66 / 68
第二部 復興編
46.解毒=デトックス
しおりを挟む
テイルが護衛達を別室に引きずっていった後、俺達はさっそく対策に乗り出すことにした。
「アデル、そのタオルを見せてくれ」
「あ、はい」
アデル姫がルカンダ領主の汗を拭いたタオルを見て、俺は考えた。
白いタオルについた薄い緑色。
ここに毒のエキスパートはいない。
何の毒か分からないことには解毒剤は用意出来ない。
ならば!
「アイリス、兵士と一緒に発症している者達をこの館に集めてきてくれ。ここで集中的にやった方が効率がいい」
「は、はい!」
スザールが指示を出して、アイリスに数人兵士を同行させる。
「毒の種類が分からないから、まずはデトックスをしてみよう」
「デトッ…クス……?」
アデル姫が初めて聞く言葉に首を傾げる。
うん、それ可愛いね。
マジでアイドルデビューをオススメしたい。
じゃなくて!説明、説明。
「今は毒の種類や効能が分からない状態だから、とにかく体外に排出することを目指す。ここの食器類は毒が付いている可能性があるから、まずは俺の出す水で洗ってほしい」
「分かったわ!」
アデル姫ともう一人の兵士と一緒にキッチンに行き、シンクの上でミニ雨雲を作ると、そこで食器類を片っ端から洗うようお願いした。
よし、次は風呂だ。
領主の寝室の横には専用のシャワー室が備え付けてあった。
そこにイスを置いて、スザールにルカンダ領主を運んでもらう。
何をするのかとキョトンとしている領主に、俺は詳しく説明をした。
現在、体が毒に犯されていること、種類が特定出来ないし時間が無いので、水分を取りつつ汗をかいて毛穴からも毒素を排出させるということ。
さすが聡明な領主は、すぐに理解してくれた。
「しかし、毒の水しか無いこの館で、まともな水はどうしたら?」
「あ、えっとそれは…」
今までの経緯をどこから説明しようかと言葉を選んでいる横で、スザールがしれっと一言。
「コイツ聖女なんで、水出せるんすよ」
「…は……?…」
「おまっ……聖女っていうな!」
狭いシャワー室では回し蹴りが繰り出せない。
脇腹に正拳突きをお見舞いしたが、肘でガードされた。くそっ。
俺は領主を取り囲むように雨雲を作り出す。
なんと聞いて驚け。
始めは少し温かい水しか出せなかった俺は、もはや温水に近い温度の雨を降らせることが出来るようになっていた。
ようはイメージだからね。
温水シャワーばりの雨!って念じると良い感じの温度になる。
すぐにシャワー室は湯気が充満して簡易サウナ状態になってくる。
「これは……素晴らしい。感謝致します、聖女様」
うぐぐ、聖女はやめてくれい。
まあ今はそんな話をしている場合じゃない。
ヨロヨロとひれ伏しをしようとする領主を慌てて止めて、イスにちゃんと座らせる。
「体力が落ちていますから、休憩を挟みながら入って、水分補給をどんどんして下さい」
寝室に樽を用意してそこにミニ雨雲を作り、コップで掬って飲めるようする。
スザールには領主が倒れないようにタイミングを見て寝室に戻し水分を補給させる役を担当してもらう。
もしもの護衛も兼ねてな。
そうこうしているうちに、アイリスが他の重篤患者を連れて戻ってきた。
兵士に抱えられるようにしてやってきた果樹園管理者達は、さすがにガタイがいい。
うわぁ、こっちはリアル超人〇ルク集団だわ。
早く健康な肌色のマッチョ集団に戻さないとな。
こっちは従業員用のシャワー室に集めて、同じようにサウナ状態を作り出す。
みんなシンドそうではあるけど、さすがは肉体労働者。
室内に樽を用意して冷たい水を供給すると、自分達でガブガブと飲んでくれた。
いいぞ、これだけ体力があれば、回復も早そうだ。
しばらくすると緑色の皮膚から汗が吹き出し、床のタイルが薄い緑色になってきた。
夜が明けだした頃、タンパル商会の果樹園の火がようやく鎮火したようで、黒い煙が立ち上った。
間髪を入れずに踏み込んだ俺と兵士達によって、半狂乱になっているトトメスや消化作業でヘロヘロになった護衛達を捕まえて屋敷の部屋に監禁した。
忙しいから、お前らの処分は後回しな。
すぐに町の復興にかからないとだ。
まずは水を復活させる為に、昨日印をつけておいた場所まで戻って、岩壁の破壊だ。
結構な水量があると思うんだが、割ってみないことには安心できない。
俺達は生やしておいたリルの枝をバッサバッサと落として、岩壁に槍で穴を掘り順に枝を刺し込んでいく。
みんなもう手慣れたもんで、傍から見たら立派な土木作業員だろう。
「準備完了~。聖女様、ドカンと一発頼んますよ」
いや、発破かけるみたいに言うな。
似たようなもんだけどさ。
「アデル、そのタオルを見せてくれ」
「あ、はい」
アデル姫がルカンダ領主の汗を拭いたタオルを見て、俺は考えた。
白いタオルについた薄い緑色。
ここに毒のエキスパートはいない。
何の毒か分からないことには解毒剤は用意出来ない。
ならば!
「アイリス、兵士と一緒に発症している者達をこの館に集めてきてくれ。ここで集中的にやった方が効率がいい」
「は、はい!」
スザールが指示を出して、アイリスに数人兵士を同行させる。
「毒の種類が分からないから、まずはデトックスをしてみよう」
「デトッ…クス……?」
アデル姫が初めて聞く言葉に首を傾げる。
うん、それ可愛いね。
マジでアイドルデビューをオススメしたい。
じゃなくて!説明、説明。
「今は毒の種類や効能が分からない状態だから、とにかく体外に排出することを目指す。ここの食器類は毒が付いている可能性があるから、まずは俺の出す水で洗ってほしい」
「分かったわ!」
アデル姫ともう一人の兵士と一緒にキッチンに行き、シンクの上でミニ雨雲を作ると、そこで食器類を片っ端から洗うようお願いした。
よし、次は風呂だ。
領主の寝室の横には専用のシャワー室が備え付けてあった。
そこにイスを置いて、スザールにルカンダ領主を運んでもらう。
何をするのかとキョトンとしている領主に、俺は詳しく説明をした。
現在、体が毒に犯されていること、種類が特定出来ないし時間が無いので、水分を取りつつ汗をかいて毛穴からも毒素を排出させるということ。
さすが聡明な領主は、すぐに理解してくれた。
「しかし、毒の水しか無いこの館で、まともな水はどうしたら?」
「あ、えっとそれは…」
今までの経緯をどこから説明しようかと言葉を選んでいる横で、スザールがしれっと一言。
「コイツ聖女なんで、水出せるんすよ」
「…は……?…」
「おまっ……聖女っていうな!」
狭いシャワー室では回し蹴りが繰り出せない。
脇腹に正拳突きをお見舞いしたが、肘でガードされた。くそっ。
俺は領主を取り囲むように雨雲を作り出す。
なんと聞いて驚け。
始めは少し温かい水しか出せなかった俺は、もはや温水に近い温度の雨を降らせることが出来るようになっていた。
ようはイメージだからね。
温水シャワーばりの雨!って念じると良い感じの温度になる。
すぐにシャワー室は湯気が充満して簡易サウナ状態になってくる。
「これは……素晴らしい。感謝致します、聖女様」
うぐぐ、聖女はやめてくれい。
まあ今はそんな話をしている場合じゃない。
ヨロヨロとひれ伏しをしようとする領主を慌てて止めて、イスにちゃんと座らせる。
「体力が落ちていますから、休憩を挟みながら入って、水分補給をどんどんして下さい」
寝室に樽を用意してそこにミニ雨雲を作り、コップで掬って飲めるようする。
スザールには領主が倒れないようにタイミングを見て寝室に戻し水分を補給させる役を担当してもらう。
もしもの護衛も兼ねてな。
そうこうしているうちに、アイリスが他の重篤患者を連れて戻ってきた。
兵士に抱えられるようにしてやってきた果樹園管理者達は、さすがにガタイがいい。
うわぁ、こっちはリアル超人〇ルク集団だわ。
早く健康な肌色のマッチョ集団に戻さないとな。
こっちは従業員用のシャワー室に集めて、同じようにサウナ状態を作り出す。
みんなシンドそうではあるけど、さすがは肉体労働者。
室内に樽を用意して冷たい水を供給すると、自分達でガブガブと飲んでくれた。
いいぞ、これだけ体力があれば、回復も早そうだ。
しばらくすると緑色の皮膚から汗が吹き出し、床のタイルが薄い緑色になってきた。
夜が明けだした頃、タンパル商会の果樹園の火がようやく鎮火したようで、黒い煙が立ち上った。
間髪を入れずに踏み込んだ俺と兵士達によって、半狂乱になっているトトメスや消化作業でヘロヘロになった護衛達を捕まえて屋敷の部屋に監禁した。
忙しいから、お前らの処分は後回しな。
すぐに町の復興にかからないとだ。
まずは水を復活させる為に、昨日印をつけておいた場所まで戻って、岩壁の破壊だ。
結構な水量があると思うんだが、割ってみないことには安心できない。
俺達は生やしておいたリルの枝をバッサバッサと落として、岩壁に槍で穴を掘り順に枝を刺し込んでいく。
みんなもう手慣れたもんで、傍から見たら立派な土木作業員だろう。
「準備完了~。聖女様、ドカンと一発頼んますよ」
いや、発破かけるみたいに言うな。
似たようなもんだけどさ。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる