え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~

月夜野レオン

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第二部  復興編

46.解毒=デトックス

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テイルが護衛達を別室に引きずっていった後、俺達はさっそく対策に乗り出すことにした。 

「アデル、そのタオルを見せてくれ」 

「あ、はい」 

アデル姫がルカンダ領主の汗を拭いたタオルを見て、俺は考えた。 

白いタオルについた薄い緑色。 

ここに毒のエキスパートはいない。 

何の毒か分からないことには解毒剤は用意出来ない。 

ならば! 

「アイリス、兵士と一緒に発症している者達をこの館に集めてきてくれ。ここで集中的にやった方が効率がいい」 

「は、はい!」 

スザールが指示を出して、アイリスに数人兵士を同行させる。 

「毒の種類が分からないから、まずはデトックスをしてみよう」 

「デトッ…クス……?」 

アデル姫が初めて聞く言葉に首を傾げる。 

うん、それ可愛いね。 

マジでアイドルデビューをオススメしたい。 

じゃなくて!説明、説明。 

「今は毒の種類や効能が分からない状態だから、とにかく体外に排出することを目指す。ここの食器類は毒が付いている可能性があるから、まずは俺の出す水で洗ってほしい」 

「分かったわ!」 

アデル姫ともう一人の兵士と一緒にキッチンに行き、シンクの上でミニ雨雲を作ると、そこで食器類を片っ端から洗うようお願いした。 

よし、次は風呂だ。 

領主の寝室の横には専用のシャワー室が備え付けてあった。 

そこにイスを置いて、スザールにルカンダ領主を運んでもらう。 

何をするのかとキョトンとしている領主に、俺は詳しく説明をした。 

現在、体が毒に犯されていること、種類が特定出来ないし時間が無いので、水分を取りつつ汗をかいて毛穴からも毒素を排出させるということ。 

さすが聡明な領主は、すぐに理解してくれた。 

「しかし、毒の水しか無いこの館で、まともな水はどうしたら?」 

「あ、えっとそれは…」 

今までの経緯をどこから説明しようかと言葉を選んでいる横で、スザールがしれっと一言。 

「コイツ聖女なんで、水出せるんすよ」 

「…は……?…」 

「おまっ……聖女っていうな!」 

狭いシャワー室では回し蹴りが繰り出せない。 

脇腹に正拳突きをお見舞いしたが、肘でガードされた。くそっ。 

俺は領主を取り囲むように雨雲を作り出す。 

なんと聞いて驚け。 

始めは少し温かい水しか出せなかった俺は、もはや温水に近い温度の雨を降らせることが出来るようになっていた。 

ようはイメージだからね。 

温水シャワーばりの雨!って念じると良い感じの温度になる。 

すぐにシャワー室は湯気が充満して簡易サウナ状態になってくる。 

「これは……素晴らしい。感謝致します、聖女様」 

うぐぐ、聖女はやめてくれい。 

まあ今はそんな話をしている場合じゃない。 

ヨロヨロとひれ伏しをしようとする領主を慌てて止めて、イスにちゃんと座らせる。 

「体力が落ちていますから、休憩を挟みながら入って、水分補給をどんどんして下さい」 

寝室に樽を用意してそこにミニ雨雲を作り、コップで掬って飲めるようする。 

スザールには領主が倒れないようにタイミングを見て寝室に戻し水分を補給させる役を担当してもらう。 

もしもの護衛も兼ねてな。 

そうこうしているうちに、アイリスが他の重篤患者を連れて戻ってきた。 

兵士に抱えられるようにしてやってきた果樹園管理者達は、さすがにガタイがいい。 

うわぁ、こっちはリアル超人〇ルク集団だわ。 

早く健康な肌色のマッチョ集団に戻さないとな。 

こっちは従業員用のシャワー室に集めて、同じようにサウナ状態を作り出す。 

みんなシンドそうではあるけど、さすがは肉体労働者。 

室内に樽を用意して冷たい水を供給すると、自分達でガブガブと飲んでくれた。 

いいぞ、これだけ体力があれば、回復も早そうだ。 

しばらくすると緑色の皮膚から汗が吹き出し、床のタイルが薄い緑色になってきた。 

 

夜が明けだした頃、タンパル商会の果樹園の火がようやく鎮火したようで、黒い煙が立ち上った。 

間髪を入れずに踏み込んだ俺と兵士達によって、半狂乱になっているトトメスや消化作業でヘロヘロになった護衛達を捕まえて屋敷の部屋に監禁した。 

忙しいから、お前らの処分は後回しな。 

すぐに町の復興にかからないとだ。 

まずは水を復活させる為に、昨日印をつけておいた場所まで戻って、岩壁の破壊だ。 

結構な水量があると思うんだが、割ってみないことには安心できない。 

俺達は生やしておいたリルの枝をバッサバッサと落として、岩壁に槍で穴を掘り順に枝を刺し込んでいく。 

みんなもう手慣れたもんで、傍から見たら立派な土木作業員だろう。 

「準備完了~。聖女様、ドカンと一発頼んますよ」 

いや、発破かけるみたいに言うな。 

似たようなもんだけどさ。 
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