を行う。 

取水口を埋めるという案の所で聖女アデルが登場すると、ひれ伏しが始まってしまった。 

何とか宥めて、次の議題に移る。 

ミモルの養殖という案も斬新だったようで、それなら他の種類も試そうと、そちらは川魚の専門家を呼んで色々と検討することになった。 

 

翌日から早速、俺達は各地の水たまりを巡り、どこを塞いでどこを拡張するかを検討した。 

大きな取水口には、近場にある岩をみんなで運んで塞ぎ、それほど大きくないものはリルの木をドンと生やして塞いだ。 

水が引いてから回りの土を入れて攪拌し、麦の育成に適した土に改良する。 

塞がなかった場所は、他を塞いだことにより水量が増えたので、そこは周りと繋げて広い水田にする。 

とにかく広い土地なので、やっぱりかなりの時間を取られたが、各部族達が全面協力してくれたお陰で2週間くらいで目処がついた。 

田植えの方法とか、テレビのバラエティー番組で観たことを何となく真似てやっただけだが、何とか根付いてくれた。 

元々雑草並に強い品種のようだ。 

加速してみたら、本当に成長が早いこと早いこと! 

あっという間に緑の草がワッサーっと生えた。 

うん、米は大丈夫そうだ。 

リネルが商人根性を発揮して、離宮の地から色々なスパイスを運ばせてきたので、味付けもこれから沢山研究されるだろう。 

俺からはライスバーガーを提案しておいた。 

これ絶対に美味いヤツ。 

 

北側から順に整備と開拓を進めて、ようやく南の端まで到達した俺達は、最後の水たまりを結合する作業をしていた。 

「ここが終われば、ほぼ完了だな」 

「そうですね。昨日ランドスから魚の専門家が到着したとルルガから連絡が入りました」 

「お、じゃあ養殖の話も進みそうだな」 

「ええ、これでサザレーの問題も解決できました」 

嬉しそうに水田を眺めるライド王子の横で、俺も達成感に浸っていた。 

離宮の地から始まった旅は、ガルデーン、ランドス、ケルック、そしてここサザレーと5つの地まできた。 

残るは、ここから4日の所にあるスーカと、王都の近くの都市タンパルの2ヶ所だ。 

気づけばもう、俺がこの世界に召喚されてから7ヶ月が経過していた。 

「あっといいう間だったなぁ」 

「無我夢中の毎日でしたが、目の前で死にかけた土地がどんどん復活していくのを見るのは、とにかく壮観で幸せでした」 

本当にアキラには感謝しかありませんと、ライド王子が真面目な顔で言ってくるのに、俺は慌てて制止をかけた。 

「まてまて、まだ早いぞ。感謝は全部の土地が復活してからにしようぜ」 

そういうの、照れるから苦手なんだよ俺。 

スザールみたいに、細マッチョ聖女の偉業達成だとかふざけたことを言って、回し蹴りで対応してるくらいが気楽でいい。 

「そうですね。まだ気を抜く段階ではありませんよね」 

王都を入れてあと3ヶ所、頑張ろう!と一緒に気合を入れなおしていると、遠くの方からルルガが乗った馬がすごい勢いで駆けてきた。 

「王子、大変です!中央広場にルワブ達が来て、聖女を出せと暴れています!」 

「なに!」 

しまった!もうここまで来ていたか。 

俺達は兵士達に残りの作業を託して、急いで馬に飛び乗った。 

「アデルはどこにいる?」 

ライド王子が焦ってルルガに聞いている。 

最初の部族長会議の時に登場して以来ここでは聖女の恰好はしていないが、ルワブはアデルの顔を知っているので見つかったら拘束されて王都に連れて行かれる。 

「スザールがルワブにいち早く気づいたので、アデル様を農民の服に着替えさせて女達の集まっている作業場に紛れ込ませました」 

ナイスだスザール。 

さすが、機転が利くな。 

「スザール自身も、ここで見られると色々と面倒なことになるので隠れています。今はザウスと部族長達が対応してますが……」 

立場的に下なザウスだけでは押さえが効かないんだろう。 

「私が抑えよう」 

ライド王子が馬の速度を上げて疾走する。 

まだここで捕まる訳にはいかないが、ルワブ達を止められるかライド王子に賭けるしかない。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...