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第二部 復興編
45.毒じゃね?
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俺達が驚いたのは、領主の顔色だった。
普通病人は血行が悪くて青白いか、血の気が引いて土気色とかってイメージだったけど、領主のそれは全く違った。
「……緑…?…」
俺は一瞬、失礼だけどゲームとかで見たリザードマンとか超人〇ルクとかを想像してしまった。
いや、緑って人間の皮膚の色じゃないよな?
キュウリまでは行ってないけど、若いゴーヤ並に緑。
これが流行り病の症状なのか?
どんな病だよ、それ。
「アイリン、経緯を説明してくれ」
スザールが厳しい表情で腕を組んで乳母を促す。
「はい。半年ほど前に町で原因不明の病が発生しました。高熱が出て、その後で皮膚が少し緑色になるのです。その後で熱は下がって、そこから回復する者と更に衰弱していく者とに分かれました。衰弱していく者は皮膚の色がどんどん濃くなってきています。領主様や館の者も発症して……」
アイリンは悲しそうに目を伏せる。
「薬は無いのか?」
「あります。タンパル商会のトトメス商会長が王都から購入してきたもので、全員飲みましたが効く者と効かない者がいて」
「そんな………」
みんなが沈痛な面持ちで黙り込む。
その脇で、俺は何かが引っかかっていて、悶々と考えていた。
何か変な気がするんだが、それがよく分からない。
う~ん、イライラする。
そこへアデル姫が到着した。
屋敷全体を捜索して、他には人がおらず安全が確保出来たら来る手筈になっていたから、これで屋敷全体を押さえられた訳だな。
窓から下を見ると、兵士達が門や入口を固めていた。
これでタンパル商会の火事がおさまっても、この屋敷には入れない。
んん?またモヤモヤする。
一体何が引っかかっているんだろう。
「ルカンダ……」
アデル姫も緑色になった領主を見てショックを受けていた。
「アデル様……大きくなられましたな…」
「ルカンダ……こちらの領主になってから元気で頑張っているとシシルから聞いていましたのに」
王宮に勤めている時にシシル宰相の下にいたルカンダは、アデル姫とも顔見知りだった。
「領主の務めを全う出来ず、申し訳ありません…」
弱弱しい口調のルカンダの汗を、アデル姫は優しく拭き取ってあげていた。
「何を言っているのです。病を治すことが最優先の責務ですわよ?お仕事は他の者にまかせて、今は体調の回復に全力を注ぎなさい」
あ、それだ。
俺はポツポツと浮かんできた疑問をとにかくみんなに聞いてもらうことにした。
「ちょっとみんないいか?今、疑問に思った事を全部挙げていきたいんだ」
みんなは始め、え?という顔になったが頷いてくれた。
「まず、半年前に流行った病というのは、感染源は特定されていないんだよな?なのに何故領主は監禁まがいの隔離状態なんだ?うつる病ならそれも分かるけど、看病しているアイリンはうつっていない。病になった館の従業員達って、今現在はどうしてる?他に病にかかった人達の職業って、何か特徴はあるか?」
そこまで言うと、アイリスがはっと目を見開いた。
いち早く俺の疑問に気づいたようだ。
「……館の従業員で発症した者は住み込みで働いていた者が大半で、実家に戻って療養しています。みんなかなり良くなってきたと聞いています。他に発症したのは果樹園の管理運営をしている役職の者達と園のリーダー達です」
「なっ……」
みんなも気づいた。
そう、これは流行り病なんかじゃなくて、計画的な犯行なんじゃないかという疑念だ。
だって都合が良過ぎるよな?
領主と従業員が倒れれば、感染対策とか言って館を封鎖できるし、果樹園の中枢メンバーが倒れれば運営管理が行き詰まる。
他の果樹園を枯らして自分の所だけ井戸を独占してしっかりと生産する。
領主に横槍を入れられないように館を封鎖し仕事を肩代わりすることで、王都との流通を一手に掌握。
そいつはタンパルの覇権をガッチリと握れるわけだよな?
やっぱりしばいておくんだったわ~、あのタヌキオヤジ。
「で、でも薬を飲んで回復した者もいるのでしょう?それはどうして?」
あ~、アデル姫。純粋に育てられたんだなぁ。
「トトメスが薬を用意すると思うか?しかも発症しているのが病じゃなくて、毒…だったら?」
「毒だと!」
みんなの顔が一気に青褪める。
俺も考えたくはないけど、それだと一番辻褄が合うんだよな。
「治療薬として渡されていた薬が毒か、もしくはただの無成分の粉で、他に飲まされて………あ…」
そこまで言って、自分で気づいた。
「半年前に川が干上がってから、飲み水はどこのを使っている?」
アイリスはもう真っ青になって震えている。
「……領主様には、タンパル商会から井戸水が運ばれてきています。農園管理者で発症している者達の家にも薬と共に水が……私は自宅から通っているので、町外れにある水量の減った井戸水を使っています。良くなってきた従業員達は薬の支給は受けていますが、水までは配給されていないので、私と同じ井戸の水を飲んでいます……ああ、なんてこと…」
うん、確定だな。
俺はベッドの横にある水差しを持つと、床でのびている護衛の頭にぶっかけた。
呻きながら意識を取り戻した男は俺を見上げて、次に手に持っている水差しを見ると目を見開いた。
「やあ、目が醒めたかい?起こすのに貴重な領主様の水を使ってしまったよ。心して舐めるといいぜ」
「え……あっ、ひいっ!」
男は慌てたように頭を振って水気を振り払い、顔をカーペットに擦り付けた。
「……お前、それが何なのか分かっているようだな?」
聞いたことが無いくらい低い声でテイルが兵士に詰め寄る。
「あ、い、いえっ…その……」
パニックに陥っている護衛の頭を掴むと、テイルは怖いくらいの笑顔で俺達を振り返った。
「コイツの尋問、俺にやらせてもらえますか?」
「お、おう……」
普段穏やかなヤツがキレるととんでなく怖い。
普通病人は血行が悪くて青白いか、血の気が引いて土気色とかってイメージだったけど、領主のそれは全く違った。
「……緑…?…」
俺は一瞬、失礼だけどゲームとかで見たリザードマンとか超人〇ルクとかを想像してしまった。
いや、緑って人間の皮膚の色じゃないよな?
キュウリまでは行ってないけど、若いゴーヤ並に緑。
これが流行り病の症状なのか?
どんな病だよ、それ。
「アイリン、経緯を説明してくれ」
スザールが厳しい表情で腕を組んで乳母を促す。
「はい。半年ほど前に町で原因不明の病が発生しました。高熱が出て、その後で皮膚が少し緑色になるのです。その後で熱は下がって、そこから回復する者と更に衰弱していく者とに分かれました。衰弱していく者は皮膚の色がどんどん濃くなってきています。領主様や館の者も発症して……」
アイリンは悲しそうに目を伏せる。
「薬は無いのか?」
「あります。タンパル商会のトトメス商会長が王都から購入してきたもので、全員飲みましたが効く者と効かない者がいて」
「そんな………」
みんなが沈痛な面持ちで黙り込む。
その脇で、俺は何かが引っかかっていて、悶々と考えていた。
何か変な気がするんだが、それがよく分からない。
う~ん、イライラする。
そこへアデル姫が到着した。
屋敷全体を捜索して、他には人がおらず安全が確保出来たら来る手筈になっていたから、これで屋敷全体を押さえられた訳だな。
窓から下を見ると、兵士達が門や入口を固めていた。
これでタンパル商会の火事がおさまっても、この屋敷には入れない。
んん?またモヤモヤする。
一体何が引っかかっているんだろう。
「ルカンダ……」
アデル姫も緑色になった領主を見てショックを受けていた。
「アデル様……大きくなられましたな…」
「ルカンダ……こちらの領主になってから元気で頑張っているとシシルから聞いていましたのに」
王宮に勤めている時にシシル宰相の下にいたルカンダは、アデル姫とも顔見知りだった。
「領主の務めを全う出来ず、申し訳ありません…」
弱弱しい口調のルカンダの汗を、アデル姫は優しく拭き取ってあげていた。
「何を言っているのです。病を治すことが最優先の責務ですわよ?お仕事は他の者にまかせて、今は体調の回復に全力を注ぎなさい」
あ、それだ。
俺はポツポツと浮かんできた疑問をとにかくみんなに聞いてもらうことにした。
「ちょっとみんないいか?今、疑問に思った事を全部挙げていきたいんだ」
みんなは始め、え?という顔になったが頷いてくれた。
「まず、半年前に流行った病というのは、感染源は特定されていないんだよな?なのに何故領主は監禁まがいの隔離状態なんだ?うつる病ならそれも分かるけど、看病しているアイリンはうつっていない。病になった館の従業員達って、今現在はどうしてる?他に病にかかった人達の職業って、何か特徴はあるか?」
そこまで言うと、アイリスがはっと目を見開いた。
いち早く俺の疑問に気づいたようだ。
「……館の従業員で発症した者は住み込みで働いていた者が大半で、実家に戻って療養しています。みんなかなり良くなってきたと聞いています。他に発症したのは果樹園の管理運営をしている役職の者達と園のリーダー達です」
「なっ……」
みんなも気づいた。
そう、これは流行り病なんかじゃなくて、計画的な犯行なんじゃないかという疑念だ。
だって都合が良過ぎるよな?
領主と従業員が倒れれば、感染対策とか言って館を封鎖できるし、果樹園の中枢メンバーが倒れれば運営管理が行き詰まる。
他の果樹園を枯らして自分の所だけ井戸を独占してしっかりと生産する。
領主に横槍を入れられないように館を封鎖し仕事を肩代わりすることで、王都との流通を一手に掌握。
そいつはタンパルの覇権をガッチリと握れるわけだよな?
やっぱりしばいておくんだったわ~、あのタヌキオヤジ。
「で、でも薬を飲んで回復した者もいるのでしょう?それはどうして?」
あ~、アデル姫。純粋に育てられたんだなぁ。
「トトメスが薬を用意すると思うか?しかも発症しているのが病じゃなくて、毒…だったら?」
「毒だと!」
みんなの顔が一気に青褪める。
俺も考えたくはないけど、それだと一番辻褄が合うんだよな。
「治療薬として渡されていた薬が毒か、もしくはただの無成分の粉で、他に飲まされて………あ…」
そこまで言って、自分で気づいた。
「半年前に川が干上がってから、飲み水はどこのを使っている?」
アイリスはもう真っ青になって震えている。
「……領主様には、タンパル商会から井戸水が運ばれてきています。農園管理者で発症している者達の家にも薬と共に水が……私は自宅から通っているので、町外れにある水量の減った井戸水を使っています。良くなってきた従業員達は薬の支給は受けていますが、水までは配給されていないので、私と同じ井戸の水を飲んでいます……ああ、なんてこと…」
うん、確定だな。
俺はベッドの横にある水差しを持つと、床でのびている護衛の頭にぶっかけた。
呻きながら意識を取り戻した男は俺を見上げて、次に手に持っている水差しを見ると目を見開いた。
「やあ、目が醒めたかい?起こすのに貴重な領主様の水を使ってしまったよ。心して舐めるといいぜ」
「え……あっ、ひいっ!」
男は慌てたように頭を振って水気を振り払い、顔をカーペットに擦り付けた。
「……お前、それが何なのか分かっているようだな?」
聞いたことが無いくらい低い声でテイルが兵士に詰め寄る。
「あ、い、いえっ…その……」
パニックに陥っている護衛の頭を掴むと、テイルは怖いくらいの笑顔で俺達を振り返った。
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