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第二部 復興編
41.ヤバイい現状
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町に入る前から、立ち枯れた木がポツンポツンとあって、暗い雰囲気になっている。
横を流れていたであろう川は完全に干上がって、川底がヒビ割れていた。
「こりゃあ、離宮並みにひどいな」
「タンパルは半年前から急激に悪化していると報告は上がっていたんだが、まさかここまでとは……」
スザールも眉を顰めている。
「ここの産業って、何なんだ?」
「タンパルは果樹園をメインとして、野菜も作っている。どちらも水が重要だから、これでは壊滅的だな」
ちょっと、住民の状態が心配になってきたわ。
俺達は急いで町中に進んだ。
途中で見る畑も果樹園も、葉はほとんど枯れていて実りなんて全く期待できない状態だった。
心配したとおり、住民達の顔色は悪くて目に生気が無かった。
畑や果樹園があの惨状じゃ、希望も何もないもんな。
「これは、酷いですわ…」
アデル姫も住民達を見て、青褪めている。
「ここは王都から3日の距離なのに、何故こんなことに……これでは王都の住民が飢えてしまうわ」
確かに、ここが王都の食の生産拠点ならば、王都に食べ物が行かずに大騒ぎになってる筈だよな。
「……全員、一旦引き返すぞ」
急にスザールが馬を方向転換させた。
「えっ?戻るって……?」
ポカンとしたが、兵士達はスザールの指示に即座に踵を返した。
俺も慌てて向きを変えてスザールを追いかける。
まだ町に入ったばかりの所だったので、すぐに外に出た。
「どうしたんだ?スザール」
横に並ぶと、スザールが険しい顔をしている。
「王都で食料の供給が途絶えたという報告は聞いていない。不作で値段が高騰はしていたがな。こんな状態になっているなとど、宰相の所にも連絡は来ていない。何かある」
え、それってどういうことだ?
「ここの領主はまともな人物だが、物流に関しては関与していないんだ。王都への食物の流通を管理しているのはタンパル商会という所だ」
「へえ~、じゃあ領地や住民の管理は領主がやって、産業は会社…商会が担っているってことか?」
「そうだ」
うん、分かりやすい。
俺の世界と同じスタイルな訳か。
「そのタンパル商会が怪しさ満点だな」
「うむ、しかし……この現状で領主が動いていないというのはおかしい。おい、テイル」
スザールがアデル姫の横で護衛をしているテイルを呼ぶ。
「はい」
素早い手綱捌きで、テイルが馬をスウっと寄せてきた。
ほんと、この世界の人は人馬一体かってくらい手慣れている。
「叔父上と連絡をとったのは何時が最後だ?」
叔父上?
ハテナマークを飛ばしている俺に、テイルはニコっと笑った。
「ここの領主は俺の叔父なんですよ」
は?そうなの?
まさかお前も貴族のボンボンなの?
俺の驚愕の表情に、テイルはブハっと噴き出しながら手を顔の前で振った。
「いやいや、俺の母親は一般市民なんで、父は母と結婚する時に貴族籍から抜けています。なので俺は一般市民ですよ」
「そうなのか~、親父さん貴族やめるなんて大恋愛だったんだな」
「両親は未だに仲良いですね。まあ貴族と言っても下の方なんで、大して未練は無かったみたいですよ。叔父上は頭が良くて王宮勤めで出世したから領主になったんです。連絡はここ半年以上とっていなかったですね」
ここがこんな状態になっているとは、とテイルも眉を顰めている。
「ルカンダになにかあったのかもしれん。目立たないように、夜に接触を図ろう」
くっそ、時間が無いって時にこれかい。
「イヤな予感しかしないんだが…」
「俺もだ」
やっぱり?
まさか、どこぞの領主みたいに監禁されているんじゃなかろうな?
とりあえず町外れの農場に行って、スザールが農民と交渉して倉庫を借りて馬を隠した。
ククルを王都の宰相に飛ばして、ガザルとライド王子一行の進み具合とタンパルの状況を連絡する。
兵士の何人かを住民の恰好で町中に偵察に出し、俺とリネルも行商人に扮してタンパル商会を探りに行くことにした。
リネルは髪色を変えてターバンみたいなものを頭に巻くと、商売人そのものになった。
俺は付き人兼荷物持ちに扮した。
売り物はもちろんスイカだ。
離宮の方で新たに商売を始めたと言えば、こちらには名前が知られていなくても不思議じゃない。
スイカが王都に流通しており、産地が離宮の地ということは既に広まっているだろうから、疑われることはないだろう。
スザールがもっと護衛の人数を増やそうとしたが、一介の商売人が何人も護衛を付けているのは返って不自然だからと2人だけにしてもらった。
ぶっちゃけ、俺が護衛役も兼任してるしな。
午後になって町中の人が増えた頃を見計らって、急遽作ったスイカを荷車に乗せて商会を目指す。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
横を流れていたであろう川は完全に干上がって、川底がヒビ割れていた。
「こりゃあ、離宮並みにひどいな」
「タンパルは半年前から急激に悪化していると報告は上がっていたんだが、まさかここまでとは……」
スザールも眉を顰めている。
「ここの産業って、何なんだ?」
「タンパルは果樹園をメインとして、野菜も作っている。どちらも水が重要だから、これでは壊滅的だな」
ちょっと、住民の状態が心配になってきたわ。
俺達は急いで町中に進んだ。
途中で見る畑も果樹園も、葉はほとんど枯れていて実りなんて全く期待できない状態だった。
心配したとおり、住民達の顔色は悪くて目に生気が無かった。
畑や果樹園があの惨状じゃ、希望も何もないもんな。
「これは、酷いですわ…」
アデル姫も住民達を見て、青褪めている。
「ここは王都から3日の距離なのに、何故こんなことに……これでは王都の住民が飢えてしまうわ」
確かに、ここが王都の食の生産拠点ならば、王都に食べ物が行かずに大騒ぎになってる筈だよな。
「……全員、一旦引き返すぞ」
急にスザールが馬を方向転換させた。
「えっ?戻るって……?」
ポカンとしたが、兵士達はスザールの指示に即座に踵を返した。
俺も慌てて向きを変えてスザールを追いかける。
まだ町に入ったばかりの所だったので、すぐに外に出た。
「どうしたんだ?スザール」
横に並ぶと、スザールが険しい顔をしている。
「王都で食料の供給が途絶えたという報告は聞いていない。不作で値段が高騰はしていたがな。こんな状態になっているなとど、宰相の所にも連絡は来ていない。何かある」
え、それってどういうことだ?
「ここの領主はまともな人物だが、物流に関しては関与していないんだ。王都への食物の流通を管理しているのはタンパル商会という所だ」
「へえ~、じゃあ領地や住民の管理は領主がやって、産業は会社…商会が担っているってことか?」
「そうだ」
うん、分かりやすい。
俺の世界と同じスタイルな訳か。
「そのタンパル商会が怪しさ満点だな」
「うむ、しかし……この現状で領主が動いていないというのはおかしい。おい、テイル」
スザールがアデル姫の横で護衛をしているテイルを呼ぶ。
「はい」
素早い手綱捌きで、テイルが馬をスウっと寄せてきた。
ほんと、この世界の人は人馬一体かってくらい手慣れている。
「叔父上と連絡をとったのは何時が最後だ?」
叔父上?
ハテナマークを飛ばしている俺に、テイルはニコっと笑った。
「ここの領主は俺の叔父なんですよ」
は?そうなの?
まさかお前も貴族のボンボンなの?
俺の驚愕の表情に、テイルはブハっと噴き出しながら手を顔の前で振った。
「いやいや、俺の母親は一般市民なんで、父は母と結婚する時に貴族籍から抜けています。なので俺は一般市民ですよ」
「そうなのか~、親父さん貴族やめるなんて大恋愛だったんだな」
「両親は未だに仲良いですね。まあ貴族と言っても下の方なんで、大して未練は無かったみたいですよ。叔父上は頭が良くて王宮勤めで出世したから領主になったんです。連絡はここ半年以上とっていなかったですね」
ここがこんな状態になっているとは、とテイルも眉を顰めている。
「ルカンダになにかあったのかもしれん。目立たないように、夜に接触を図ろう」
くっそ、時間が無いって時にこれかい。
「イヤな予感しかしないんだが…」
「俺もだ」
やっぱり?
まさか、どこぞの領主みたいに監禁されているんじゃなかろうな?
とりあえず町外れの農場に行って、スザールが農民と交渉して倉庫を借りて馬を隠した。
ククルを王都の宰相に飛ばして、ガザルとライド王子一行の進み具合とタンパルの状況を連絡する。
兵士の何人かを住民の恰好で町中に偵察に出し、俺とリネルも行商人に扮してタンパル商会を探りに行くことにした。
リネルは髪色を変えてターバンみたいなものを頭に巻くと、商売人そのものになった。
俺は付き人兼荷物持ちに扮した。
売り物はもちろんスイカだ。
離宮の方で新たに商売を始めたと言えば、こちらには名前が知られていなくても不思議じゃない。
スイカが王都に流通しており、産地が離宮の地ということは既に広まっているだろうから、疑われることはないだろう。
スザールがもっと護衛の人数を増やそうとしたが、一介の商売人が何人も護衛を付けているのは返って不自然だからと2人だけにしてもらった。
ぶっちゃけ、俺が護衛役も兼任してるしな。
午後になって町中の人が増えた頃を見計らって、急遽作ったスイカを荷車に乗せて商会を目指す。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
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